財務省6月4日公表森友学園国有地売却報告書:不都合な事実を隠した「特段問題となるものではない」の奇々怪々

2018-06-05 12:12:43 | 政治
 安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定

「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を
直接示すような記述も見当たらなかった」
とする
“政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき

 2018年6月4日、財務省は森友学園への国有地売却に関する決裁文書改竄や交渉記録廃棄に関わる報告書を公表したとマスコミが一斉に伝えた。「時事ドットコム」記事から見てみる。

 記事は、〈報告書は安倍晋三首相が昨年2月、国会で「私や妻が関係していたなら、首相も国会議員も辞める」と答弁した後、学園側との交渉記録の廃棄が進められていった実態を指摘。ただ、財務省は首相官邸に対する「忖度」はなかったと結論付けた。〉と解説している。

 〈報告書によると、昨年2月の首相答弁を受け、理財局の中村稔総務課長が理財局内や近畿財務局に首相夫人の昭恵氏の名前が入った書類の存否を確認。中村稔総務課長は政治家らの問い合わせ状況などを示すリストを作成させ、当時理財局長だった佐川宣寿前国税庁長官に提出した。佐川氏はこうした文書について、「保存期間1年というルールに従うべきだ」との考えを示したため、総務課長は交渉記録を廃棄するよう指示されたと受け止め〉た。

 〈佐川氏は改ざんに関し「昨年2月から3月にかけて積み重ねてきた国会答弁を踏まえた内容とするよう念押し」していた。〉

 しかし記事は決裁文書改竄の時期を「昨年2月の首相答弁を受け」との表現で、それ以降としているが、この「首相答弁」とは2017年2月17日の衆院予算委員会を指す。当時民進党の福島伸享が質問している。

 福島伸享「この小学校の名誉校長とされているのが安倍昭恵先生という方で、右を見ると、安倍晋三内閣総理大臣夫人と書いております。この理事長の籠池先生の教育に対する熱い思いに感銘を受け、このたび名誉校長に就任させていただきましたと。

 この事実、総理は御存じでしょうか」

 安倍晋三「この事実については、事実というのはうちの妻が名誉校長になっているということについては承知をしておりますし、妻から森友学園の先生の教育に対する熱意はすばらしいという話を聞いております。

 ただ、誤解を与えるような質問の構成なんですが、私や妻がこの認可あるいは国有地払い下げに、もちろん事務所も含めて、一切かかわっていないということは明確にさせていただきたいと思います。もしかかわっていたのであれば、これはもう私は総理大臣をやめるということでありますから、それははっきりと申し上げたい、このように思います」

 と言うことは、改竄は2017年2月17日以降ということになるが、同日付「NHK NEWS WEB」記事によると、〈去年2月26日の日曜日、理財局の職員が近畿財務局の職員に出勤するよう要請し、決裁文書の改竄を具体的に指示したという〉ことになっている。
 
 と言うことは、佐川宣寿が「昨年2月から3月にかけて積み重ねてきた国会答弁を踏まえた内容とするよう念押し」したと言っていることは改竄を具体的に指示した2017年2月26日以降も、3月にかけて決裁文書に記録された事実経緯に基づかない虚偽の国会答弁を適宜行っていたことになる。

 勿論、記録された事実経緯どおりの答弁をした場合は不都合が生じることからの事実隠しの虚偽答弁と言うことであろう。

 但し昨日の当ブログに書いたように「昨年2月から3月」にかけた佐川宣寿の国会答弁と、その国会答弁と一貫性を持たせておかなければならない安倍晋三や麻生太郎の国会答弁はどのような記録に基づいて作成されたのだろうか。

 あるいはただ単に一旦は目を通した決裁文書に記録されている事実経緯どおりの、いわば目を通したどおりの答弁をした場合は各方面に悪影響が出てくる恐れから、決裁文書の事実経緯と異なる事実隠しの虚偽答弁を当初から“積み重ねた”と言うことなのだろうか。

 だとしたら、決裁文書を一旦は目を通した時点で不都合な事実と不都合でない事実を点検、不都合な事実を隠したそれぞれの国会答弁書を作成し、国会答弁として使用したものの、国会で問題になるにつれて情報公開制度に基づいた情報開示請求された場合、「保存期間1年というルール」を楯に開示不可能を宣告したとしても、決裁文書に記録された実際の事実と国会答弁の事実に違いが厳然として存在する以上、その違いがどこで漏れるか、あるいはリーク情報として世に漏れ出ない保証がないことから、文書を改竄、改竄した文書を国会に提出することで改竄した事実を実際の不都合な事実とすり替える際どい離れ業を演じて責任問題の発生を回避したということになるのだろうか。

 当然、考えられる不都合な事実は決裁文書改竄によって隠されることになった安倍昭恵に関する記述と政治家の関与に関わる記述が主として占めることになる。財務省公表の「報告書」のこれらのことに関する一部を見てみる。文飾は当方。

 「森友学園案件に係る決裁文書の改ざん等に関する調査報告書」(平成30年6月4日 財務省)

