■東北方面隊記念行事
陸上自衛隊は、北部・東北・東部・中部・西部の五方面隊を以て、日本列島の防衛にあたっている。その東北方面隊創設記念行事は観閲行進の様子を掲載したが、本日は訓練展示などの様子を掲載したい。
2006年度は九月に生起したヘリコプター不時着事故を契機として各駐屯地祭における航空機飛行展示が見送られたが、霞目では海上自衛隊八戸航空基地、そして航空自衛隊松島基地より哨戒機や練習機が祝賀飛行を行い式典に華を添えた。
霞目飛行場は広大であり、来場者の数に対して人口密度が高くなく、その分ゆっくりと展示などをみることができた。写真は新編された東北方面混成団隷下の第38普通科連隊に所属する軽装甲機動車。教育訓練部隊と即応予備自衛官の部隊を統合したものであるが、軽装甲機動車を配備しているのはある種意外であった。
MLRSと88式地対艦誘導弾。中部方面隊には方面隊直轄の野戦特科部隊が編成されていない為、装備が望まれる(東部方面隊にも特科群は無いが、宇都宮駐屯地に第六地対艦ミサイル連隊があり、重砲やMLRSは富士学校が装備している)。なんでも、長射程のATACMSを日本原駐屯地に配備した場合、域内のほぼ全域をカバーするとか。方面隊の独立性を考えた場合、MLRSは無理でも、例えば第一特科団隷下の三個地対艦ミサイル連隊の内の一つを転用、という選択もあるのではないか。
第9高射特科大隊の81式短距離地対空誘導弾(C)。81式を改善したもので、射程の延伸、撃墜率の向上、対妨害性の強化、全天候運用性能と被発見性の向上を図ったものである。と説明板に記されていた。
2006年度は模擬戦の予定が無かった為、野砲を用いた音楽演奏が行われた。ティンパニーの代わりに105㍉榴弾砲を使用するもので、野戦特科の運用からは退いたM2A1榴弾砲(もしくはデッドコピーの58式榴弾砲)を用いる。155㍉榴弾砲FH-70に見慣れた中にあって、この軽砲の空包発射の展示は興味をそそられるものがある。2004年に伊丹でも展示されたが、満足がいく写真を求めて霞目に望んだ。
軽砲は従来、155㍉砲が特科連隊第五大隊に配備され全般支援任務にあたる中で、普通科連隊と行動を共にし、迫撃砲制圧などの直協任務にあたる装備であったが、対砲兵能力などの観点から世界的趨勢として155㍉野砲に統一され、特科連隊から姿を消していった。
全長5.9㍍、砲身長2.36㍍で重量2.3㌧、通常榴弾での最大射程は11.2km。砲身命数は20000発とされ、頂点を5000㍍の放物線を描く。TNT2.2kgが内臓された14.69kgの通常榴弾は炸裂すると長径30㍍、短径20㍍に有効破片を散布する。操作には10名を要するとされるが、音楽演奏での空包射撃とあり、5名で操作されていた。
重量からは高機動車により牽引できるのだが(米海兵隊は牽引式155㍉榴弾砲M198をハンヴィー野戦車にて牽引している)、式典では73式大型トラックが用いられていた。トラックから切り離されると射撃準備を開始する。切り離しから3分で射撃準備が完了するとされている。
空包発射。ほんのりと砲焔が写っている。こうした105㍉砲は、近年、特に空中機動などでの被空輸性能などで見直されており、例えば2001年以来のアフガニスタンにおける山岳戦では、直接照準が可能で(つまり目標に際し迅速な火力投射が可能となる)、且つ少数目標を相手とする対ゲリラ戦では、その軽便さなどが需要に合致しているとの報告が出されたこともある。
第一空挺団の特科大隊もかつて、この105㍉榴弾砲を運用していたが、耐用年数限界に伴う用途廃止により、現在では120㍉迫撃砲RTに代替されている。射程延伸弾では射程は13000㍍と長いものの、やはり迫撃砲では野砲と同じ運用は出来ないと聞いた事がある。
M777のような超軽量中砲も開発されているが、砲弾の重量を考えれば緊急展開部隊には軽砲の有するポテンシャルも少なからずあるように思える。そんなことを考えているうちに野外音楽演奏が終了し、隊員が観閲台へ敬礼する。薬莢が砲座の周囲に散乱している。この軽砲は音楽演奏の他、国賓来日の際には礼砲としても運用されている。
訓練展示、つまりこの空包を用いた野外音楽演奏では3門の105㍉榴弾砲が用いられた。霞目での模擬戦は戦車やヘリボーンを駆使した大規模なものであるとの事だが、小生にはこうした軽砲の射撃も興味深いものであった。この日は、ブルーインパルスジュニアによる飛行展示(走行展示?)や儀仗隊によるライフルドリルの展示なども行われた。
HARUNA
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