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今津駐屯地創立54周年記念行事 2006年11月19日

2007-05-25 13:13:06 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

■今津駐屯地祭詳報

 琵琶湖岸の北、滋賀県高島市にある陸上自衛隊今津駐屯地には、第三戦車大隊、第十戦車大隊という、中部方面隊作戦部隊打撃力の中枢というべき強力な機甲部隊が駐屯している。一週間がかりでまとめた詳報、今津駐屯地祭の様子を特集したい。

Img_2474  戦車の前に集結した部隊、並ぶ砲身が猛々しい。今津駐屯地の所在する滋賀県は第三師団の警備管区であるが、第三師団隷下の第三戦車大隊と共に饗庭野演習場と接していることもあり、第十師団隷下の第十戦車大隊も駐屯している。

Img_2198  京都駅より湖西線を利用し近江今津駅へ、シャトルバスを利用し0900時頃、今津駐屯地に到着した。2005年は自動車にて展開したが、広大な駐車場があり、駐車場から駐屯地までのシャトルバスも運行されていた。地面が濡れ、隊員がレインコートを着用していることからわかるように、天気予報は雨天であったが、式典の間は奇跡的に天気がもっていた。

Img_2494  1000時頃より入場が始まり、一旦戦車の前に整列して後、会場に入場した。部隊整列、手前の会計部隊は64式小銃を携行している。部隊は近代化が進んだようで、2005年には機甲科隊員の多くがM-3短機関銃を携行していたが、89式小銃に更新されていた。

Img_2496  中隊旗が高々と掲げられる。戦車帽を装着した旗手が四名、四振の戦車中隊旗が見える。奥には本部管理中隊の中隊旗がみえる。他方、師団改編により戦車大隊を縮小した第三戦車大隊は、戦車中隊旗は二振と本部管理中隊旗ということから、一個戦車中隊が廃止されたことがみてとれる。

Img_2517  1032時、部隊巡閲を行う第三戦車大隊長兼今津駐屯地司令の南清治2佐。2005年度末に実施された第三師団改編により、第三特科連隊が特科隊に縮小され、特科大隊を廃止、特科中隊を基幹とする編成に移行した為、今津に駐屯地していた四個中隊基幹の第五大隊も廃止されている。

Img_2522_1  今津駐屯地祭のポスターでは、第三戦車大隊に配備されたばかりの新装備である96式装輪装甲車が大きく掲載されていた。ちなみに五月に開催された千僧駐屯地における第三師団創設記念行事では73式装甲車が観閲行進に参加していた。

Img_2539_1  1101時、観閲行進準備の号令一下、隊員は戦車の前に整列する。74式戦車の乗員数は4名、第三戦車大隊と第十戦車大隊の計6個戦車中隊の各中隊から一個小隊規模の戦車が観閲行進に参加した。観閲行進も前年より若干規模が縮小したようだ。

Img_2562_1  整列していた機甲部隊が、轟々たるエンジン音を響かせ、待機位置へ移動する。空気が震え、大地が鳴動する。縦列に待機していた戦車が続々と動き出し、排気煙の彼方へ進んでゆく。今津駐屯地は、グラウンドを囲む東西南北の四辺の内、二辺が開放されており、撮影の自由度が高い。

Img_2574_1  1112時、第十戦車大隊の73式小型トラック、そして第三戦車大隊の車輌が先頭に観閲行進が開始される。その背後には待機位置に集結した車輌群が望見できる。続く車輌は重レッカー車、78式戦車回収車。位置によってはこのように望遠レンズの圧縮効果を最大限に活かした写真撮影が可能である。

Img_2260  第三後方支援連隊第二整備大隊の戦車直接支援中隊の78式戦車回収車。搭載するクレーンやデリックは、戦車のエンジン交換や砲塔の吊り上げに用いる。また、故障車輌を回収するためにウインチを搭載しており、部隊稼働率の維持や損耗からの復帰に重要な位置を占める車輌だ。

Img_2591  第三戦車大隊本部管理中隊が運用する96式装輪装甲車。後方には74式戦車が続いている。本部管理中隊は、中隊本部、指揮小隊、通信小隊、偵察小隊、補給小隊、整備小隊、衛生小隊より編成されている。また、中隊本部も装甲車などを保有している。

Img_2267  96式装輪装甲車は、1992年より開発が始められ、1994年に実用試験を開始、1996年に制式化された装輪式装甲車で、14.5㌧の車体に10名の隊員を収容し、最高時速は100km/h、路上航続距離は一般に500km以上あるとされている。40㍉自動擲弾銃もしくは12.7㍉重機関銃を搭載している。装備されているのは重機関銃である。仰角俯角で重機関銃の方が自由度が高く、戦車部隊を掩護する為と考えられる。

Img_2594  第三戦車大隊の74式戦車、部隊マークは獅子。74式戦車は873輌が量産された陸上自衛隊第二世代の主力戦車で、全備重量は38㌧、油気圧サスペンションを用いて前後左右に車体を傾け、地形を最大限に活かした運用が可能である。

Img_2603  第十戦車大隊の74式戦車、部隊マークは鯱である。戦車砲は105㍉ライフル砲で、APFSDS砲弾の採用により現在の脅威対象に対しても高い威力を有している。更に、レーザー測遠器と弾道コンピュータによる高い射撃精度を有している。採用時、この様式を用いていたのは74式だけであった。

Img_2280  第十戦車大隊本部管理中隊の73式装甲車。昨年までは60式装甲車を運用していた。全備重量は13.3㌧、アルミ製の車体は浮航装備により水上航行も可能である。車内から操作する12.7㍉機銃、そして車体銃として7.62㍉機銃を搭載しており、車内容積は60式の実質二倍となったため、装備品などの収容能力も向上している。

