◆舞鶴地方隊の艦艇勢揃い
日本海で実施された舞鶴展示訓練は観閲式が完了し、展示訓練参加艦艇は一斉回頭を開始します。
写真では音が伝わらないのが残念ですが、艦艇の機関が放つ音が海を越えて、こちらの乗艦するイージス艦ちょうかい、の機関音と重なり、今海に出て護衛艦部隊と反航しているのだ、ということを実感する観閲式でした、そして受閲部隊の先頭を往くイージス艦ちょうかい、は舵を切りはじめました。
ちょうかい、の動きと共に後続する艦艇も、ちょうかい、を基準艦として変針を開始します。このとき、先頭を往く基準艦がしっかり操舵していなければ、揃えることが必然的にできなくなり、艦隊行動が大きく乱れてしまうため、文字通り全体の基準、責任重大、というところ。
この時ですが、舞鶴地方隊に所属する各種艦艇、多用途支援艦に掃海艇と輸送艦が一列となりました。見ての通り、舷側の形状も全く異なる艦艇ですので、操舵特性も違います。これはそれぞれの艦艇の任務に最適化した姿、という事なのですけれども、全く異なる艦艇の一列は写真として面白い。
受閲部隊と観閲部隊の配列を転換して、艦隊の縦列を組みなおすための変針のようで、観閲部隊を真後ろから望む航路を進んでゆきます。真後ろから見ますと、はつゆき型、あたご型、あさぎり型の各型それぞれ異なるヘリコプター格納庫の形状が一度に見れます。
航続する護衛艦あぶくま型の護衛艦ちくま、現在は護衛艦隊直轄護衛隊に所属していますが、2008年の部隊改編以前は本型そのものが舞鶴地方隊など地方隊用に建造され運用されていました。護衛艦隊の大型艦と地方隊用の小型護衛艦、というような棲み分けが出来ていた、ということ。
しかし、地方隊は防衛警備管区を持つ部隊運予当事者であるので、部隊を常時もつ必要はなく、護衛艦隊を部隊訓練担当として訓練に専念させ、各地方隊や自衛艦隊が任務上必要となった場合にのみ抽出し、任務対応部隊をその都度編制すればよい、という観点から現在の体制となったもよう。
ただ、この方式ですと地方総監は自前の即応戦力が少なく、平時から実動部隊を以て運用訓練を行うことが難しくなります。また、元来は自衛艦隊司令官と海上幕僚長が同格で在ったのに対し、近年、護衛艦隊と航空集団に潜水艦隊などを有する自衛艦隊司令官の地位が向上する半面に地方総監の地位が相対として低下したかの如く、二期連続で自衛艦隊司令官から海上幕僚長への昇任人事が続いています。
多用途支援艦ひうち、舞鶴地方隊最大の艦艇に当たり、直轄艦として運用されています。標的曳航や訓練魚雷回収などの訓練支援に当たると共に比較的大きな後部甲板を利用し、車両輸送や各種補給資材の運搬にも用いられています。個人的には有事の際、護衛艦が対応するには大きすぎる任務、基地の入り口において敵潜水艦の機雷封鎖などに備える湾口防衛等の哨戒艦として本型の派生型を建造しては、と思うところ。
ミサイル艇はやぶさ、本艇と僚艇のミサイル艇うみたか、を以て第二ミサイル艇隊を編成しています。ミサイル艇は後部甲板の艦対艦ミサイルにより高い打撃力を有しますが、自艦が攻撃を受けた際には欺瞞弾などを散布し回避の一点に対応が限られ、対潜哨戒を行う装備を有さないなど、一撃必殺以外の用途がありませんが、日本海においては海上警備行動命令などによる工作船対処に期待されるもの。
掃海艇まえじま、現在は比較的新しい掃海艇すがしま、とともに舞鶴地方隊第44掃海隊を編成しています。数少なくなった掃海艇うわじま型の一隻で、港湾施設の機雷封鎖などに備えます。機動運用部隊である護衛艦隊に対し小型護衛艦を多数そろえていた頃の地方隊は、舞鶴警備管区であれば新潟や敦賀等の重要港湾近くにおいて、小型護衛艦による対潜哨戒と掃海艇による機雷対処と任務を分けてきました。
輸送艦のと、現在は除籍されている舞鶴地方隊直轄艦で、海上自衛隊の艦としては最小のものでした。自衛艦隊の輸送艦おおすみ型のような満載排水量14000tの大型艦には対処できない沿岸部での木目細かな輸送任務に対応する目的で整備され、東日本大震災では小型艦ながら同型艦ゆら、とともに北海道と東北の輸送任務にも対応しています。がんばれ東北、と横断幕が見えるでしょうか。
巡視船ほたか、最高速力40ノットといわれますが、実際にはもう少し出るとも言われる海上保安庁の工作船対処切り札で、敦賀の第8管区海上保安部に所属しています。今回は舞鶴展示訓練へ海上保安庁からの参加船として加わっています。こうして一斉回頭した展示訓練参加部隊は次の祝賀飛行へ、臨むこととなります。
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