■自衛隊を熟知したスタッフを置く
福島第一原発事故ではCH-47により高圧発電車を空輸すれば、原子炉損傷の事態は回避できた可能性は高い。
ただ、要請が無かった時点で自衛隊としては勝手に主導権を東京電力から奪う事は出来ないし、高圧発電車を空輸した段階では対応出来ない状況だと理解する他なかった、という話がありました。高圧発電車を空輸するという発想そのものが、原子力事故の対処に当たる政府も東京電力も無かったのではないか、という自衛隊の方のお話がありまして、一方、事故が九州電力で発生していれば、回避できていたかもしれない、と。
平成二十二年奄美豪雨、2010年10月20日に鹿児島県奄美大島を襲った記録的豪雨は、当時の民主党政権が11月16日に激甚災害に指定する方針を示す大災害となりました、この災害に際して九州電力は陸上自衛隊へ孤立集落への高圧発電車空輸を要請し、ヘリコプターによる移動発電施設の初空輸を行っています。被災地に移動発電車を空輸し孤立した電力網を回復させた日本で初めての事例とのことで、現地ではかなり報道されたとの事ですが。
実は当方もCH-47にはそうした空輸能力がある事は知っていても、平成二十二年奄美豪雨災害派遣での実運用の事例があるとは知りませんでした。自衛隊にできる事はあった、しかし要求側と部隊の平時からの連絡齟齬が響いた、といえます。また、CH-47ならば高圧発電車の空輸も可能で九州地方では空輸実績もありました、自衛隊のCH-47は17日、使用済み核燃料プール冷却支援という形で漸く投入されました、電源車を発災当日に空輸する要請を出していたならば、状況は大きく変わった訳で、情報共有と齟齬の象徴的事例といえましょう。
この問題について、勿論批判するだけならば簡単です、例えば全電源喪失や津波被害というものを想定外としていた部分は批判できるでしょうし、併せて原子力災害は複合的な要員により生じますが、原子力発電を担う電力会社は原発由来の事故防止には万全の対策を講じていましたが、津波災害は勿論、テロコマンドー攻撃やミサイル攻撃などに対する脆弱性はそのまま放置されたままでした。
この視点から、移動発電車両等電源可搬装置等の移動が電力会社単独での迅速な展開が不可能であった場合の想定は、輸送ヘリコプター等自衛隊の実が保有する特殊機材、日本国内には中型輸送ヘリコプターまでならば、例えばスーパーピューマ等を民間航空会社が保有していますし、時間を掛けて良いならば民間輸送会社に運べないものはほぼありません、しかし、道路が使えない、浸水している、という状況です。
その中で緊急に輸送する手段というものが必要となった場合には、そもそも平時の手続きを念頭としている機構よりも、有事での自己完結能力を求められている機構、つまり軍事機構のみが想定しているものが多い訳です。究極的には、各電力会社が電源車を空輸できるよう、CH-47やCH-53規模のヘリコプターを装備していればよかったのか、と問われるならば、民間の視点では原発事故が何月何日に発生するかの大まかな見通しが年間計画で示されるものではありません。
大規模災害という、文字通り奇襲的に発生する事案への備えには24時間365日の即応体制を採る必要がありますが、一機当たりの取得費用が50億円となり、予備機を準備し夜間低空飛行や悪天候下の視界不良を越えて飛行する能力を民間企業が整備する事は不可能です、しかし、政府危機対応責任者の防衛幕僚として、自衛隊の装備を理解し助言できる立場のスタッフを置くことは、平時からできたはずでしょう。
北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
福島第一原発事故ではCH-47により高圧発電車を空輸すれば、原子炉損傷の事態は回避できた可能性は高い。
ただ、要請が無かった時点で自衛隊としては勝手に主導権を東京電力から奪う事は出来ないし、高圧発電車を空輸した段階では対応出来ない状況だと理解する他なかった、という話がありました。高圧発電車を空輸するという発想そのものが、原子力事故の対処に当たる政府も東京電力も無かったのではないか、という自衛隊の方のお話がありまして、一方、事故が九州電力で発生していれば、回避できていたかもしれない、と。
平成二十二年奄美豪雨、2010年10月20日に鹿児島県奄美大島を襲った記録的豪雨は、当時の民主党政権が11月16日に激甚災害に指定する方針を示す大災害となりました、この災害に際して九州電力は陸上自衛隊へ孤立集落への高圧発電車空輸を要請し、ヘリコプターによる移動発電施設の初空輸を行っています。被災地に移動発電車を空輸し孤立した電力網を回復させた日本で初めての事例とのことで、現地ではかなり報道されたとの事ですが。
実は当方もCH-47にはそうした空輸能力がある事は知っていても、平成二十二年奄美豪雨災害派遣での実運用の事例があるとは知りませんでした。自衛隊にできる事はあった、しかし要求側と部隊の平時からの連絡齟齬が響いた、といえます。また、CH-47ならば高圧発電車の空輸も可能で九州地方では空輸実績もありました、自衛隊のCH-47は17日、使用済み核燃料プール冷却支援という形で漸く投入されました、電源車を発災当日に空輸する要請を出していたならば、状況は大きく変わった訳で、情報共有と齟齬の象徴的事例といえましょう。
この問題について、勿論批判するだけならば簡単です、例えば全電源喪失や津波被害というものを想定外としていた部分は批判できるでしょうし、併せて原子力災害は複合的な要員により生じますが、原子力発電を担う電力会社は原発由来の事故防止には万全の対策を講じていましたが、津波災害は勿論、テロコマンドー攻撃やミサイル攻撃などに対する脆弱性はそのまま放置されたままでした。
この視点から、移動発電車両等電源可搬装置等の移動が電力会社単独での迅速な展開が不可能であった場合の想定は、輸送ヘリコプター等自衛隊の実が保有する特殊機材、日本国内には中型輸送ヘリコプターまでならば、例えばスーパーピューマ等を民間航空会社が保有していますし、時間を掛けて良いならば民間輸送会社に運べないものはほぼありません、しかし、道路が使えない、浸水している、という状況です。
その中で緊急に輸送する手段というものが必要となった場合には、そもそも平時の手続きを念頭としている機構よりも、有事での自己完結能力を求められている機構、つまり軍事機構のみが想定しているものが多い訳です。究極的には、各電力会社が電源車を空輸できるよう、CH-47やCH-53規模のヘリコプターを装備していればよかったのか、と問われるならば、民間の視点では原発事故が何月何日に発生するかの大まかな見通しが年間計画で示されるものではありません。
大規模災害という、文字通り奇襲的に発生する事案への備えには24時間365日の即応体制を採る必要がありますが、一機当たりの取得費用が50億円となり、予備機を準備し夜間低空飛行や悪天候下の視界不良を越えて飛行する能力を民間企業が整備する事は不可能です、しかし、政府危機対応責任者の防衛幕僚として、自衛隊の装備を理解し助言できる立場のスタッフを置くことは、平時からできたはずでしょう。
北大路機関:はるな くらま
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