北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

北朝鮮ミサイル弾道危機 石垣市長、政府へPAC-3配備要請の意思を表明

2012-03-24 22:36:13 | 防衛・安全保障

■南西諸島防衛を大きく進める提案にも

 石垣市の中山市長が北朝鮮弾道ミサイル実験経路に石垣市が含まれていることからPAC-3の石垣配備を求めることとしました。この提案は中国の南西諸島への脅威へも大きな抑止力となるかもしれません。

Img_8916 石垣市の中山市長は石垣島ではあと数週間後にも北朝鮮の弾道ミサイルが頭上を通過する状況に際し、万一の島内への落下へ備える観点から弾道ミサイルの迎撃能力を有するペトリオットミサイルPAC-3の石垣島配備を政府に求めてゆく方針を示しました。この方針には市議会も配備を求める決議へ調性に入っているとのこと。

Img_6293 沖縄県近海には恐らくイージス艦が展開し、射程1000kmをこえるSM-3により日本領土への着弾が想定される場合に備えた迎撃準備を行うことと考えられるのですが、水平線のかなたに展開するイージス艦と射程は短くとも実際に迎撃準備を行うペトリオットミサイルとは、住民感情という意味で大きな違いがあるのでしょう。

Img_0055 ペトリオットミサイルは石垣島へ配備となれば構成車両は非常に多く、一個高射隊であっても、特に発射装置などは上甲板に上げることが難しく、おおすみ型輸送艦一隻により全て輸送できるぎりぎりのきぼとなるでしょうが、民間のカーフェリーにより輸送支援を受ければ十分に輸送することができると考えます。

Img_95220 しかし、今回の提案、これは弾道ミサイル破壊命令という実任務での派遣となりますが、緊急時の応急的なもの、というだけではなく、恒久的な分屯基地として、新たに一個高射隊を創設し、石垣島に配備する、ということが実現すれば、これは南西諸島の防衛を根本的に前進させる重要な一歩となるやもしれません。

Img_914_6 PAC-3の発射装置などは対航空機用のPAC-2と共通のもので、PAC-3の射程は十数kmですが、PAC-2の射程は100km程度と非常に大きいものがあるわけです。これまで、南西諸島では沖縄本島以外にレーダーサイト程度しか部隊が置かれておらず、防空監視という任務は重要ですが即応能力に欠けていました。そこで大部隊の配置は不可能ながら沿岸監視程度を置けないか検討していたところ。

Img_9128 PAC-3の配備が行われれば、南西諸島に対する空挺部隊による強襲作戦や航空部隊による打撃能力に大きな制約を加えるものとなり、南方からの航空脅威へは那覇基地からの戦闘機緊急発進が実施され到達するまでの時間において、脅威対象の航空作戦を阻害することができるということ。

Img_2728 それだけではなく、2009年の弾道ミサイル危機に際してはいつような場合、航空自衛隊のミサイル部隊への警護任務として陸上自衛隊が支援にあたっています。地対空ミサイルは陸上からの攻撃に最も脆弱性を有していまして、これはミサイルに強い陸上部隊が航空部隊に対して脆弱である一方で航空部隊はミサイルに対し脆弱という一種のジャンケン的な要素を含んでいるのですが。

Img_73_66 陸上部隊のポテンシャルとは、即ち相手方に安易に手を出させない、同時に防護の意思ありという重大な決意表明であるのですし、警備支援、という形でも陸上自衛隊の中隊規模の部隊が機動展開し、石垣島に固めることができたなら、南西諸島防衛において重要な最初の一手を打ったことになるわけです。

Img_0008 那覇基地へE-2Cの配備が考えられている、など南西諸島防衛への重要な施策はいくつか挙げられているのですけれども、筆頭にあるべきはまず抑止する能力、容易に我が国領域へ上がられないようにし、最悪の事態に展開しないよう努力することが重要、これは言うまでもありません。

Img_0764 ただ、今回のミサイル危機が、特に北朝鮮がどういった要素から南西sy等上空を飛行する経路を選んでいるのかが未知数で、かりに一部い言われているような沖縄の米軍を狙いフィリピンに落下させる目的なのか、周辺国への配慮なのか、つまり次に実験を行うと仮定して再度この経路を使用するのか、別の経路を選定するのか、一回限りかそうでないのかが問題で、ここが難しい。

Img_5493 もっとも、これまで、沖縄では実際に脅威が切迫したとしてもその対処に軍事力を用いることに懐疑的で、一見やるよりやられる選択、というような印象の声が大きく報じられることが多いのですけれども、首長は住民の安全という最も優先されるべき部分を選択した、このことはやはりしっかりするべき部分はしっかりしている、と思いました次第です。

北大路機関:はるな

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コメント (8)
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