◆海上自衛隊タンカー護衛任務も一時回避か
北朝鮮弾道ミサイル危機が継続していますが、イランの話題。ロイター通信によれば、イランのサレヒ外相が昨年一月より中断している核開発問題に関する協議を来月4月13日にも再開する方向で調整しているとのことです。
ホルムズ海峡危機として、イラン海軍が欧米からの核開発問題に端を発する経済制裁の発動への報復措置として掲げていたペルシャ湾とアラビア海とを結ぶ石油輸送の最重要海峡、ホルムズ海峡の封鎖実施という危機は、今回協議の再開を行ったことにより根本の問題である核開発問題については解消には至っていないものの、海峡封鎖事案の即座の発生という危機を脱したことになり、海上自衛隊による船団護衛の必要性も一旦は収まっているというべきところ。
今回の協議はトルコが発起し、国連安全保障理事会常任理事国にドイツを加えた六か国とイランとの協議というかたちとなり、会議の開場は発起したトルコ政府がイスタンブールを提案、現段階では会場の画定まで数日間を要するとされているのですが、ともあれ、再開されるという方針だけは定まったようです。昨年一月に流会した協議では、トルコのイスタンブールにおいて実施されたものの共通問題点の画定さえ成らず会議が空転、その後の今日に至る海峡危機、自衛隊の出動を検討する事態へと展開しました。
現状ではイラン核開発が、核兵器開発として進展した場合、イランの国是にイスラエルの破壊を掲げていることから、イラン革命防衛隊の外郭団体に位置付けられる組織によりイスラエルに対し使用される可能性が高いとし、イスラエル空軍は独力での核施設完全無力化に限界があるとしながらも、必要な措置を取る可能性を示唆してきています。これが、イスラエル空軍によるイラン空爆という状況に至れば、やはりホルムズ海峡危機は現実のものとなり、護衛艦による船団護衛実施の必要性は出てきます。
しかし、イランと日本の関係、今回の進展はトルコ政府の尽力によるものですが、元々日本政府とイラン政府の関係はイラン革命以前のパーレヴィ国王時代から続くもので、兎角欧州諸国がアメリカと一枚岩のイラン強硬姿勢を貫く中で比較的冷静な関係を構築してきたのが日本政府、これは中東石油依存度の高さに起因するものではあるのですが、本来は日本政府がアメリカとイランの関係を仲介することが望ましかったものです。イランとの良好な関係は自民党時代のもの、として民主党は清算したかったのでしょうか。
他方、これは繰り返しになるのですがホルムズ海峡危機は完全に収束したわけではありません。前述の通りイスラエル空軍単独空爆や協議会流会も十分に予測できる事態で、可能性として海峡封鎖が行われる、ということは認識しなければならないわけです。現在、日本は原子力発電所の点検停止によりあと二カ月程度で全ての原子炉が停止するという電力不足の危険性が生じている状況、石油確保の重要性は過去にないほど高まっています。万一の際、必要な任務を遂行するのに必要な法体系、交戦規則、全く手つかずのまま。危機は一時回避という実情に鑑みた対応が為されるべきでしょう。
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)