安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定 「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を 直接示すような記述も見当たらなかった」とする 政府発見資料とは如何なる資料か、公表すべき |
2018年6月16日放送の日本テレビ「ウェークアップ!ぷらす」 は「安倍首相生出演 拉致問題解決への道筋は?」を流していた。安倍晋三は2018年6月12日シンガポールで開催の「米朝首脳会談」の意義について2点挙げている。
安倍晋三「最初はですね。金正恩委員長も緊張した面持ちでしたが、後半はリラックスした雰囲気だったですね。そして意味としては二つあって、金正恩委員長が米国のトランプ大統領に完全な非核化、直接約束をしたということ。
もう一点はトランプ大統領から私が大統領に話した拉致問題について私の考えを金正恩委員長に明確に伝えたという点であります。その二点に意義があります」
安倍晋三はあとの方で、「最大、世界最強の軍事力を持っているアメリカの大統領にですね、書面で金正恩委員長は非核化、完全な非核化という約束をしました」と述べている。
金正恩が米朝共同声明に「完全な非核化」の文言を書き記したことを以って「完全な非核化」は「約束」だとの保証を与えている。共同声明でのこの「約束」に反して番組が解説で北朝鮮メディアが非核化について両首脳が段階的、同時行動の原則を遵守することで一致したと報じていることを取り上げて、この認識のズレは今後米朝の間で火種になる可能性があると紹介しているにも関わらず、あるいはかつては北朝鮮に対して「対話の努力は時間稼ぎに利用された」と言って圧力政策一辺倒に傾いていた強硬姿勢から比べて何という楽天主義への転換だろうか。北朝鮮の行動にあれ程懐疑的だったのに、いとも簡単に「約束」は約束として守られるという性善説にかぶれてしまったようだ。
安倍晋三にとっての米朝首脳会談のもう一つの「意義」、「トランプ大統領から私が大統領に話した拉致問題について私の考えを金正恩委員長に明確に伝えた」ことを挙げている。
伝えられた金正恩はトランプの会見発言やその他によると、番組も解説し、既に各報道によって明らかにされているが、金正恩は拉致問題を巡る日本との対話にオープンな姿勢を示したこと、「拉致問題は解決済み」という従来の見解を米朝会談では示さなかったことが明かになっている。
と言うことは、「拉致問題について私の考え」は米朝首脳会談の場で金正恩にトランプから直接伝わったことになる。伝わった上で、拉致問題を巡る日本との対話にオープンな姿勢を示し、「拉致問題は解決済み」という従来の見解を取らなかったと解釈できる。
では、「拉致問題について私の考え」とは具体的に何を指すのだろうか。そのことが理解できる発言を次に挙げて見る。
安倍晋三「米朝首脳会談の後ですね、電話に於いて『安倍さんから言われたことについては金正恩委員長に伝えましたよ』という話を頂きました。そしてそのときの委員長の対応等についての詳細な話がございました。
中味については詳細を申し上げることはできない、今後の交渉にも関わることでございますから、できないのでありますが、大切なことは初めてアメリカの大統領を通して金正恩委員長、最高指導者にどのように拉致問題について考えているか、どのように解決をしていきたいという考え方が伝わったと言うことだと思います」
安倍晋三「今まさにですね、これから日本も米国がスタートしたように信頼関係を醸成していきたいと、こう考えております。今、ここで話をしたこと、私の決意等についても北朝鮮側に伝わったと思います。その反応はどう出てくるかということを先ず待ちたいと、期待を持って待ちたいと思ってます」
要するに安倍晋三が国会答弁や記者会見、その他で発言している「拉致問題を解決しなければ、北朝鮮の未来を描くことはできない」、「拉致、核、ミサイル問題の解決なしに人類全体の脅威となることで拓ける未来などあろうはずはない」、「拉致問題を解決しなければ北朝鮮の将来はない」といった発言で表している認識が「拉致問題について私の考え」と言うことになり、日本の報道を介して金正恩に伝わっていると確信していることになる。
この「私の考え」について安倍晋三が「拉致問題が前進しなければ」、あるいは「具体的な成果が見込めなければ」日朝首脳会談は開く意味がないといった趣旨の発言していることから、この番組でも、「最終的にはですね、私自身が金正恩委員長と向か合わなければならない。日朝首脳会談を行わなければならないと考えています。ただ勿論、ただ闇雲に首脳会談を行うのではなくて、拉致問題の解決に資する会談としなければならないと思います」と同じ姿勢を表明しているが、3日前の6月15日の当ブログに、〈拉致問題の前進や具体的な成果が見込めないからと言って、日朝首脳会談を回避するのではなく、「拉致問題は安倍内閣の最重要・最優先の課題で、拉致問題は安倍内閣が解決をする」と機会あるごとに偉そうに言っている手前もあり、“拉致解決なくして北朝鮮の未来はない”とする自身の考えを金正恩に伝えるためにだけでも首脳会談を開く責任を有しているはずだ。〉と書いたが、見当違いの指摘であって、首脳会談を開かずとも、安倍晋三の拉致に関する「考え」は安倍晋三から金正恩にとっくの昔に既にしっかりと伝わっていると見ていることになり、後は金正恩の対応次第ということになる。
だから、拉致被害者全員の帰国のためにはあとは「金正恩委員長がですね、大きな決断をすることが求められます」と、この番組での相手任せの発言となったのだろう。
ところが、6月15日夜、国営の対外向けラジオ、ピョンヤン放送が、この番組でも取り上げているが、「日本は既に解決された拉致問題を引き続き持ち出し、自分たちの利益を得ようと画策している。国際社会が一致して歓迎している朝鮮半島の平和の気流を必死に阻もうとしている」(NHK NEWS WEB)との日本政府非難の論評を流したという。
と言うことは、安倍晋三の「拉致問題についての考え」が金正恩に十分に伝わっているとの見方を取ったとしても、米朝会談でトランプから拉致問題の解決を提起されたのに対して「拉致問題は解決済み」という従来の見解を取らずに拉致問題を巡る日本との対話にオープンな姿勢を示したことは全て偽りであって、金正恩からしたら、そのような姿勢は外交辞令だと言うかも知れないが、実際には安倍晋三の「拉致問題についての考え」は金正恩の腹に何も応えていなかったと解釈しなければならないことになる。
だからこそのピョンヤン放送の「拉致問題は解決済み」の再主張ということなのだろう。
勿論、日本政府に対する牽制という意味合いもあるかも知れない。いつの日かの時点で拉致解決の交渉に入るスケジュールを組んでいる可能性は必ずしも否定できない。
と言うことは、当面の牽制ということになるが、当然、牽制が解けるのを待つのではなく、自らの外交能力に恃んで北朝鮮に積極的に働きかけて「拉致問題は解決済み」を克服しなければならないことになる。
ましてや牽制ではなく、実際に「解決済み」と決めているなら、尚更に北朝鮮側のその決定事項を克服できるかどうかに安倍晋三の真の外交能力がかかっていることになる。「拉致問題の解決に資する会談としなければならない」などと自身の成果だけを考えて開催か否かを選択するのではなく、拉致被害者にとっての成果をこそ視野に入れて「ただ闇雲に」首脳会談開催を目指して、その場で金正恩と対決し、自身の外交能力を賭けて拉致被害者の全員帰国を果たすべきだろう。
拉致被害者の全員帰国をスケジュールに入れることができない日朝首脳会談の回避は自身の外交経歴にキズがつくことへの回避でもある。