■独力防衛、検討の余地は必要
沖縄県知事主宰の沖縄米軍属事件追悼行事においてアメリカ海兵隊の沖縄からの撤退を求める声が大きく主張、ロイター通信やAFP通信など海外メディアも報じる事となりました。
アジア太平洋地域の一員である日本は、アジア太平洋地域での平和と安定が維持されなければ国家を維持できず、基本的に平和憲法に基づき周辺国での事態に対し介入できない日本では、独力での、つまり沖縄県を基点として西太平洋地域への平和維持へ大きな役割を担うアメリカ海兵隊を撤退させたうえでの安全保障政策は有り得ない、という前提ではありますが、このアメリカ海兵隊撤退を望む声が広範に広がることがあるならば、その可能性を肯定的に考える選択肢は絶無とすべきではありません。そこで、野党が仮に安全保障面で呈示出来得る施策から、日本独自の防衛力を、という提案を列挙してゆきましょう。軍属の犯罪で海兵隊の撤退要求、という視点は一つ、置いておいて。
昨日、独力防衛力の整備のむずかしさを強調したばかりで恐縮ですが。そこで、嘉手納基地の米空軍第18航空団の航空戦力を維持した上で、第七艦隊との連携も視野に、自衛隊の能力により、在沖海兵隊なき日本防衛戦略を模索する必要性という視点から考えてみる事としましょう。単純な話ですが、安全保障協力法制や有事法制は冷戦時代に制定しておらず、当時の防衛庁は有事の際に衆参両院に一括し法案を提出し、即座に有事法制を発動するという非常に綱渡りの施策を考慮しつつ、ソ連軍の圧力を目の前に専守防衛を維持していました。
冷戦時代の防衛力は戦車1000両、火砲1000門、13個師団2個混成団18万名、護衛艦60隻、潜水艦16隻、戦闘機350機、という防衛力を整備していました。潜水艦は冷戦時代よりも6隻増強されていますが、その他の装備は縮小されており、戦車700両、火砲700門、4個師団、人員3万5000名、護衛艦12隻、戦闘機70機、を造成すればその水準に戻す事が出来るもので、非常に単純な視点ではありますが、まず、提案として、“海兵隊に依存しない防衛力の再整備”を念頭に、防衛力の総合再構築を、実行する施策は考えられるでしょう。
実際問題荒唐無稽、と思われるかもしれませんが、旭川の第2師団のような、戦車連隊、3個普通科連隊、特科連隊、を中心とした防衛力を整備し、展開させる事は不可能ではありません。ただ、現代陸上戦闘の前線火力を考慮すれば、装甲化しなければ部隊が生き残る事は出来ず、重装備に見合う師団の装備体系は相応に大きなものとなるでしょう。その上で、13個師団2個混成団の編成の内、混成団は四国と沖縄に配置されていますが、四国の混成団を山陽山陰地区の師団管区へ編入するかたちで沖縄に転地し、沖縄に2個混成団を配置し、実質師団を置く体制に近づければ、海兵隊を沖縄に置かない、日本防衛の体制は構築する、少なくとも構図だけは成り立つ。
戦闘機に関しても、冷戦時代と比較し数の上では70機、定数が縮小しています。その分早期警戒管制機や戦闘機教育部隊が増強されているのですが、一方冷戦時代には補助戦闘機として使用可能な型を含む超音速練習機が90機以上配備されていました。この点について、航空自衛隊が練習機と攻撃機を併用できるジャギュア攻撃機、またはJAS-39戦闘機、などを160機程度導入し、F-4の後継機となるF-35戦闘機と併用運用する態勢を乞うしくすれば、少なくとも冷戦時代の水準には戻ります。JAS-39は航続距離が限定される小柄な戦闘機ですが、中立政策を採ったスウェーデンの戦闘機ということで、増勢には世論の理解も得られる部分は出てくるかもしれないところ。
護衛艦については、護衛艦隊の32隻という護衛艦は能力的に十分なものを有していますので、地方隊に冷戦時代沿岸防衛用に配備された護衛艦、横須賀、佐世保、舞鶴、呉、大湊、の地方隊へ2個護衛隊各6隻程度の護衛艦が配備されていましたが、沿岸防備と対潜戦闘を展開し得る満載排水量で3000t程度の護衛艦を、あぶくま型が2800tですので若干強化した護衛艦を量産することで、数の上では冷戦時代の抑止力の水準を再構築することはできます。
