◆現行の大綱水準維持でも毎年2700億円不足
戦車250両、特科火砲250門、護衛艦28隻、潜水艦22隻、戦闘機180機、やけに少ない数字ですがシンガポール軍の定数ではありません、財務省が認めている予算で実現する自衛隊の装備定数です。
安倍内閣は防衛計画の大綱改訂に着手する方針を示し、現在の中期防衛力整備計画の凍結を発表しました。現在の防衛計画の大綱では、主要装備として戦車400両、特科火砲400門、護衛艦48隻、潜水艦22隻、戦闘機260機を定めていまして、これは民主党時代ではありますが閣議決定を通しています。
しかし、財務省は予算に対し認めないという形でこの数字を蔑ろにし、政治決定に基づく防衛力を年度ごとに整備する予算要求を財政難という旗印の下で認めず、結果的に自らの予算認可により勝手に防衛大綱の水準を政治決定を覆す形で決めているという実情があるのです、もっとも日本国憲法60条に基づき国会で政治決定という正統性の過程を経てはいるのですが。
閣議により決定した防衛計画は政治決定なのですから、最低限この数量が無ければ日本を護ることが出来ないとして専門家と防衛省が討議し導き出したこの数字なのです、政治責任として予算を確保しなければなりません、これが出来ないのであれば言うだけ与党と批判されても仕方ないのですが、まあ、責任は総選挙でとったというところでしょうか。
さて、この数量を不充分、として安倍内閣は上方修正を前提として中期防衛力整備計画凍結と防衛大綱の改訂を進めることとなったのですが、どのように防衛計画を進めようとも、現状の予算の範囲で進めるならば、ここ数年間の戦車13両と火砲ほぼ皆無、護衛艦は毎年一隻さえも建造できず五年間の中期防衛力整備計画期間中に四隻、潜水艦は例外的に建造できない年もありましたが辛うじて建造され、戦闘機は予算確保も全く進んでいません。
確かに、現行大綱水準の護衛艦48隻を維持しようとすれば、護衛艦の運用を24年から延命改修で32年目一杯使ったとしても中期防の五年間で7隻は建造しなければならないわけで、戦闘機も定数270機という事は元々耐用年数30年前後を考えて毎年9機を新造しなければならない、現状では0機というので、まずここからどうにかしなくては、とも。
このほかにも戦車の耐用年数も当初は24年程度を見込んで法定耐用年数を考えているのだから毎年18両は必要なんですよね。そして調達が終了した99式自走榴弾砲後継の火力戦闘車は毎年こちらも18両必要で、最低限これだけないと現在の防衛大綱水準さえも維持できなくなる。
護衛艦は中期防あたり3隻不足、あきづき型派生になる25DDの建造費は750億円程度なので中期防あたりで毎年当たりの不足予算は450億円、戦車も平均13両生産なので5両分35億円、F-35は2機分しか確保できていないので大綱水準を維持するには毎年7機分670億円、自走榴弾砲は99式の取得費用と同程度として170億円、上乗せが無ければならない。
防衛大綱、自民党が不十分としている民主党時代の削りに削られた防衛大綱の自衛隊装備水準だけでも単純にこれらの数字を足し算するとかなりの額になる、最低限で毎年防衛費はこれら装備調達だけでも450億+35億+670億+170億=1325億円、最低でもこれだけ不足しているということ。
大綱外だけれども、現状の輸送ヘリ規模を維持するには毎年CH-47は3機、UH-1かUH-60は5~6機、AH-64Dは4機か削るにしても3機、SH-60Kが5機とP-1も4機、C-2は毎年1~2機必要している。現在調達が止まっているOH-1観測ヘリの代替機を考えると気が遠くなってくる、180機だから毎年8機は必要なのだから、これも大きい。
不足分の予算ではCH-47で2機分100億、UH-60JAで4機分140億かUH-1Jの4機分で50億、AH-64Dは2~3機分で140~210億、SH-60Kが毎年1~2機不足で90~180億、P-1は不足もいいところで縮小予定でも毎年4機分600億円、OH-XはOH-1を再開してしまうと量産効果で安くはなるだろうけど200億の想定はしたほうがいいやも。
航空機の不足分は1180億から1430億、不足分を計算すると毎年の防衛費は装備調達費だけで2700億、これに維持費と運用費は調達費の二割を上乗せなければならない、つまり現状の防衛予算ではとてもとても足りないわけで、1000億円の増額が提示され400億円に圧縮されたのですけれども、1000億円増額でもパフォーマンスしかない、現行防衛予算規模に合わせた防衛大綱を考えるのか、防衛大綱に合わせた予算を確保するのか、まずその点をしっかりやる必要があります。
