◆ちょうかい、絵葉書のような美しい風景を進む
舞鶴展示訓練、イージス艦ちょうかい、に乗艦し前回は舞鶴基地を出港しましたが、いよいよ今回は外海へ向け進んでゆきます。
護衛艦すずなみ、整備中の様子と舞鶴展示訓練へ向け出港準備を進めるイージス艦あたご、背景の山の稜線が幾重にも重なっているのが印象的。舞鶴基地は旧海軍時代に駆逐艦と軽巡洋艦の軍港として知られていたようですが、10000tの大型護衛艦が接岸できる桟橋へ延長され、今に至る。
舞鶴航空基地、海上自衛隊の、そして日本で最も新しい航空基地です。1996年に建設が開始され、2001年に完成、海抜は僅か6mと低い基地ですが湾の奥の奥にあり、津波に対しての脆弱性は低いです。滑走路は400mあり、日本海側の海上自衛隊ヘリコプター唯一の拠点として完成しました。
ヘリコプター搭載護衛艦はるな舞鶴母港化が1998年、舞鶴航空基地が完成するまでは、航空部隊は千葉県南部の館山航空基地や長崎県の大村航空基地から派遣され、それではあまりに訓練が不便、と建設され、2008年には第23航空隊が創設、SH-60J/Kが12機程度前進配置され、日本海の防衛に当たっています。
今年2013年は、海上自衛隊の艦上航空が1973年に最初のヘリコプター搭載護衛艦はるな就役からちょうど40年、海上自衛隊艦隊航空40周年という記念すべき年です。護衛艦隊は予算難の中でも着実に成長を続け、厳しい国際情勢へ向かい合う重要な我が国の選択肢を供しています。
舞鶴基地ですが、本当に湾の奥の奥に位置しています。舞鶴湾の一番奥にあり、湾は鶴の翼を広げたように西舞鶴と東舞鶴へ、鶴の首筋のような狭い湾口は最峡部で幅僅かに600m、日本海に面する金ヶ岬から奥へ7kmの位置にあり、軍港開港時には湾口が急に開けていることから瀬崎や白杉に要塞砲を置くことで敵の海上封鎖を阻止でき、ここぞ基地の適地というもの。
舞鶴湾の狭水道は幅1kmほどの水道が3kmにわたり続き、近くの日本三景天橋立を生んだような浅瀬が続くことから景観が素晴らしく、一方水雷艇や潜水艇による強襲を受けにくい場所、時折見える漁港などは本当に絵葉書に出てきそうな長閑な光景が続き、そこを護衛艦は白波を建てて進んでゆく。
先行する護衛艦ちくま、艦上には多くの見学者がやはり同じように美しい沿岸の光景を瞼や写真へ納めています、しばらく進んでゆきますと、その向こうに幽かではありますが一隻の護衛艦らしき艦影が見えてきました、敦賀港や舞鶴西港からも艦艇が展示訓練へ参加している、という事ですからその一隻でしょうか。
ちょうかい、は速力をあげ、先行していた護衛艦ちくま、を追い越してゆきます。機関出力とともに速力を上げたため航跡がしっかりと白く艦の周りを包み、水道の左右を囲んだ青々とした幾重もの稜線の連なりから、一直線の水平線が見える群青の大海原へと進んでゆきます。
DE-233ちくま、護衛艦ちくま、は地方隊配備の沿岸防衛用に建造された護衛艦あぶくま型の五番艦で、1993年に就役しました、満載排水量は2900tで沿岸警備用としては大型となりますが、潜水艦対処用のアスロックや艦対艦ミサイルハープーンを搭載、リンク11により艦隊情報連携に対応するバランスのとれた護衛艦として完成しました。
舞鶴西港から出航した護衛艦も見えてきました、舞鶴港湾合同庁舎や海上保安庁の施設が置かれている舞鶴西港は、元々こちらが田辺城の城下町として栄えた舞鶴の街並みです。見えてきた護衛艦は読み取れるのが艦番号154、舞鶴が母港で現在は佐世保に転籍した護衛艦あまぎり、です。
護衛艦あまぎり、はこちらのイージス艦ちょうかい、に続いて舞鶴基地を出港したイージス艦あたご、と並んで航行しています。展示訓練は体験航海ではなく訓練展示が目的、この為に既に出港した時から展示訓練への陣形が決まっています。そして左端には黒いボートのような影が、これは舞鶴水中処分隊のボートでしょう。
島影から急に姿を現したのはミサイル艇はやぶさ、はやぶさ型ミサイル艇の一番艇です、最初に舞鶴基地を出港していったミサイル艇はやぶさ、は大きく回り込んで展示訓練参加部隊へ合流するようです。遠くから見れば小型のこのミサイル艇には強力な対艦ミサイルが備えられています。
あぶくま型護衛艦とともに、はやぶさ型ミサイル艇は大量建造される計画でしたが、護衛艦の自衛艦隊統合運用により地方隊の装備体系から切り離され、必要な時だけ護衛艦を充当される運用となり今に至ります、この為ミサイル艇の装備も充分すすめられませんでした、護衛艦が出るほどではない平時の外国艦接近に対し、ミサイル艇は有用なのですが。
先ほど水平線上にみえた護衛艦は、むらさめ型護衛艦の護衛艦あけぼの、横須賀の第1護衛隊群第5護衛隊に所属し、現在の母港は佐世保基地、今回の舞鶴展示訓練とは関係がない、訓練上の舞鶴寄港へむかうところのもよう。満載排水量6200tの護衛艦は、水平線を背泳に見るとやはり大きい。
舞鶴展示訓練への参加艦艇、というわけではありませんが舞鶴展示訓練が完了し、舞鶴基地へ戻ったころには、この護衛艦あけぼの、も補給のために停泊していることでしょう。こうしてイージス艦ちょうかい、は舞鶴湾の狭水道を経て広い日本海へと展開しました。しかし、舞鶴展示訓練はまだ最初のところです。
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