安倍晋三:従軍慰安婦強制連行否定2007年3月16日閣議決定 「政府が発見した資料の中には、軍や官憲がいわゆる強制連行を 直接示すような記述も見当たらなかった」とする “政府発見資料”とは如何なる資料か、公表すべき |
「高度プロフェッショナル制度」とは「コトバンク」に次のように解説されている。
〈専門職で年収の高い人を労働時間の規制の対象から外す新たな仕組み。年収1075万円以上のアナリストなどの専門職が対象。労働基準法は法定労働時間を超えて働かせる場合、割増賃金の支払いを義務づけているが、対象となる働き手は残業や深夜・休日労働をしても割増賃金が一切支払われなくなる。 (2017-07-12 朝日新聞 朝刊 1総合)〉
首相官邸サイトの「アベノミクス 成長戦略で明るい日本に!」と題したページに「未来投資戦略2018(全体版)」なるPGF記事が案内されていて、「未来投資戦略2018 ―「Society 5.0」「データ駆動型社会」への変革―」(平成30年6月15日)と表題のついた記事中、ⅱ)生産性を最大限に発揮できる働き方の実現の見出しで、 「長時間労働の是正、健康確保」、「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」、「最低賃金の引上げ」、「多様な選考・採用機会の拡大」等々と並べた項目の一つ、「多様で柔軟なワークスタイルの促進」の中で高度プロフェショナル制度に触れている。
文飾は当方。
〈労働者が、健康を確保しつつ、自律的に働き創造性を最大限に発揮することを支援するため、高度プロフェッショナル制度を創設する。〉――
要するに高度プロフェッショナル制度を創設した場合は「多様で柔軟なワークスタイルの促進」によって、「生産性を最大限に発揮できる働き方の実現」の可能性を謳っていることになる。
自民党は企業の利益を第一番に代表する政党である。一般生活者の利益を言うとき、あくまでも企業利益を優先させて、その富を再分配する形での利益であって、企業利益あっての一般生活者の利益という順番を取っている。
あるいは企業利益なくして一般生活者の利益なしの前者に重きを置いた姿勢でいることになる。
ところが、このような富の再分配の原理が満足に機能していない典型例が円安と株高で大企業や富裕層が特大の利益を上げているにも関わらず、満足に一般生活者の実質賃金の向上となって回らず、その結果、個人消費が低迷する経済状況を招いている安倍晋三のアベノミクス政策であろう。
いずれにしても安倍政権が実現を目指している高度プロフェッショナル制度は企業の利益を第一番に考えていることになる。と言うことは、企業側は安倍晋三の高度プロフェッショナル制度を大歓迎していることになる。大歓迎しなければ、自民党は企業の利益を第一番に代表する政党としての存在意義を失うことになる。
大歓迎と思いきや、高度プロフェッショナル制度に関する「ロイター企業調査」(2018年6月21日 / 11:20)を見ると、大歓迎とは程遠い状況にあることが分かる。参考のために記事の画像を載せておいた。
〈調査は、ロイターが資本金10億円以上の日本の中堅・大企業539社に調査票を発送。6月4日─15日に実施。回答社数は225社程度。〉となっている。
ここで改めて断っておくと、高度プロフェッショナル制度は「多様で柔軟なワークスタイルの促進」によって、「生産性を最大限に発揮できる働き方の実現」の可能性を謳っている。
記事は、〈高度プロフェッショナル制度は専門性が高く所得の高い労働者を労働時間規制の対象からはずし、自由な働き方で成果を上げてもらい、それに応じた給与を払うというもの。そのかわり、残業代も深夜・休日労働の割り増し賃金も支給されないことになる。ただし、年収は基準年間平均給与額(厚生労働省が定める)の3倍を上回ることとされている。〉と解説、「多様で柔軟なワークスタイル」について触れている。
但しロイター企業調査を画像で見る限り、「働き方の柔軟性向上」に関しては60%も期待を掛けているが、「生産性向上」に向かうと考えている企業はたったの14%。また、「生産性向上」と深い繋がりを持つ「社員のモチベーション向上」はさらに少なくて7%のみ。
「残業減少」の動機とする企業は同じく7%。
記事は、〈「その他」の12%は「メリットはない」との回答が大勢を占めた。〉と書いている。
