■名古屋市消防出初式の写真から
今回は、名古屋市消防局消防出初式の写真から記事を作成する。いずれ詳細を本ブログに掲載したい、という記載は行事閑散期への準備であるのだが、閑散期は閑散期の記事があり、実質未記載に終わるものが多い北大路機関である。今回はその一つを埋めたい。
訓練展示において、海上正面から二機のドーファンが接近する。後方の機体が先頭の機体のエンジンから発する排気熱で霞んでいるのがみえる。
名古屋市消防局は、航空救助任務を展開するべくヘリコプターを運用しており、ビル火災や山火事における航空消火、人命救助、水難事故に際しての捜索救難、救急救命士と共に要救助者を事故現場から医療施設まで搬送する航空救急任務などに充てている。名古屋市消防局が運用するアエロスパシアルAS365N1は、通称“ドーファンⅡ”と呼ばれ、フランスのアエロスパシアル社が開発した双発中型ヘリコプターである。民間型としては600機以上が運用されているベストセラー機で、軍用型としても海軍の捜索救難用、陸軍用では輸送型に加え対戦車ミサイルHOTや20㍉機関砲を搭載した武装型(AS365Nの軍用型がAS365Kであるが、軍用として発注を受けたのは武装型6機をアンゴラ政府より受注したので、武装型の印象が強いという方も見えようか)が幾つかの国で運用されている。
機動飛行を行うドーファンⅡ、引き込み脚方式を採用しており、高速巡航に適した機体である。
性能は、乗員四名の他十名分の座席を有し、最高速度は315km/h、巡航速度260km/hで、滞空時間は165分。724hpのターボメカ社製アリエルICIエンジン二基を搭載しており、双発であるから突発的なエンジントラブルに際しても対処可能である。航続距離は715km、全備重量4100kgである。初飛行は1984年2月29日。
ドーファンⅡの各種装備であるが、山火事に対処する装備として500?型消火バケット、更に東京消防庁では配備が開始されているということで、遠からず普及が期待されるのが機外取り付け式消火装置ファイアーアタッカーで、ビル火災などに対して、水の投下ではなくポンプによる吹き付けにより文字通り消火する装置がある。この他、人員の救出に用いる電動ウインチ、拡声装置(航空機用に700kw型と900kw型がある)、1600wサーチライトなどがある。
航空救難は、パイロット二名、メカニック1/2名、そして二名の救急員により展開される。
その特色としては、機体の性能から、装備できる器材に重量制限がある点、更にローターが巻き起こすダウンウォッシュが小型船舶や地震災害などにより生起した半壊家屋を破壊する可能性もある為、こうした際に瞬時の状況判断が求められる。更に救急員は機体が起こす突風と轟音の中で正確な判断を行い実行できる能力が求められるという。
航空隊の操縦士や救難員は救急隊員やポンプ士といった消防隊員から訓練生に選抜され、自衛隊のような直接志願する航空学生課程は無いという。その選抜競争倍率は30倍にも達するというが、こうした厳しい難関を突破した航空救難員が、日夜災害に備えているのである。
HARUNA
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