この水準の防衛力を整備した上で、日本独自の防衛力を整備し、沖縄の海兵隊駐留を前提としない独自の防衛力を検討する端緒につけるのだろう、こう考える次第です。現代の海上戦闘や航空戦闘は冷戦時代の数的優位と質的優位の均衡が大きく転換していますので、数的整備に着手した場合、個々の装備の取得費用や全体のシステムとしての整備費用は大きく増大する事を意味しますが、米軍の負担、米軍駐留による沖縄県民への負担を日本全体が防衛力を整備する負担に置き換えて防衛力を整備する、こうした主張は、特に野党の駐留なき安保を求める視点からはあってしかるべき、ではないでしょうか。
日本は憲法の問題から周辺情勢へアジア西太平洋諸国の一員として防衛上の責任を共有する事が出来ない、という問題がありますが、野党ならば一つの選択肢があります、それはベ平連、です。ベ平連、という、ヴェトナム戦争時代にヴェトナムに平和を求める市民運動がありました。この視点から、日本の防衛力をヴェトナムやフィリピンと協同し、防衛協力を図るという選択肢を含めればもう一つ、日本の防衛負担を日米同盟にのみ求めず構築する事が出来るでしょう。野党の視点ですが、左翼運動としてヴェトナム戦争時代にベ平連へ参加した代議士が多い野党ならば、今こそベ平連、としてヴェトナムとの防衛協力を進める事は出来ない案ではありません。
防衛力を冷戦時代の数的規模に再構築し、その上でヴェトナムやフィリピンとの防衛協力を維持する、アメリカは海兵隊を沖縄に置かない体制で海兵隊主力をグアム若しくは可能であればフィリピンに移転させ、その上でアメリカ第七艦隊やアメリカ第五空軍、陸軍第1軍団と協力し、自衛隊の能力と連携させる、こうした施策です。海兵隊撤退を、という提案だけで許されるのは小学生の学級会までです、中学校の生徒会以上となれば代案が無ければなりません、野党が代案を示し反対したのは民主党政権時代の野党自民党位のもので、現代の代替電力なき原発反対、財源無き所得再配分促進、などなど、現実味を欠いた野党の提案を越えた、現実的な案として防衛力整備へ国民の理解を求め、その分、沖縄の海兵隊基地負担の代替案とする、こうした視点を示してみました。
北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
沖縄県知事主宰の沖縄米軍属事件追悼行事においてアメリカ海兵隊の沖縄からの撤退を求める声が大きく主張、ロイター通信やAFP通信など海外メディアも報じる事となりました。
アジア太平洋地域の一員である日本は、アジア太平洋地域での平和と安定が維持されなければ国家を維持できず、基本的に平和憲法に基づき周辺国での事態に対し介入できない日本では、独力での、つまり沖縄県を基点として西太平洋地域への平和維持へ大きな役割を担うアメリカ海兵隊を撤退させたうえでの安全保障政策は有り得ない、という前提ではありますが、このアメリカ海兵隊撤退を望む声が広範に広がることがあるならば、その可能性を肯定的に考える選択肢は絶無とすべきではありません。そこで、野党が仮に安全保障面で呈示出来得る施策から、日本独自の防衛力を、という提案を列挙してゆきましょう。軍属の犯罪で海兵隊の撤退要求、という視点は一つ、置いておいて。
昨日、独力防衛力の整備のむずかしさを強調したばかりで恐縮ですが。そこで、嘉手納基地の米空軍第18航空団の航空戦力を維持した上で、第七艦隊との連携も視野に、自衛隊の能力により、在沖海兵隊なき日本防衛戦略を模索する必要性という視点から考えてみる事としましょう。単純な話ですが、安全保障協力法制や有事法制は冷戦時代に制定しておらず、当時の防衛庁は有事の際に衆参両院に一括し法案を提出し、即座に有事法制を発動するという非常に綱渡りの施策を考慮しつつ、ソ連軍の圧力を目の前に専守防衛を維持していました。
冷戦時代の防衛力は戦車1000両、火砲1000門、13個師団2個混成団18万名、護衛艦60隻、潜水艦16隻、戦闘機350機、という防衛力を整備していました。潜水艦は冷戦時代よりも6隻増強されていますが、その他の装備は縮小されており、戦車700両、火砲700門、4個師団、人員3万5000名、護衛艦12隻、戦闘機70機、を造成すればその水準に戻す事が出来るもので、非常に単純な視点ではありますが、まず、提案として、“海兵隊に依存しない防衛力の再整備”を念頭に、防衛力の総合再構築を、実行する施策は考えられるでしょう。
