安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定 「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を 直接示すような記述も見当たらなかった」とする “政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき |
2018年6月12日、シンガポールで歴史上初めての「米朝首脳会談」が開催され、安倍晋三は会談内容の詳細を知るために同日、トランプと電話会談を行った。翌6月13日、安倍晋三の腰巾着、自民党幹事長代行萩生田光一が安倍晋三と会談。会談後の対記者談発言。
「NHK NEWS WEB」(2018年6月13日 16時26分)
萩生田光一「トランプ大統領が単に拉致問題を提起しただけではなく、今まで『拉致問題は解決済みだ』と公の席で言ってきたキム・ジョンウン委員長からそういう反応がなかった。
これは大きな前進だ。北朝鮮とこれからさらに話をするという確認ができたと思う。日本が前面に出て、しっかり拉致問題の解決に向けた努力をしてもらいたい」
記事解説。〈キム委員長がトランプ大統領との会談で拉致問題は解決済みだという従来の見解を示さなかったことを明らかにしました。〉
要するにトランプが安倍晋三に前以って依頼されていたとおりに米朝首脳会談で金正恩に対して日本との間で懸案事項となっている拉致問題を取り上げ、その解決を図るべきだと問題提起した。対して金正恩はトランプに北朝鮮が従来の立場としてきた「拉致問題は解決済み」との態度は取らずに首脳会談後のシンガポールでの記者会見でトランプが「拉致問題は安倍総理大臣にとって大事な問題だ。この問題を提起した。彼らは取り組んでいく。共同声明には記されなかったが、取り組んでいくことになる」(NHK NEWS WEB)と発言していることから、「日本との間で解決のための交渉に取り組んでいく」とでも応じたのだろう。
金正恩のこのような反応を以って萩生田光一は「北朝鮮とこれからさらに話をするという確認ができたと思う」と発言することになったはずだ。
但し安倍晋三はトランプとの電話会談後に首相公邸で記者団から質問を受けた会見(首相官邸サイト)では金正恩が「拉致問題は解決済み」との態度を取らなかった云々については何も触れていない。
安倍晋三「拉致問題についてでありますが、まず私から拉致問題について、米朝首脳会談においてトランプ大統領が取り上げていただいたことに対して、感謝申し上げました。
やり取りについては、今の段階では詳細について申し上げることはできませんが、私からトランプ大統領に伝えた、この問題についての私の考えについては、トランプ大統領から金正恩委員長に、明確に伝えていただいたということであります。
この問題については、トランプ大統領の強力な支援を頂きながら、日本が北朝鮮と直接向き合い、解決していかなければいけないと決意をしております」――
トランプの問題提起に対して金正恩が「拉致問題は解決済み」の態度を取らなかったことを萩生田光一が「大きな前進だ」と解釈したのは安倍晋三解釈の受け売りであろう。安倍晋三が「大きな前進」と見ていないのに腰巾着の方で「大きな前進」と吹聴するのは分を超えることになる。
安倍晋三はトランプとの電話会談後に記者たちに「大きな前進」と見る希望を披露せずに萩生田光一の口を通して「大きな前進」とする自らの希望をなぜ示すことになったのだろう。答は一つ、その希望が単なる希望的観測で終わった場合、“外交の安倍”をウリにしている手前、カッコつかないことになるからだろう。
一方で“外交の安倍”の金箔が剥げ落ちないよう用心し、その一方で同じく“外交の安倍”を自任している自尊心から拉致解決に何らかの希望を拉致被害者家族や国民に示さないと立場がなくなることからの窮余の策が萩生田光一の口を通して「大きな前進」と言わしめたということかもしれない。
果たして金正恩がトランプの拉致問題提起に対して「拉致問題は解決済み」とは発言しなかったことを以って安倍晋三の見立てどおりに「大きな前進」と解釈可能だろうか。
拉致解決の真の障害は、拉致被害者の生存が条件となるが、そのような条件下で北朝鮮側が「拉致問題は解決済み」という態度を取っていることが原因となっているのではなく、安倍晋三側が北朝鮮の完全非核化に向けて国連安保理決議の厳しい経済制裁履行の音頭を取っていることに加えて日本も独自の経済制裁を課していることが原因であって、その結果として「拉致問題は解決済み」という態度を誘発させているということであろう。
要するに原因と結果を正しく理解していないようだ。
正しく理解した上で、結果に過ぎない「拉致問題は解決済み」という態度を取り下げるよう求めていくためには安倍政権側が拉致解決の真の障害となっている原因たる北朝鮮に対する完全非核化要求と経済制裁等を用いた圧力政策の放棄以外に方法はないはずだ。
もし安倍晋三が自らの完全非核化要求の対北朝鮮圧力一辺倒政策がトランプの対北外交政策を大いなる力として北朝鮮側の軍事的暴発を誘発させることなく成功して完全非核化が実現すると見ているなら、成功こそが拉致解決の真の障害をなしている原因そのものの除外を意味することになり、障害の結果として北朝鮮側が態度として示していた「拉致問題は解決済み」を無効とすることができる。
いわば原因を先に解決することで、結果の無効を待たなければならない。しかし米朝首脳会談後の共同声明は非核化に向けた具体的行動や検証方法には触れていないという。金正恩が真に完全非核化の意思があるのかどうかも明らかとはなっていない。
原因の解決を成すまでには道のりは遠いということである。当然、金正恩が「拉致問題は解決済み」の態度を示さなかったからと言って、安倍晋三がそのことを以って拉致解決に向けた「大きな前進」だと腰巾着萩生田光一に代弁させること自体、甘い考えであり、早計に過ぎる。