2700億円の防衛費の不足、2700億円というとかなり大きな金額となるのですが、現在の少ないと批判される防衛計画の大綱を実現するためにも毎年着実にこの規模を重ねてゆかなければならないのです。そして、安倍内閣は防衛計画の大綱を増強の方向で改めるのならば、この2500億円という数字に上乗せして予算を積まねばなりません。
防衛費の増額は現実的なのか、と問われたならば、日本の経済規模から考えた場合、GDP1%の枠を超えない範囲内であれば、財政への負担はないとは言わないのですが、少なくともGNP1%枠として日本はかなり長期間、防衛費の負担に耐えてきました、アメリカの研究機関の低減などではGDP比2%程度は出すべきだ、としているのですが現状では1%以下なのです。
GNP1%枠として日本の防衛費の増大へ抑制がかつて掛けられていました、当方も個人的に防衛費の際限なき増大には反対で、理由は財政的裏付けが無ければ防衛費を維持することが難しいためです、しかし、GNPは近年GNIと改められ、GDPが経済力の指標となっているのですが、GDP1%と比較すれば少々ちぢみ過ぎているのではないでしょうか。
日本の防衛費が最大となったのは2002年度の4兆9560億円ですが、2013年度の防衛予算は4兆7700億円となっています。2011年度の国内総生産は507兆9168億円、推計値での2012年度国内総生産は519兆2114億円ですので、GDP1%枠を考えた場合、5兆1921億円をやや下回るあたりが妥当な防衛費の水準と言えるでしょう。
この点をしっかり対応してから、防衛大綱を改訂する、という方針は欲しいのですが、もうすこし自民党の防衛計画の大綱改訂については長い視点から見てゆきたいと考えます。防衛費は2000年代に入り弾道ミサイル防衛任務の追加を政治が要求し迎撃技術や装備の調達、これにより予算が従来の装備品調達に大きく食い込まれることとなりました。
自衛隊の任務増大は続き、世界の軍事RMAにより情報通信基盤の強化という軍事能力の強化に関する要求、海外任務増大に伴う普通科部隊の防御力強化という政治上の要求への対応と予算が増大につながる決定の中、自衛隊は今に至ります、任務が増えているならば、相応の準備のための予算は確保されねばなりません、これが政治の責任です。
戦車250両、特科火砲250門、護衛艦28隻、潜水艦22隻、戦闘機180機、やけに少ない数字ですがシンガポール軍の定数ではありません、財務省が認めている予算で実現する自衛隊の装備定数です。
安倍内閣は防衛計画の大綱改訂に着手する方針を示し、現在の中期防衛力整備計画の凍結を発表しました。現在の防衛計画の大綱では、主要装備として戦車400両、特科火砲400門、護衛艦48隻、潜水艦22隻、戦闘機260機を定めていまして、これは民主党時代ではありますが閣議決定を通しています。
しかし、財務省は予算に対し認めないという形でこの数字を蔑ろにし、政治決定に基づく防衛力を年度ごとに整備する予算要求を財政難という旗印の下で認めず、結果的に自らの予算認可により勝手に防衛大綱の水準を政治決定を覆す形で決めているという実情があるのです、もっとも日本国憲法60条に基づき国会で政治決定という正統性の過程を経てはいるのですが。
閣議により決定した防衛計画は政治決定なのですから、最低限この数量が無ければ日本を護ることが出来ないとして専門家と防衛省が討議し導き出したこの数字なのです、政治責任として予算を確保しなければなりません、これが出来ないのであれば言うだけ与党と批判されても仕方ないのですが、まあ、責任は総選挙でとったというところでしょうか。
さて、この数量を不充分、として安倍内閣は上方修正を前提として中期防衛力整備計画凍結と防衛大綱の改訂を進めることとなったのですが、どのように防衛計画を進めようとも、現状の予算の範囲で進めるならば、ここ数年間の戦車13両と火砲ほぼ皆無、護衛艦は毎年一隻さえも建造できず五年間の中期防衛力整備計画期間中に四隻、潜水艦は例外的に建造できない年もありましたが辛うじて建造され、戦闘機は予算確保も全く進んでいません。
確かに、現行大綱水準の護衛艦48隻を維持しようとすれば、護衛艦の運用を24年から延命改修で32年目一杯使ったとしても中期防の五年間で7隻は建造しなければならないわけで、戦闘機も定数270機という事は元々耐用年数30年前後を考えて毎年9機を新造しなければならない、現状では0機というので、まずここからどうにかしなくては、とも。
このほかにも戦車の耐用年数も当初は24年程度を見込んで法定耐用年数を考えているのだから毎年18両は必要なんですよね。そして調達が終了した99式自走榴弾砲後継の火力戦闘車は毎年こちらも18両必要で、最低限これだけないと現在の防衛大綱水準さえも維持できなくなる。
