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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

五地方隊にも旗艦を 護衛艦隊再編後の地方隊

2009-01-13 19:18:41 | 防衛・安全保障

■地方隊にも旗艦が必要だ

 海上自衛隊は、機動運用に充てる護衛艦隊とは別に、沿岸警備にあてる部隊として、横須賀、佐世保、舞鶴、呉、大湊の各基地に地方隊を置いている。地方隊は基地機能の維持や曹士人事、教育訓練なども行っている。

Img_1365  その地方隊が沿岸警備を行う際に主たる部隊として扱われるのが、掃海隊である。掃海隊には掃海艇三隻が配備されており、ミサイル艇2隻から成るミサイル艇隊が配備されている舞鶴、佐世保、大湊(3隻、ただし将来的に2隻)を除けば、実際には基地を機能させる船を除き、掃海艇が重要な部隊となる。将来的には30㍉機関砲を搭載した新型掃海艇を導入し、沿岸警備能力を充実させる構想ではあるが、それにしても少ない。

Img_3910  もともと、地方隊には二個護衛隊、もしくは魚雷艇隊や駆潜艇隊を有しており、護衛隊の所属護衛艦は小型護衛艦(DE)が配備され、護衛艦隊と比べれば見劣りするものではあったが、数はあった。しかし、95年防衛大綱改訂に伴い、護衛艦定数の削減が決定し、護衛艦隊は減らせない、ということから、地方隊の護衛隊が削減、1個護衛隊体制となった、魚雷艇、駆潜艇は老朽化により区分そのものが消滅した。その後、2008年の部隊改編により、地方隊隷下の護衛隊が護衛艦隊に編入され、今日に至る。

Img_9750  現在、地方隊において、最も大きな自衛艦は、ひうち型多用途訓練支援艦である(除籍された砕氷艦しらせ、は横須賀地方隊直轄であったが)。各地方隊に直轄艦として配備、満載排水量は1400㌧、武装はなく速力は15ノット。艦艇の水上射撃や航空機の魚雷投下訓練、潜水艦の訓練支援などにあてるもので、後部には広い作業甲板が配置、水上標的を運用するが、必要に応じて中型トラックを4台程度搭載し、クレーンを用いて揚陸作業にあてることもできるので、災害派遣にも対応している。

Img_8039  地方総監といえば、海将。しかも、陸上要員を中心に2000名前後を指揮する立場なのだが、どうしても護衛隊群司令と比べれば、という気がしないでもない。地方隊の展示訓練を想像してみると良い、多用途訓練支援艦は、重要な自衛艦であるが、イージス艦やヘリコプター搭載護衛艦と比較すると、どうであろうか。また、災害派遣に対しても、この規模で果たして大丈夫なのか、という疑問がわいて来ないでもない。やはり、地方隊といえば、というような艦が必要なのではないか、と考える次第。

Img_6221  写真は1号型輸送艇。地方隊には、概ね直轄艦として710㌧の輸送艦か540㌧輸送艇が配備されており、災害派遣や軽輸送任務にあてているが、それにしても輸送能力では小さい、と言わざるを得ない。ここで、地方隊旗艦に、両用戦に対応する水上艦を導入しては、と考える次第。水上戦闘艦と輸送艦を折半したような艦艇としてはデンマーク海軍が建造したもので面白い一隻がある。アプサロン級といい、2004年から2隻が就役した。速力は23ノットと水上戦闘艦と比較すれば遅いものの、ヘリコプター2機を搭載し、5インチ砲、ハープーンSSMや対空用のESSM用VLSを搭載した満載排水量6300㌧の“輸送艦”だ。

Img_6329  基本的には、うらが型掃海母艦に車両甲板を取り付け、たかなみ型護衛艦と足して二で割ったような艦である。デンマーク海軍は、多目的支援艦と表現しているがNATOは揚陸艦に区分しているもので、900平方㍍の車両甲板には、主力戦車からコンテナ(最大34)まで搭載することが可能だ。三次元レーダーSMART-Sを搭載しており、戦闘能力は新世代フリゲイトと比較しても遜色なく、旗艦任務から輸送艦、掃海母艦、病院船などにも対応できるものである。地方隊の任務対応能力充実と、地方総監の位置づけの再認識の為にも、旗艦のような艦は必要なのではないか、と考える次第。

HARUNA

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コメント (2)
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