実際問題荒唐無稽、と思われるかもしれませんが、旭川の第2師団のような、戦車連隊、3個普通科連隊、特科連隊、を中心とした防衛力を整備し、展開させる事は不可能ではありません。ただ、現代陸上戦闘の前線火力を考慮すれば、装甲化しなければ部隊が生き残る事は出来ず、重装備に見合う師団の装備体系は相応に大きなものとなるでしょう。その上で、13個師団2個混成団の編成の内、混成団は四国と沖縄に配置されていますが、四国の混成団を山陽山陰地区の師団管区へ編入するかたちで沖縄に転地し、沖縄に2個混成団を配置し、実質師団を置く体制に近づければ、海兵隊を沖縄に置かない、日本防衛の体制は構築する、少なくとも構図だけは成り立つ。
戦闘機に関しても、冷戦時代と比較し数の上では70機、定数が縮小しています。その分早期警戒管制機や戦闘機教育部隊が増強されているのですが、一方冷戦時代には補助戦闘機として使用可能な型を含む超音速練習機が90機以上配備されていました。この点について、航空自衛隊が練習機と攻撃機を併用できるジャギュア攻撃機、またはJAS-39戦闘機、などを160機程度導入し、F-4の後継機となるF-35戦闘機と併用運用する態勢を乞うしくすれば、少なくとも冷戦時代の水準には戻ります。JAS-39は航続距離が限定される小柄な戦闘機ですが、中立政策を採ったスウェーデンの戦闘機ということで、増勢には世論の理解も得られる部分は出てくるかもしれないところ。
護衛艦については、護衛艦隊の32隻という護衛艦は能力的に十分なものを有していますので、地方隊に冷戦時代沿岸防衛用に配備された護衛艦、横須賀、佐世保、舞鶴、呉、大湊、の地方隊へ2個護衛隊各6隻程度の護衛艦が配備されていましたが、沿岸防備と対潜戦闘を展開し得る満載排水量で3000t程度の護衛艦を、あぶくま型が2800tですので若干強化した護衛艦を量産することで、数の上では冷戦時代の抑止力の水準を再構築することはできます。
この水準の防衛力を整備した上で、日本独自の防衛力を整備し、沖縄の海兵隊駐留を前提としない独自の防衛力を検討する端緒につけるのだろう、こう考える次第です。現代の海上戦闘や航空戦闘は冷戦時代の数的優位と質的優位の均衡が大きく転換していますので、数的整備に着手した場合、個々の装備の取得費用や全体のシステムとしての整備費用は大きく増大する事を意味しますが、米軍の負担、米軍駐留による沖縄県民への負担を日本全体が防衛力を整備する負担に置き換えて防衛力を整備する、こうした主張は、特に野党の駐留なき安保を求める視点からはあってしかるべき、ではないでしょうか。
日本は憲法の問題から周辺情勢へアジア西太平洋諸国の一員として防衛上の責任を共有する事が出来ない、という問題がありますが、野党ならば一つの選択肢があります、それはベ平連、です。ベ平連、という、ヴェトナム戦争時代にヴェトナムに平和を求める市民運動がありました。この視点から、日本の防衛力をヴェトナムやフィリピンと協同し、防衛協力を図るという選択肢を含めればもう一つ、日本の防衛負担を日米同盟にのみ求めず構築する事が出来るでしょう。野党の視点ですが、左翼運動としてヴェトナム戦争時代にベ平連へ参加した代議士が多い野党ならば、今こそベ平連、としてヴェトナムとの防衛協力を進める事は出来ない案ではありません。
防衛力を冷戦時代の数的規模に再構築し、その上でヴェトナムやフィリピンとの防衛協力を維持する、アメリカは海兵隊を沖縄に置かない体制で海兵隊主力をグアム若しくは可能であればフィリピンに移転させ、その上でアメリカ第七艦隊やアメリカ第五空軍、陸軍第1軍団と協力し、自衛隊の能力と連携させる、こうした施策です。海兵隊撤退を、という提案だけで許されるのは小学生の学級会までです、中学校の生徒会以上となれば代案が無ければなりません、野党が代案を示し反対したのは民主党政権時代の野党自民党位のもので、現代の代替電力なき原発反対、財源無き所得再配分促進、などなど、現実味を欠いた野党の提案を越えた、現実的な案として防衛力整備へ国民の理解を求め、その分、沖縄の海兵隊基地負担の代替案とする、こうした視点を示してみました。
北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)