◆核爆発は7~8キロトン程度、小型化が焦点
気象庁によれば、本日1157時頃、北緯41.29度・統計129.08度地点の浅い震源において核実験と思われる地震波を観測しました。
防衛省では、この核実験に合わせ全国の基地から放射線観測任務へT-4練習機を緊急発進させました。T-4へは機上集じん装置2型が搭載されており、高度40000ft以下を亜音速で飛行するとともに大気中の放射性浮遊じんを捕集し、放射性降下物の高高度における飛来を探知する任務に用いるものですが、現在のところ放射性物質の日本飛来は確認されていません。このほか、核実験に合わせ生じる希ガスの測定に米空軍などは横田基地へ情報収集機を展開させているとのこと。
今回気象庁が確認した地震波はアメリカ地質研究所においても確認されており、マグニチュード5.2の地震が深さ1kmと浅い地点で発生しています。通常の地震と異なり最初に最大波が観測された特性が核実験の地震波の特色とのことで、今回それが確認されました。前回二回の核実験のうち二回目の核実験による地震波はマグニチュード5.0であり、4キロトン程度の核爆発だったようですが、マグニチュード0.2の増大により7キロトン乃至87キロトン程度の核爆発と考えられます。
北朝鮮の核実験に際しての最大の課題は核弾頭をどこまで小型出来るかという視点にあり、具体的には北朝鮮が開発している弾道ミサイルへ搭載可能な規模までの小型化が出きるか、というものです。北朝鮮は昨年12月に実施した長距離ミサイル実験を通じ、射程10000km程度とアメリカ西海岸とカナダ東部までを射程へ収めるミサイル技術を獲得したと考えられ、米本土への核攻撃の運搬手段として弾道ミサイルを使用する場合、相応の小型化が求められることから、多くの識者により今回の実験において小型化が求められたと分析されました。
核兵器は、併せてプルトニウム型原爆であるのか、ウラン型原爆であるのかも一つの焦点となっており、仮に従来技術開発を行ったプルトニウム型原爆ではなく、北朝鮮のウラン鉱山から産出される天然ウランを原料とするウラン型原爆を製造する技術を用いた場合、今まで以上に自給自足により核兵器を製造できることとなるため、アメリカや日本をはじめ周辺国は重大な懸念を以て今回の核実験事前抑止へ注力してきましたが、その阻止は成功しませんでした。
北朝鮮が核開発を続ける背景には、現在の北朝鮮による独裁体制に対し、韓国を通じアメリカ側が非常に懸念を抱いた政策、具体的には政権の民主化を推し進める政策を提示していることから、将来的には北朝鮮国内へ米韓連合軍が侵攻する懸念があり、北朝鮮の財政状況では米韓連合軍を通常兵器により防衛するに十分な軍事力を整備できないことから、核兵器を頂点とする大量破壊兵器を整備し、アメリカ側に対し打撃を与えうる能力を以て対等な立場を構築することが悲願とされています。
ただ、核開発を核不拡散条約が定めた核兵器国以外の国が兵器として行うことで核保有国が増大する実情は現在の核不拡散を念頭とした世界秩序への重大な懸念となり、より具体的には核不拡散秩序の破綻と核拡散への引き金と成りかねず、死活的自衛権の行使手段として核兵器使用は国際法の判断が及ばない状況があるとの1994年核兵器使用合法性事件国際司法裁判所勧告的意見もあるため、死活的自衛権が大国間の地域紛争において確認されれば、容易に使用される可能性が指摘されていることを忘れてはなりません。
核兵器が仮に中小国へも拡散し、一度でも戦術核を含め核兵器が実戦にて使用されたならば、核兵器は基本的に用いないという核抑止の秩序を支える均衡をも破たんさせ、段階的に世界は破滅へと進むのではないか、この危惧を元に核不拡散条約の交渉が進められ、その後は核不拡散条約において名目的に明示された核兵器国の軍縮義務条項も、規範としての機能があるとの認識を中国を含めた核兵器国の発言もあり、一応は数を減らす秩序に北朝鮮の核実験は逆行するものとして批判されるべきでしょう。
北大路機関:はるな
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