 (3)平成29年以降の状況

 ⑩森友学園案件が国会審議で大きな議論となり、内閣官房長官の記者会見でも多数質問がなされる中で、平成29年2月22日(水)には、本省理財局と国土交通省本省航空局から内閣官房長宮への説明が行われた。説明者側からは、森友学園案件の経緯のほか、取引価格の算定は適正に行われていることや、総理夫人付や政治家関係者からの照会に対して回答をしたことはあるが、特段問題となるものではないこと等について説明した。

 「IV.応接録の廃棄等の経緯」
 
 (2)政治家関係者との応接録の廃棄等の経緯

 ②平成29年2月17日(金)の衆議院予算委員会における内閣総理大臣の上記答弁以降、本省理財局の総務課長から国有財産審理室長及び近畿財務局の管財部長に対し、総理夫人の名前が入った書類の存否について確認がなされた。これに対して、総理夫人本人からの照会は無いことや、総理夫人付から本省理財局に照会があった際の記録は作成し、共有しているが、内容は特段問題となるものではないことを確認したほか、近畿財務局の管財部長からは、その他の政治家関係者からの照会状況に関する記録の取扱いについて相談がなされた。

 さらに、上記の同年2月21日(火)の国会議員団との面会の状況も踏まえ、本省理財局の総務課長から近畿財務局の管財部長に対して政治家関係者をはじめとする各種照会状況のリストの作成を依頼し、本省理財局の国有財産審理室長に当該リストが送付された。

 本省理財局の総務課長は、その後速やかに、国有財産審理室長に対して政治家関係者からの照会状況に絞り込んだリストを作成するよう指示をした上で、当該リストにより理財局長に報告した。その際、理財局長は、応接録の取扱いは文書管理のルールに従って適切に行われるものであるとの考えであったことから、総務課長は、政治家関係者との応接録を廃棄するよう指示されたものと受け止め、その旨を国有財産審理室長、さらに近畿財務局の管財部長に伝達した。こうした状況は、理財局次長や国有財産企画課長にも共有された。

 近畿財務局においては、本省理財局からの指示を受けて、政治家関係者との応接録として存在が確認されたものを紙媒体及び電子ファイルともに廃棄した。本省理財局内においても、保存されていた政治家関係者との応接録の廃棄を進めたが、サーバ上の共有フォルダに保存されていた電子ファイルについては、廃棄されず残されたものも存在した。

 (3)森友学園側との応接録の廃棄等の経緯

 平成29年2月22日(水)、国会議員より、森友学園案件における森友学園側との応接録の存否についての確認があった。また、翌日23日(木)には、一部政党より、平成25年から平成26年にかけての財務省本省及び近畿財務局職員と森友学園関係者との接触記録の存否について、無いならば無い旨を書面で提出するよう要求があった。本省理財局内では、森友学園案件に関する応接録に関して、上記の通り売買契約が締結された平成28年6月20日(月)をもって「事案終了」に当たるものと整理していたことから、そうした記録は無いものと整理し、後者の要求に対して、平成29年2月24日(金)、その旨を記載した書面を提出した。

 平成29年2月24日(金)の衆議院予算委員会において、本省理財局長は、「昨年6月の売買契約に至るまでの財務局と学園側の交渉記録につきまして、委員からのご依頼を受けまして確認しましたところ、近畿財務局と森友学園との交渉記録というのはございませんでした」「面会等の記録につきましては、財務省の行政文書管理規則に基づきまして保存期間1年未満とされておりまして、具体的な廃棄時期につきましては、事案の終了ということで取り扱いをさせていただいております。したがいまして、本件につきましては、平成28年6月の売買契約締結をもちまして既に事案が終了してございますので、記録が残っていないということでございます」等と答弁した。

③ 平成29年2月24日(金)の衆議院予算委員会において上記の理財局長の答弁があるまでに、本省理財局の総務課長及

 び国有財産審理室長は、森友学園案件関係の各種応接録が実際には残っていることを認識していたものと認められる。他方、理財局長は、各種応接録の実際の存否を確認しないまま。
 
 「財務省行政文書管理規則」等に定められている以上、保存期間が終了した応接録は廃棄されているはずであると認識していたものと認められる。

 さらに、上記の本省理財局長の答弁の後には、同局長から総務課長に対して、国会において「財務省行政文書管理規則」どおり対応している旨を答弁したことを踏まえ、文書管理の徹底について念押しがあり、総務課長は、残っている応接録があるならば適切に廃棄するよう指示されたものと受け止めた。(以上)

 51ページの文書だが、以上を読んだだけで、誰の眼にも「報告書」の狙いが不都合な事実隠しにあるのが分かる。文飾箇所を再度ここに記載してみる。

 〈取引価格の算定は適正に行われていることや、総理夫人付や政治家関係者からの照会に対して回答をしたことはあるが、特段問題となるものではない〉

 要するに不都合な事実隠しの、このことを裏返すと、自分たちに都合のよい解釈・判断のみを用いて国有地売却は公平・適正に行なわれたと看做して、その妥当性を主張し、翻って財務省自身の、より広く言うと、安倍内閣自身の売却に関しての正当性を証明しようとしているに過ぎない。

