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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

第二次世界大戦終戦 日本のいちばん長い日から62年

2007-08-15 14:02:16 | 防衛・安全保障

■あの決定的な敗戦から

 本日は終戦記念日である。昭和二十年八月十四日、大日本帝国は連合国に対してポツダム宣言受諾を宣言し、八月十五日正午、宣言受諾の玉音放送により、太平洋戦争、大東亜戦争と呼ばれる一連の長い戦争は終戦を迎えた。

Img_7956_1  今日では、国連憲章二条四項により武力行使そのものが国際法で禁止されており、一般に急迫不正の事態における即座に均衡の取れた自衛権行使を除けば、特に武力攻撃を行うことは禁止されている。しかし、二十世紀前半までは、不戦条約と、植民地という矛盾した国際関係が、度々不幸な結果をもたらすこととなった。

Img_7982  第一次世界大戦は、如何なる連帯も、実際の戦争が勃発すれば、祖国防衛論が高まることにより、挙国一致で戦争遂行に国家が動くことと成り、兵器体系が産業の技術革新により複雑化し、兵站を支える為に総力戦という形態と重なり、犠牲者は更に増加することとなった。

Img_8070_2  男子の四分の一、1000万が兵士として参加し、200万が死亡、一般国民100万が死に、1500万が財産を失った。大東亜戦争、太平洋戦争により生じた犠牲について、多くが報道され、特集する記事や番組が放送されているが、あまり深く考えず、武力紛争や平和構築において考えるいくつかのことを、当方の価値観に基づき思いつくままに記したい。

Img_8096  第二次世界大戦を改めて考えると、国際関係における信頼醸成の不充分な点が開戦に至ったものと考える。これは同時に情報通信技術の未発達により生じる意思決定の硬直化が増幅し、国際関係の緊張が武力紛争へ発展することを助長する結果に至ったのではないかと考える。

Img_8138  さて、第二次世界大戦後、いわゆるフォーラムの場としての国際連合が成立し、常設機関として諸問題に議論を行うことは、その過程を通じて表面上得られるものが皆無であったとしても、一種の信頼醸成を形成する重要な意味を有していたといえよう。

Img_8099_1  こうした国際機構の実現は、第二次世界大戦の膨大な破壊から生じた一つの進歩であり、同時に出現した核兵器を用いた武力紛争が現実のものとならなかった重要な要素であるといえ、第二次世界大戦が世界史の大きな分岐点となったことを端的に示す事例である。

Img_8112  さて、武力紛争は国家間における不充分な信頼醸成により、生じるという一つの視点に立てば、今日的にはその形成に必要なフォーラムとなる場所は既にあり、この他にも例えば国際金融、例えば地球環境問題というような普遍的命題に対する国際協調により信頼醸成は達成しうると考える。

Img_8149  他方で考えなければならないのは、先制的自衛権行使という、9.11以降生まれた新しい概念、そしてジュネーヴ法やハーグ条約という武力紛争法から飛び出てしまった人々の人権の確保という命題、更には国内紛争に対する国際介入の在り方などが挙げられる。

Img_8313_1  先制的自衛権の行使、これは言い換えればやられる前にやれ、というものであり、自衛権を如何に解釈しようと生じ得るものではないのだが、イラク戦争を契機として一部の国が行使に踏み切ったことで、この論理体系の普遍化を防ぐ必要はある。従って、自衛権の意味の再検討、若しくは新しい法体系の検討も含め考える時期となっているのではないか。

Img_8315_1  また、テロ容疑者という名のもとで、例えばグアンタナモ、例えばアブグレイブといった施設に収監された人々は、戦争捕虜としての権利を有していないばかりか、国際人権規約に基づく一般犯罪者としての権利も有さない状況下にあり、例外状態という極度の無法状態が出現している。これは放置し得る問題か否かも含め重大な命題である。

Img_8340_1  国内紛争の問題について、SIPRI年鑑に目を通すと、1990年から2004年までの十五年間に、1000名以上の犠牲者を出した武力紛争は57件とあるが、このうち国際紛争は湾岸戦争、印パ国境紛争、エリトリア紛争、イラク戦争の四事案のみで、他の53事案は内戦であった。しかも、今日の内戦では、文字通り例外状態が常態化し、交戦団体承認や非戦闘員保護が為されないまま残虐化する傾向がある。

Img_8347_1  内戦に対しては、国際平和維持活動か人道的介入により対処するか放置するかの選択肢しかないが、国際平和維持活動は予算措置や責任の所在に問題があり、人道的介入は安保理決議に基づくものであるか否かを度外視しても、法的根拠が不充分である。しかしながら、これら三つの問題はその解決の難しさの反面、極力早く検討しなければならない命題である。

Img_8350_1  この他にも、植民地独立後の国家形成が生んだ諸問題の影響、通常兵器軍縮により生じた余剰兵器の紛争地流入、自由貿易実現により生じた構造的な国家間格差、核軍拡、難民保護、テロリズムの国際的拡散、国際犯罪など問題は山積している。

Img_8349  日本が実際に参加した第二次世界大戦を如何に考えるか、この考えには、特に空襲や原爆という被害、侵略と併合という加害ばかりが強調され、国民の支持による軍国主義への反省という部分が語られているが、何故戦争が生じ、何故民主的コントロオルが機能しなかったかについての平和学的、政治学的な理解は浸透していない。

Img_8048_1  問題提起だけして、処方箋を添えないのは些か気が引けるが、幸い、今日の日本は武力紛争と遠く隔てられたという意味で平和である。62年間の平和と反映を享受する日本にあって、過去に関する反省や感傷も重要であるが、平和構築において出来ることは何か、ミクロマクロの視点から見つめてみることも、必要であろう。

HARUNA

コメント (2)
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