北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

巨大地震“南海トラフ地震”への備えを考える⑰ 沿岸部航空基地の津波対策

2012-09-18 23:53:16 | 防災・災害派遣

◆自衛隊が被災せぬように・・・、現実となった危惧  東日本大震災において津波被害に遭った施設に航空自衛隊松島基地と陸上自衛隊多賀城駐屯地がありました。
Bimg_7346 陸上自衛隊航空の中枢というべき木更津駐屯地、第一ヘリコプター団隷下の32機の大型輸送ヘリコプターCH-47J/JAが展開しており、方面対戦車ヘリコプター隊のAH-1Sが16機と要人輸送ヘリコプターEC-225も展開し世界的に見ても屈指の航空輸送部隊の集積地ですが、駐屯地から東京湾対岸の横浜が見えるほど、文字通り沿岸にあります。
Bimg_8692 東日本大震災では東北方面航空隊が展開する東北地方太平洋岸陸上自衛隊航空の一大拠点、霞目駐屯地が大丈夫なのか気が気ではありませんでした。仙台東部道路が津波を食い止めたを報じられる一方で盛り土の下を通る道路から津波が浸水し、駐屯地のほんの数百mまで津波が到達していたことを現地で知りました。
Bimg_3588 実は震災の一年前、2010年3月1日の記事に昭和南海地震津波被害により徳島県の小松島航空基地、当時自衛隊創設以前であり被害はなかったのですが津波が押し寄せ、冠水したことを例に挙げ、現在の小松島航空基地も東日本大震災以前の津波想定で1mの津波が15分で到達し、航空機の空中退避は間に合わないという現状を紹介、沿岸部の基地の津波対策強化というものはもう少し真剣に考えられるべきだ、と提案しています。
Bimg_7289 NHKスペシャルにて震災復興予算19兆円が外国人交流事業や沖縄の防波堤建設に北海道道路建設などに流用されている内容を報じていましたが、基本的に南海トラフに備えるという名目で防衛予算からではなく防災予算を防衛省の執行計画として採ることが出来ないか、という念頭での記事を作成していましたので、やはりこの予算行使の在り方を考えるという事は問題なのだろうか、と思いつつ。
Bimg_1739 東日本大震災以降繰り返し提案している内容でもあるのですが、防災予算で自衛隊の防災能力強化、というものはそこまで防災政策という骨子を外れてはい無い、という信念がありますので、やはりこの際思い切った基地施設、沿岸部の基地の津波対策と内陸部の基地の強化を行うべきだ、という視点を改めて提示しましょう。
Bimg_7793 三沢基地は海抜36mあり八戸航空基地も海抜46mで芦屋基地も海抜30m、沿岸に近そうな印象の浜松基地は内陸で標高46mと比較的方向が確保されているのですが、南海トラフ地震を想定した場合、標高が低く沿岸部に近い航空基地や飛行場がいくつもあります。もっとも、海抜ですべてを考えられないことは確かです。
Bimg_5535 津波は連続した並の塊ですが、海面上昇ではないので地表に接すると急速にそのエネルギーを失います。小牧基地のように海抜16mなのですが、南海トラフ地震で最大規模の津波が襲ったとしても名古屋市の更に北方で海岸線から20km近く離れている基地があり、八尾駐屯地も海抜は12mですが大阪湾から15km離れています、この点からも一概に海抜では言えないという事がわかるでしょう。

Mimg_6687 松島基地海抜2m、館山航空基地海抜3m、木更津駐屯地海抜3m、静浜基地海抜7m、小松基地海抜6m、明野駐屯地海抜6m、八尾駐屯地海抜12m、小松島航空基地海抜3m、徳島航空基地奇抜8m、岩国航空基地海抜2m、防府北基地海抜2m、美保基地海抜6m、築城基地海抜17m、目達原駐屯地海抜16m、大村航空基地海抜5m、那覇基地海抜4m、とこの通り。

Img_9047 津波対策としては飛行場施設の嵩上げなどが考えられるのですが、何分、南海トラフ地震が想定する津波は30mを超える地域があり、この30mというのは最大値に近い、まあ、東日本大震災の東北地方太平洋沖地震で38mの津波がありましたので一概に行くことは危険なのですが、それにしても10m単位での嵩上げ、というのは少々難しいものがあるかもしれません。
Bimg_9721 小松島航空基地では、検討の域を出なかったそうではありますが、航空機をそのまま格納庫の天井に吊り上げるという方式が検討されたそうです。航空技師の方にこの方式を離しますと素人考えではありますが、ヘリコプターは飛行時にローターで全重量を支えているのだから原理的には可能、とのことでした。飛行準備には航空機は一時間程度を必要とするのですが、ワイヤーを取り付けるだけならば数分、整備員は機体を防護しつつ避難が可能でしょう。
Bimg_2176 航空掩体。戦闘機部隊については、強固な掩体に戦闘機を収容してしまう、という方法も一つの選択肢でしょう。松島基地などは航空格納庫周辺に防水措置を行う方法を行っているのですが、NBC戦を想定する密閉性の高い掩体ならば、津波により冠水したとしても航空機を守ることが出来るでしょう。
Bimg_3168 那覇基地の南西方面航空混成団司令部のように、司令部施設を人工の山に隠すという方式、扉部分を防爆構造とすれば津波における防水能力も発揮できます。もっとも、この方式は地震により亀裂が生じ浸水する可能性もありますので、スロープを用意して航空機ごと高台に整備員ともども率先避難、という方式もあるやもしれません。もちろん、発電機能や通信機能なども極力対策を施さなければならないことは言うまでもありません。
Bimg_8774 喫緊の課題は沿岸部の基地や駐屯地で、木更津駐屯地などは、駐屯地嵩上げよりも内陸部の海抜25mにある霞ケ浦駐屯地へ部隊を移転し、実任務への影響が限定され比較的安価な練習ヘリコプターなどを運用する機体へ置き換える、南海地震想定被災地の沿岸飛行場は内陸部の伊丹空港などに暫定措置を含め部分移転する、などの施策は考えられないでしょうか。
Bimg_4091 この津波対策は、航空掩体を増強するという方法により、有事の際の航空攻撃からの基地機能維持に繋げることが出来ますし、人口山格納庫は精密誘導兵器による攻撃に対して地下構造を秘匿することで航空機の被害を最小限とすることが出来る方策です。南海トラフ地震対策という視点も含みつつ、抑止力強化、という側面からも検討されるべきではないか、こう考える次第です。

北大路機関:はるな

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