 〈総理夫人の名前が入った書類の存否について確認がなされた。これに対して、総理夫人本人からの照会は無いことや、総理夫人付から本省理財局に照会があった際の記録は作成し、共有しているが、内容は特段問題となるものではないことを確認した〉

 問題となっていたのは森友学園理事長籠池泰典が自身の背後に安倍晋三や安倍昭恵がさも控えているかのように思わせるためにその名前、その存在をちらつかせ、その影響力で以って財務省をコントロールし、より安価な価格で国有地を手に入れようとしたことであり、安倍昭恵を自身の建設予定の小学校の名誉校長に据えたのも影響力利用の一つであって、〈総理夫人本人からの照会は無い〉ことを以って〈特段問題となるものではない〉と結論づけることは決して公平とは言えない。

 この結論づけに2015年4月30日付〈5・特例承認の決裁文書②「普通財産の貸付けに係る特例処理について」〉に記録されている安倍昭恵についての記述に財務省報告書が何ら触れていないことも不都合な事実隠しに相当、結論が決して公平とは言えない理由の一つとなる。

 国有地売却の財務省側と当時森友学園理事長籠池泰典との打ち合わせの際に籠池泰典が「本年4月25日、安倍昭恵総理夫人を現地に案内し、夫人からは『いい土地ですから、前に進めてください』とのお言葉をいただいた。」と財務省側役人に発言し、なおかつ森友学園籠池理事長本人と安倍昭恵が小学校建設予定地に立っている写真を見せたのは、明らかに安倍昭恵がその夫安倍晋三によって与えられている有形無形の政治的影響力を利用しようとしていたからであり、その影響力が国有地売却価格にどう反映したのかは未解明のままであり、未解明のまま、〈特段問題となるものではない〉結論づけているのだから、不都合な事実を隠した、自分たちに好都合な結論と言わざるを得ない。

 籠池泰典は安倍昭恵をきっと便利な広告塔として失礼にならないよう、丁寧な扱いをしていたに違いない。

 また総理夫人付谷査恵子の背後には安倍昭恵という総理夫人が控えていることによって財務省に対するその照会が安倍昭恵本人の意思に基づいているとの判断を誘発させることになった売却に関わる財務省側の特段の配慮との疑惑が浮上している以上、財務省だけの考えで、〈特段問題となるものではない〉と簡単に無罪放免とするのも、不都合な事実を隠しに当たる。

 安倍昭恵と同様に〈政治家関係者からの照会〉に関しても、〈特段問題となるものではない〉と、籠池泰典から依頼を受けて財務省や近畿財務局に行った国有地売却に関わる照会を何ら問題視していない。

 ではなぜ政治家関係者からの照会状況の応接禄を作成しておきながら、それを廃棄するに至ったのだろうか。単なる照会であったなら、隠す意図のもと、廃棄する必要性は何ら生じない。〈政治家関係者からの照会〉〈特段問題となるものではない〉と無視していながら、廃棄処分自体が実際はそうではなかったことの証明、不都合な事実を隠さざるを得なかった証明としかならない。

 土地価格算定について次のように記述している。〈森友学園案件をめぐっては、国会審議等において、地下埋設物の撤去費用の算定を含めた価格算定手続の妥当性等について議論がなされているが、財務省としては、森友学園に対する国有地の売払い処分は、小学校開校に向けて校舎の建設工事が進む中で新たな地下埋設物が発見され、相手方からの損害賠償請求のおそれがあるなど切迫した状況の中で行われたものであり、将来にわたって一切の国の責任を免除するよう特約条項を付すことも含めて、ぎりぎりの対応であったと考えている旨を答弁している。本報告書は、平成29年2月以降の森友学園案件に係る決裁文書の改ざん等に関する調査の結果をとりまとめたものであり、上記の価格算定手続の妥当性等を含め、平成28年6月20日(月)の事案終了前の状況について調査を行ったものではない。〉――

 一方では、〈取引価格の算定は適正に行われている〉と結論づけながら、〈損害賠償請求のおそれがある〉切迫した条件下で、〈将来にわたって一切の国の責任を免除するよう特約条項を付すこと>を唯一国側に有利な条件を埋め合わせに契約に至った経緯、その正当性を述べているが、売買契約が成立した〈平成28年6月20日(月)の事案終了前の状況について調査を行ったものではない。〉と、地下埋設物量算定の過程、算定した地下埋設物量に対応した地下埋設物処分・撤去費用の見積もり交渉等は一切排除した、結果としての売買契約成立のみに限った正当性であって、一方で不都合な事実を隠した国有地売却の正当化であろう。

 「報告書」を全部読んだわけではないが、以上見ただけでも、解明しなければならない部分が多くある報告書となっているはずだ。

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