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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

防衛産業、我が国防衛力を構成する重要要素の将来展望⑫ 難しい事前評価試験

2013-01-19 23:52:08 | 防衛・安全保障

◆海外装備、カタログスペック重視の落とし穴

 自動車を買われる際、燃費の表示などで1?あたり◎△km、という表示がありますが、その通り発揮されない、という事は多くの方で経験がおありでしょう。

Jimg_3899 防衛装備品の場合、仕様性能が明示され、少なくとも自衛隊が必要とする水準の能力を発揮できなければ装備化は行われませんし、問題が発生すれば改善要求が出される、少なくとも国産装備はこの方針が重視されてきました。評価試験で様々な実運用を想定した試験を行いますので試作装備が破損する、という事は多く聞きますし、もともと破損するあでの限界を複数の試作品を以て徹底的に試験する、ということは専門の評価試験部隊により恒常的に行われてきました。

Jimg_2807 もちろん、この点について万全というわけではありません、いつ部では昔から指摘されていることですが、評価試験を行う部隊は全部隊の中でも優秀な、つまり平均的以上の要員を以て編成されていますので、評価試験部隊であれば表面化しないが広範に装備すれば問題となる不具合があるだろう、というもの。そして、試作され評価試験に供される装備と量産される装備では改良を盛り込んだ結果、量産装備に不具合が生じてしまう、こんな指摘もなされていますが、最善に近い方法であるのは確か。

Jimg_1211 こうした徹底した試験ですが、国産装備については導入するか否かを試験することが出来るのですが、海外製装備についてはここまで徹底した支援を行えない、という問題があります。具体的装備名は伏せますが曰く索敵能力が高いとされた某航空機を国内の演習場で使用した場合に地形の違いから余りにも捜索能力が低かった、海外製装備の予備部品を発注しても納入に数年を要するため稼働率が低くなりすぎ、本来用途に不足したため更にもう一機を調達する必要性に迫られた、などなど。

Jimg_4099 新装備の開発に際し、国産装備の水準よりも海外製の装備のカタログスペック、つまりメーカーが提示する性能の方が能力が高い、と考えられる装備があり、それならば輸入したほうが良いのではないか、という安易な発想で考えられるものがあるのですが、実際に評価試験をしたわけでもなく、カタログデータに過度に瀋陽市装備選定を行う場合には、長期的に見た場合、不具合の対処により多くの数量を調達する必要、もしくは別の補完する装備が必要になり、結果的に費用が大きくなる、というリスクは無視されていることが多いのではないか、と。

Jimg_4863 この問題点は、米海軍や米空軍という、自衛隊が日常的に共同訓練を行ている同盟国の部隊装備については、共同訓練を通じて性能と運用が推量できると共に、運用体系に共通性がある場合は相互互換性という視点から不具合、分かりやすく言うならば、こんあはずではなかった!、というような状況にはなりにくいという事は一点、あります。従って輸入装備全般に問題がある、とは言えないことを一点踏まえておく必要があるのですが、同時にそうではない装備もあるのだ、ということ。

Jimg_6565 一方、装備品を運用当事者以外が評価する場合、表面化する数字はカタログスペックだけですので、こちらが魅力あるものの方が装備したくなる、というのはある意味当然と言えるやもしれません。例えば次期戦闘機選定では、カタログスペックや技術移転の面で非常に魅力的な航空機が提示されましたが、2011年に実任務に投入された際にあまりにも低い稼働率が運用として提示され、自慢の誘導兵器類は実際の能力に反映できなかった、というものがありました。

Jimg_6414 国産装備と比べ、海外装備はカタログスペックに魅力的な数字が並ぶのですが、それでは国産装備にこうした点が無いのは何故でしょうか、これは推察になるのですが、日本の防衛装備品は海外への輸出を想定していないものが多く、結果、海外のように有力な点ばかりを大きく強調し、カタログスペックが優れているように示さなければならない、という必然性が無いからだろう、そう考えます。これらは広報であり、広報には費用を要するものです、海外に提示する必然性が国産装備にはありません。

Jimg_4428 すると、海外装備を評価するにはどうすればよいのか、理想としては海上自衛隊や航空自衛隊の海外装備のように陸上自衛隊の大規模な海外での共同訓練を行う、という選択肢はあるやもしれません。しかし、想定地形が異なる上に、例えば陸上自衛隊の一個連隊戦闘団が派米演習以外に、欧州地域等に展開し訓練する、という事は、それはそれで、憲法上の問題を差し引いたとしても訓練費用や運用体系、想定脅威などの面で違いが多すぎ、あまり現実味はないでしょう。

Simg_1212 次善の策と言いますか、考えられる現実性ある選択し、という事ですが、これは海外装備品に関する情報収集を、勿論、これはここ十数年間で自衛隊は各国の兵器展等に多くの要員を派遣し情報収集を強化しているのですけれども、試験装備品を実際に購入し評価試験を行う、つまり選定にもっと予算を投じる必要があります。この点で、もともと装備品を導入するにも予算が不足しているのですから、予算体系全体にもう少し情報収集の、という視点が必要になるのですが、その必要性を広く認識させる必要はあります。

Simg_3726 ただ、この方法ですと、まずカタログスペック以上の情報を得るためには一定数の試験調達か、海外での大規模な合同演習の継続という評価手段を行わなければなりませんので、これには費用を要し、一方費用を掛けずとも海外装備よりも高度な装備品のカタログは入手できる訳です。導入して後に不具合に気付くという事は、一種の情報弱者という位置に落ちてしまうことにもなりますので、これをいかに避けるか、という難点を解決しなければ、国産の方が無難、という結論で止まってしまいます。

Simg_7251 もっとも、これは既に過去の特集記事で指摘したのですが、自衛隊の装備調達体系は年度ごとの分割調達であり、調達体系としては不安定であるため日本以外の防衛産業にとってはどの程度の装備をどの程度の期間に分けて導入するかの一種阿吽の呼吸というような感覚は李かいされませんし、日本としても導入した装備がどの程度の期間に必要とされる稼働率を維持するための維持部品の生産が継続されるのか、という事が未知数では、どの程度依存するのかという不安が生じてしまうことは否めません。

Simg_5832 上記の過程を踏まえての結果として、国産重視ならば、それでいいのではないか、こういう視点を持たれる方もいるやもしれませんが、例えば次期哨戒機、例えば支援戦闘機、海外により良い装備品があるではないか、と政策決定を行う為政者が印象としてもつことで、その結果として調達計画が中断されてしまうことがあります。また、こうしたリスクは装備体系が導入開始により装備が一種類増えることで教育体系や後方支援体系に負担がかかりつつ、朝令暮改で装備化が達成されなければそれまでに調達した装備全体が無駄となってしまいます。

Simg_5852 即ち、情報は無償で得ることが出来ないという視点に依拠しなければならないものの、日本は防衛装備品を輸出しないという国是があるため、防衛産業はこの前提に立って装備を開発し、防衛省へ資料を納入します。カタログ面の利点の強調には、この施策が広報の必要性を低減してしまうのですし、情報を購入する側である防衛省が取得する努力に少なくない予算を投じる、という事には文化として適合しない面があるでしょう、これをどうするか、防衛産業を考える上で解決しなければならない問題の一つと言えるでしょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (3)
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