◆武内師団長の部隊巡閲と指揮官訓示
本日夕刻に発生した栃木県北部の震度五強地震に端を発する群発地震、気象庁によれば火山性地震ではないとのことですがあのあたりの白根山が気になるところです。
快晴に恵まれた福岡の福岡駐屯地、師団創設58周年を祝う福岡駐屯地祭は、前回の観閲部隊指揮官第4師団副師団長が到着しました。観閲部隊指揮官の到着と共に整列した部隊は敬礼し迎えましたが、続いて警務隊の白バイが先導し車両が式典会場へと入場してまいりました。
第4師団長武内誠一陸将、武内師団長はこの行事が行われた四ケ月前に師団長に着任、第4師団長の前職は、東北方面隊幕僚長として東日本大震災災害派遣任務統合任務部隊の運用立案や補給と稼働率維持に奔走し、同胞のために尽くした指揮官の一人です。
師団旗が続いて入場、師団とは英語でDivisionですが、この単語は事業部という意味を持ちます。その意味が全てを示しており、一方面の全ての想定任務を対応する情報と運用に補給を自己完結する戦闘部隊の単位が、師団、つまりDivisionということになり、九州北部と壱岐対馬地域の防衛警備及び災害派遣に備えています。
師団長を迎える連隊旗、自衛隊の師団を支える基幹部隊は普通科連隊で、普通科連隊は師団の支援の下で独自の運用と任務に当たります。連隊旗は部隊旗の敬礼動作が勢いよく振り上げるのに対し、高く掲げる敬礼動作、日本において連隊の位置づけが良く分かるでしょう。
師団長へ敬礼、第4師団は管区に朝鮮半島を睨む対馬海峡があり、冷戦時代には朝鮮戦争の休戦状態の崩壊やソ連軍による重要海峡対馬海峡への軍事的圧力を跳ね返すべく厳しい訓練を積んできました。師団管区の境界線は対馬海峡を越えた対馬から大韓海峡の日韓境界線を挟む国境の師団ですから。
国旗入場。旗手と警衛とともに日章旗が式典会場へとん入場してきました。日章旗は快晴にこそ最も輝く白地に描かれた太陽という日の丸、観客は起立し国旗を迎えます。国旗は車両にて入場する行事が多い中で、福岡駐屯地では徒歩にて入場します。
国旗に対し敬礼、会場全体に響き渡る号令の反響と共に、隊員は各々の小銃に着剣し捧銃姿勢を、指揮官は国旗へ挙手の敬礼を、各部隊の部隊旗を預かる旗手は旗の敬礼動作を行います。号令一下、勢いよく振り上げられる旗の敬礼動作はこの瞬間に式典会場がぎゅんと引き締まる。
指揮官巡閲、師団の基幹を果たす連隊旗が並ぶ林のなかを進んでゆきます。整列した部隊は、第4師団隷下の師団司令部及び司令部付隊、第16普通科連隊、第19普通科連隊、第40普通科連隊、第41普通科連隊、対馬警備隊、第4対舟艇対戦車隊、第4戦車大隊、第4偵察隊、と続きます。
第4特科連隊、第4高射特科大隊、第4施設大隊、第4後方支援連隊、第4通信大隊、第4飛行隊、第4特殊武器防護隊、第4音楽隊と並び、師団管内を主として福岡駐屯地、大村駐屯地、小倉駐屯地、別府駐屯地、久留米駐屯地、目達原駐屯地、玖珠駐屯地、対馬駐屯地から参加した部隊の前を往く。
師団長は、上記師団隷下部隊を平時において想定される任務へ対応すべく訓練し、最高度の練度を維持することに努めると共に、有事の際には方面隊からの支援部隊や他管区からの支援部隊とともにこの地域の防衛に責任を持つこととなります、目の前の師団長へ観客からも自然と拍手が湧く。
武内師団長の訓示、式典では九州北部の防衛上の重要性や変動する国際情勢に触れると共に近年の九州における地震災害や毎年の台風及び豪雨災害にも触れ、精強な部隊創りを師団一体となって求めると共に、国民住民との理解と支援を求める内容となっていました。
様々な装備や隊員の練度も当然必要不可欠ではあるのですが、同時に国民と共に歩む組織でなければ軍事機構は存続し得ません、現代の国家には様々な脅威や難題問題がありますが、これらを共有し共に解決へ向かうという姿勢と枠組みが、遠回りのように見えて唯一の対処法、ということですね。
他方、冷戦時代においては米ソ緊張に依拠しつつ、二大国の衝突は即第三次大戦を意味しましたため、ある種の抑制と緊張の下の均衡が図られていたのですが、冷戦後にこの秩序が崩壊、北東アジア地域では冷戦構造の残滓が秩序崩壊を武力紛争へ転換させない枠組みが自然と成り立っていたのですが、近年、秩序の均衡に新しく大陸側から挑戦する動きがあり、今日の緊張となっています。
祝辞を述べる福岡県の山崎建典副知事、山崎副知事は県庁総務部長を経て副知事に任命され、防災担当でもあります。福岡県の小川洋知事が多忙のため来場できず、代わって師団創設記念行事に祝辞を述べていました。来賓祝辞は、この行事が民主党政権時代に行われていたため、政治決定により支援団体の祝辞などを行えなくなっている状態でした。
祝辞自粛は、支援団体の会長さんがとある基地での行事において、とある与党議員さんが駐車場誘導に従わず喚いていた話を例に祝辞において窘めたところを与党批判だと曲解して反発し、当時の与党民主党は戦後初の自衛隊への言論統制命令となる支援団体祝辞自粛要請の通達が出されたことによるものですが。
この通達もようやく今月取り消されました。こういう事をする政府は何れ主権者の厳しい主張の前に跪くだろう、とおもいましたが、その通りの総選挙を経まして、自民公明連立政権の下で取り消された、という事。祝電披露が終わり、観閲行進準備の号令が掛かります。
観閲行進準備の号令と共に車両待機位置へ隊員が走ります。いよいよ福岡駐屯地祭は観閲行進へと転換しました。当方にとって初めて見る九州の自衛隊部隊の観閲行進が、いよいよ始まる。その様子は次回から写真と共に紹介することとしましょう。
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