護衛艦は中期防あたり3隻不足、あきづき型派生になる25DDの建造費は750億円程度なので中期防あたりで毎年当たりの不足予算は450億円、戦車も平均13両生産なので5両分35億円、F-35は2機分しか確保できていないので大綱水準を維持するには毎年7機分670億円、自走榴弾砲は99式の取得費用と同程度として170億円、上乗せが無ければならない。
防衛大綱、自民党が不十分としている民主党時代の削りに削られた防衛大綱の自衛隊装備水準だけでも単純にこれらの数字を足し算するとかなりの額になる、最低限で毎年防衛費はこれら装備調達だけでも450億+35億+670億+170億=1325億円、最低でもこれだけ不足しているということ。
大綱外だけれども、現状の輸送ヘリ規模を維持するには毎年CH-47は3機、UH-1かUH-60は5~6機、AH-64Dは4機か削るにしても3機、SH-60Kが5機とP-1も4機、C-2は毎年1~2機必要している。現在調達が止まっているOH-1観測ヘリの代替機を考えると気が遠くなってくる、180機だから毎年8機は必要なのだから、これも大きい。
不足分の予算ではCH-47で2機分100億、UH-60JAで4機分140億かUH-1Jの4機分で50億、AH-64Dは2~3機分で140~210億、SH-60Kが毎年1~2機不足で90~180億、P-1は不足もいいところで縮小予定でも毎年4機分600億円、OH-XはOH-1を再開してしまうと量産効果で安くはなるだろうけど200億の想定はしたほうがいいやも。
航空機の不足分は1180億から1430億、不足分を計算すると毎年の防衛費は装備調達費だけで2700億、これに維持費と運用費は調達費の二割を上乗せなければならない、つまり現状の防衛予算ではとてもとても足りないわけで、1000億円の増額が提示され400億円に圧縮されたのですけれども、1000億円増額でもパフォーマンスしかない、現行防衛予算規模に合わせた防衛大綱を考えるのか、防衛大綱に合わせた予算を確保するのか、まずその点をしっかりやる必要があります。
2700億円の防衛費の不足、2700億円というとかなり大きな金額となるのですが、現在の少ないと批判される防衛計画の大綱を実現するためにも毎年着実にこの規模を重ねてゆかなければならないのです。そして、安倍内閣は防衛計画の大綱を増強の方向で改めるのならば、この2500億円という数字に上乗せして予算を積まねばなりません。
防衛費の増額は現実的なのか、と問われたならば、日本の経済規模から考えた場合、GDP1%の枠を超えない範囲内であれば、財政への負担はないとは言わないのですが、少なくともGNP1%枠として日本はかなり長期間、防衛費の負担に耐えてきました、アメリカの研究機関の低減などではGDP比2%程度は出すべきだ、としているのですが現状では1%以下なのです。
GNP1%枠として日本の防衛費の増大へ抑制がかつて掛けられていました、当方も個人的に防衛費の際限なき増大には反対で、理由は財政的裏付けが無ければ防衛費を維持することが難しいためです、しかし、GNPは近年GNIと改められ、GDPが経済力の指標となっているのですが、GDP1%と比較すれば少々ちぢみ過ぎているのではないでしょうか。
日本の防衛費が最大となったのは2002年度の4兆9560億円ですが、2013年度の防衛予算は4兆7700億円となっています。2011年度の国内総生産は507兆9168億円、推計値での2012年度国内総生産は519兆2114億円ですので、GDP1%枠を考えた場合、5兆1921億円をやや下回るあたりが妥当な防衛費の水準と言えるでしょう。
この点をしっかり対応してから、防衛大綱を改訂する、という方針は欲しいのですが、もうすこし自民党の防衛計画の大綱改訂については長い視点から見てゆきたいと考えます。防衛費は2000年代に入り弾道ミサイル防衛任務の追加を政治が要求し迎撃技術や装備の調達、これにより予算が従来の装備品調達に大きく食い込まれることとなりました。
自衛隊の任務増大は続き、世界の軍事RMAにより情報通信基盤の強化という軍事能力の強化に関する要求、海外任務増大に伴う普通科部隊の防御力強化という政治上の要求への対応と予算が増大につながる決定の中、自衛隊は今に至ります、任務が増えているならば、相応の準備のための予算は確保されねばなりません、これが政治の責任です。
北大路機関:はるな
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