Img_2606  続く74式戦車。第三戦車大隊の二倍の戦車中隊を有する第十戦車大隊。写真の奥にも煌々たる戦車のライトが見て取れる。防御力は第二世代の趨勢として、避弾性を重視した砲塔形状に重点をおいて、装甲厚は同レベルの戦車砲の直撃に耐えるかは、文字通り運用により左右されるが、2000年9月に実験用として防弾装甲付戦車改修が8800万円で発注され、上富良野で試験された旨、月刊軍事研究に記載があったことを追記していきたい。

Img_2288_1  多くの戦車が観閲行進するため、流し撮に挑戦する機会もあった。射撃統制装置や暗視装置などで旧式化が指摘される74式戦車は、熱線暗視装置(89式装甲戦闘車のものではないかといわれる)、YAGレーザー測距器、レーザー検知器、サイドスカートを装着した試作車が開発されたが、90式戦車の生産が優先され、試作に終わっている。

Img_2620  84㍉無反動砲を手に、仮設敵陣地へ向かう隊員。1118時の観閲行進終了とともに、訓練展示準備に移る。諸般の事情で航空支援が無く、また、昨年は小銃のみを装備していた仮設敵が、今年度は対戦車装備を携帯している。仮設敵陣地は、会場右手の奥に二つの陣地を構え、模擬戦が展開される。

Img_2648  最初に、本部管理中隊偵察小隊が62式機関銃を搭載した73式小型トラックを用いて威力偵察、そして偵察オートバイとともに接近を試みた。しかし、数発発砲した後、仮設敵陣地より激しい反撃を受け、やむなく警戒しつつ後方に退避する。

Img_2677  仮設敵陣地より携帯対戦車装備であるパンツァーファウストⅢが向けられる。最大射程は300㍍、700㍉以上の装甲を貫徹するとされ、無誘導ながら侮れない貫徹力を有する。陸上自衛隊における正式名称は110㍉ロケット対戦車榴弾。

Img_2641  同軸機銃の空包を発射しつつ威力偵察を行う87式偵察警戒車。こちらは本部管理中隊偵察小隊の車輌ではなく、千僧駐屯地に駐屯する第三偵察隊の車輌である。射撃しているのは7.62㍉の74式車載機銃。快調に射撃を展示していた。

Img_2685  偵察隊、偵察小隊の情報を元に、姫路駐屯地より展開した第三特科隊のFH-70榴弾砲が射撃準備を行う。その目の前では、第三戦車大隊の74式戦車が自慢の油気圧式サスペンションを作動させ、姿勢変換の展示を行っているのが見える。これにより、斜面や家屋などの地形防御を活かす事が可能、装甲厚を補っている。

Img_2668  FH-70榴弾砲の射撃、砲焔が写っている。防衛モニターの方が軍事専門誌に投稿した内容を参考に記述すると、第三特科連隊は榴弾砲45門、人員1300名の編成であったが、第三特科隊に縮減が決定された時より徐々に人員の充足率を縮減し、人員500名、火砲20門の体制に移行したとのことである。

Img_2709  74式戦車の射撃。風が無かった為、雨雲の動向を抑制したことで、雨天とはならなかったものの、風がないという気象条件は、発砲時の硝煙や弾着を再現する擬爆筒の煙が流れず、濛々たる煙の向こう側に戦車が見えるという情景を醸しだしている。射撃しているのは増援に展開した第十戦車大隊の車輌。

Img_2747_1  訓練展示は一昼夜続き、消耗戦がようやく終わる頃、日の出の時間となった・・・、というのは大嘘で、珍しい砲焔の写真。特科の射撃です、大きな音がします、ご注意下さい!というアナウンスに応じてシャッターを切り続けた結果撮影できた写真。題名は“初日の出”。

Img_2756_1  訓練展示、特科火砲、戦車砲の射撃により無力化された仮設敵陣地へ、96式装輪装甲車が殺到する。装甲車群は仮設敵陣地の後方に回り込み、重機関銃を向ける、圧倒的な火力に包囲され、流石に仮設敵も抵抗の意思はなく、降車戦闘を行うことなく状況終了となった。

Img_2791  状況終了と共に後退する戦車。車長が身を乗り出し、後方の安全確認を行う。昨年は、今津に駐屯する第三特科連隊第五大隊が多数の火砲を展開させたのだが、機甲特科火砲縮減という趨勢の中、その解体は致し方ないと割り切らねばならないのだろうか。

Img_2803  この他、2005年は雨天により中止された戦車試乗が行われた。前年の、訓練展示終了と共に豪雨に見舞われたほどでは無いが、小雨から本降りに移りそうな雲行きを案じ、小生一行は戦車試乗の様子を開放されたテントの下より撮影し、装備品展示会場へ向かう。

Img_2564  装備品展示会場。駐車場を利用したもので、後ろの建物の裏側には模擬店が軒を連ねている。この他、FH-70や、饗庭野分屯基地より展開した航空自衛隊のペトリオットミサイルなども展示されたが、やはり新装備というだけあって、96式装輪装甲車には多くの見学者が集まっていた。

Img_2214_1  非常に珍しい渡河装備の74式戦車。砲塔と車体後部にはシュノーケルやカニングタワーが装備され、全体に偽装網、第三戦車大隊のマークもロービジの目立たないものが上から貼り付けられている。珍しいようで、陸自の隊員もデジカメや携帯電話で撮影を行っていた。

HARUNA

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コメント (2)
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