また画像右側の調査結果、「高度プロフェッショナル制度の対象者は2年後には、従業員数全体のどの程度の割合となる見通しですか」の問いに対して主なところで、「1%未満」の見通しが64%。「10%未満」を合計すると、98%。10%以上の合計はたったの2%。
と言うことは、厚生労働省が定めている基準年間平均給与額の3倍を上回る年収額を獲得して、高度プロフェッショナル制度に新規に対象者入りする労働者自体が早々に増えないと見ている企業が大半を占めていることになる。
さらに「長時間労働削減の法制度化により、労働コストは前年より減少してきていますか」の問に対して「はい」が36%、「いいえ」が64%。
労働コストの削減は企業にとっての最大メリットであり、この最大メリットに応えるのが企業の利益を第一番に代表する自民党の最大の存在意義となるが、逆に労働者にとっての最悪のメリットとなる。
但し両者間に於けるこの利益相反関係に可能な限りバランスを与えるためには企業が労働コストの上昇によってある程度のマイナスを受けても、生産性向上によって労働コストの上昇を吸収可能とすることなのは断るまでもない。
いわば上記PDF記事が、〈国内外の高度AI人材を積極的に確保するため、クロスアポイントメント制度の普及や大学等における適切な業績評価に基づく年俸制の導入等、幅広い企業や大学・研究機関等において海外と同程度の待遇(報酬)を実現するよう、人事・給与制度の効果的な見直しを促す。〉等々謳っている働き方改革での「待遇(報酬)」改善=労働コスト上昇は生産性向上を最大動機として実現可能としなければならないはずだが、安倍晋三の高度プロフェッショナル制度が「生産性向上」に向かう動機となり得ると考えている企業がたったの14%しか占めていない結果として、労働コストが減少していくと見ている企業が36%で、減少していかないと見ている企業が64%ということなのだろう。
高度プロフェッショナル制度によって企業側には総体的に「生産性向上」も期待できない、「社員のモチベーション向上」も期待できないでは企業の利益を第一番に代表する自民党の存在意義に真っ向から反するだけではなく、一般生活者の利益にも反することを意味することになる。
結果、記事は調査を、〈「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)について、多くの企業が制度内容や効果を疑問視していることがわかった。〉、〈企業からは高プロ制度導入を積極的に評価する声はほとんどみられなかった。〉、〈企業側から見た壁として「対象者の給与が平均年収の3倍を保証するとなると、給与水準が高すぎて導入は難しい」(複数の企業)など、成果と労働コストのバランスの問題が挙げられた。〉等々、低評価することになったのだろう。
「朝日新聞アンケート」(2018年6月21日20時23分)もロイター調査と似たような結果を伝えている。
5月28日~6月8日に行った全国の主要100社に対するアンケート。
「働き手の自由度や効率を高める」50社
「労働時間が長くなる懸念がある」17社
「法が成立した場合に採用するか」
「採用したい」6社
「採用するつもりはない」31社
「わからない」51社
〈「採用しない」と答えた企業からは、長時間労働を助長することへの懸念の声がめだった。〉
50社が「働き手の自由度や効率を高める」としていることは、生産性向上の動機となると見ていることになる。だが、「採用したい」の6社に対して「採用するつもりはない」が31社、「わからない」が51社となっている趨勢からは高度プロフェッショナル制度導入が生産性向上のキッカケとなると見ていないことになる。
この矛盾は安倍政権の「高度プロフェッショナル制度は働き手の自由度や効率を高める」としている宣伝文句のそのままの受け売りと疑うと、解くことができる。
いずれにしても両調査から窺うことのできる結論は自民党が企業利益を第一番に代表する政党でありながら、安倍晋三の高度プロフェッショナル制度に関しては企業は自らの利益とは考えず、歓迎はしていないということである。
ただでさえ安倍晋三はアベノミクスによって一般労働者に向かうべき富の再分配の蛇口を閉めて、その機能を劣化させている。企業が歓迎しない法律を強硬に施行した場合、富の再分配の元手をなお一層減らすことになって、高度プロフェッショナル制度対象労働者のみならず、一般生活者の利益にも悪影響を及ぼすことになる調査結果となっている。