北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

軽装甲機動車・高機動車に続く普通科部隊用車両はどうなるか 続

2009-01-05 21:18:57 | 防衛・安全保障

■理想は整備性の高い重厚な装甲戦闘車

 問題提示だけに終わった昨日の記事の補完について、本日はやや踏み込んだ視点から。

Img_8881  まず第一に考えなければならないのは、陸上自衛隊普通科部隊はどのような観点から装甲車を必要としているのか、ということ。例えば、地形に依拠しての戦闘から車両による機動戦に移行するのであれば、自動的に地形の踏破能力は低下する。この点、装軌式車両であれば、特に不整地における地形踏破能力は向上するものの、整備性の問題や路上機動性の点で劣ることはよく指摘されるが、更に音響(騒音)の問題による秘匿性の問題や、航空機などからの被発見性の高さなど、結果的な生存性に直結する問題を抱えている。

Img_1000  他方で、この欠点は戦車にも言えることであるから、戦車との協同を念頭に置いて、例えば高度な暗視装置や機関砲を搭載し、対戦車火器に対する地域制圧や航空機に対する暫時反撃能力を付与させ、と高度な装備を盛り込めば、結果的に高コスト化する。結果、低コストで普及性を重視するのか、部分的な装甲化に徹するのかということになり、全車が今日、後者は冷戦時代ということになる。

Img_9547  路上機動性能を重視し、本土直接武力侵攻のような従来型戦闘を想定するのであれば、高速道路などを介しての緊急展開により迅速に展開し、国際平和維持活動における長距離移動や、補給部隊などの輸送支援などでは路上速力の高さを活かして任務に対応することが出来る。この場合は、これはすべての車両に対しても言えることなのだが、主要道路に対する攻撃に脆弱性を抱えることになり、加えて野戦任務に就いた場合には路外機動性が装軌車両と比較した場合劣ることから、戦術機動に制約が加えられることに加えて、逆にこちらが接近できない地形からの攻撃を加えられる可能性が高くなる。

Img_2893_1   結果、これは月並みな意見ではあるが、利点欠点を上手く組み合わせる必要がある。同時に少なく無い部分はより進んだ技術開発を精力的に行うことで、解決することが理想とする点も幾つか挙げられる。まず、必要なのは整備の簡素化を実現させることだ、現在、陸上自衛隊では装軌車両に関して、250km毎に定期整備としてC整備を行う必要があるのだが、C整備について、戦車であれば整備小隊が1輌を対応しても一日がかりとなる。このため、師団後方支援連隊は、整備大隊の編成を改編して直接支援中隊を各主要部隊に展開させているのだが、普通科部隊についても装甲化を進めてゆけば、確実に負担は大きくなる。

Img_3739  部隊数は、少なくとも今後、旅団の師団格上げというような拡大改編は行われないだろうから、整備に従事する人員の必要数が増加すれば、自動的に戦闘部隊の人数に響き、逆にこれを無視して装甲化を進めてしまえば、長距離移動の際には部隊稼働率という問題が生じてくる。例えば、足回りの部分などは、履帯や駆動系の技術開発を精力的に行いC整備までの期間を極力延伸する、距離ごとのC整備が250kmという数字を変えられないのであれば、メンテナンスの自動化(もちろん、被弾時の戦闘継続などに支障の無いように工夫は必要)を行い、整備小隊や直接支援中隊への負担を軽減するということ。

Img_4323  他方で、これからの国際平和維持活動などへの任務に視点を置けば、今後どの程度の防御力を必要とする地域に展開するのかということで、場合によってはかなりの強力な戦闘力と防御力を有する車両が必要となるのかもしれないし、他方で、警戒任務などでは数が必要となることから、部隊ごとの車両数を重視すれば小型車両が必要となることも考えられる。こうした中で、性能として表面化する部分も重要ではあるが、稼働率と整備負担の軽減を盛り込んだ構想が必要になるのでは、と考える次第。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文および写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (4)
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