■Aso4ウルトラプリニー式噴火
日本にはメガトン水爆数千倍の破壊力を秘め、世界を小氷河期に追いやる巨大火山が複数存在します。この危険性を四国電力伊方原発再稼働差し止め訴訟にて広島高裁が認めました。
広島高等裁判所は13日、愛媛県の四国電力伊方原発3号機について、運転停止を命じる仮処分の決定をしました。高裁が原発の運転停止を命じるのは初の事例です。注目すべきは広島高裁が“熊本県の阿蘇山の地下にはマグマだまりが存在し、巨大噴火が起きて原発に影響を及ぼす可能性が小さいとはいえない”として九州の阿蘇山の危険性を認めた点です。
四国の原発と九州の阿蘇山、距離が大きいように見えますが、実は九州には100km以内を火砕流で埋める巨大火山が複数存在します。そして数万年に一度の頻度でしか、全世界でもウルトラプリニー式噴火という巨大噴火は発生しないのですが、ひとたび発生したならば、その被害は国家規模を越えて破局的な影響を及ぼし、これを高裁が認めた点が大きい。
Aso4と火山学上称される阿蘇山過去最大の噴火ではウルトラプリニー式噴火、破局噴火と呼ばれる巨大噴火となり火砕流は九州全域を覆い、四国と本州島中国地方へ到達しています。九州は鹿児島県南部と鹿児島県島嶼部、対馬等の長崎県島嶼部以外全域が火砕流に呑みこまれ、紫尾山や脊振山、普賢岳に九重山、霧島山に由布岳等の山頂以外全滅しました。
ウルトラプリニー式噴火とは、火山爆発指数VEI7以上の噴火を意味し、100立方km以上の噴出物、火砕流や火山灰に溶岩流等を火山から排出するものです。過去一千年間では最大の噴火が1815年のインドネシアタンボラ火山噴火であり、インドネシア全域で火山灰が降り積もると共に、北米や欧州全域でも火山灰による気温低下と飢餓が発生しています。
この1815年タンボラ噴火は150立方kmもの噴出物がありましたが、阿蘇山最大噴火Aso4は384立方kmの噴出物がありました。一方、この火山爆発指数VEI7以上の噴火の頻度ですが、過去五千年間ではニュージーランドタウポ湖で発生した186年のハテペ噴火が120立方km、紀元前1620年のサントリーニ島ミノア噴火の100立方km、この三回のみです。
Aso4についても発生したのは約9万年前で正確な日時は判明していません。阿蘇山の過去の主要な噴火はカルデラ形成期の30万年間に集中しており、Aso1が約26.6万年前で噴出量 32立方km 、Aso2は約14.1万年前で噴出量 32立方km 、Aso3が約13万年前で噴出量 96立方km、Aso4以外の噴火はほぼ1991年のフィリピンピナトゥボ山と同規模だ。
阿蘇山が日本の地質学上に確たる意味を有しているのはAso4の巨大噴火と共に日本全土へ火山灰が降り積もった為、地層を調査する際に日本全国どこでも阿蘇山火山灰が確認でき、約9万年前の地層を明確に確認できる指標となっています。しかし、この規模の災害を具体的な防災行政に活かす事は果たして現実的か、対策を行うには千年単位の準備が要る。
特に、今回の裁判所が伊方原発3号機運転可否に挙げた阿蘇山大噴火の可能性ですが、Aso4規模の噴火を想定するならば、九州全域と山口県愛媛県全域の広域避難が必要であり、火山灰の影響を考えた場合、避難先は京阪神地方や東海地方でも危険であり、北海道かオーストラリア等南半球へ退避しなければなりません、これが現実的か、という視点は必要だ。
阿蘇山巨大噴火は影響でいえば、小松左京のSF小説“日本沈没”に匹敵する被害を及ぼします。ただ、数万年に一度の発生ですので、今日明日を想定し、特に原子炉の運転期間40年と区切っている原子力規制法の尺度では測れないものがあります。100年単位の国土強靭化計画を積み重ね、防災文化として定着させたとしても、気の遠くなる時間でもあります。
高裁判決にあるようなAso4規模の阿蘇山噴火を考える場合、これは東日本大震災を契機とした津波浸水地域への居住不許可というような規模の退避では済まず、極端な話でAso4規模の噴火が発生すると判断した場合には九州全島避難を行う必要があります。避難規模は例えば三宅島火山災害全島避難や三原山噴火伊豆大島全島避難とは比較にならないのです。
四国電力伊方原発3号機への阿蘇山最大規模の噴火災害への準備ですが、火砕流に呑まれる事を前提とし、カルデラ周辺での前駆噴火等、ウルトラプリニー式噴火に先立つ徴候を把握した場合、九州全域に災害救助法に基づく避難命令を出すと同時に対策を開始する事が現実的でしょう。九州全島避難を行うだけでも死者数を1300万人減らす事ができる。
九州全島避難を開始すると共に阿蘇山前駆噴火がウルトラプリニー式噴火に至るまで、若干の時間的余裕があります。その間に原子炉冷温停止を行い、可能であれば補助全力冷却装置に頼らない小型原子力発電装置を準備し火山灰落下に備える、そして使用済み核燃料搬出先を予め火砕流危険圏外に設定、巨大噴火に至る前に核を搬出する対策が現実的です。
北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
日本にはメガトン水爆数千倍の破壊力を秘め、世界を小氷河期に追いやる巨大火山が複数存在します。この危険性を四国電力伊方原発再稼働差し止め訴訟にて広島高裁が認めました。
広島高等裁判所は13日、愛媛県の四国電力伊方原発3号機について、運転停止を命じる仮処分の決定をしました。高裁が原発の運転停止を命じるのは初の事例です。注目すべきは広島高裁が“熊本県の阿蘇山の地下にはマグマだまりが存在し、巨大噴火が起きて原発に影響を及ぼす可能性が小さいとはいえない”として九州の阿蘇山の危険性を認めた点です。
四国の原発と九州の阿蘇山、距離が大きいように見えますが、実は九州には100km以内を火砕流で埋める巨大火山が複数存在します。そして数万年に一度の頻度でしか、全世界でもウルトラプリニー式噴火という巨大噴火は発生しないのですが、ひとたび発生したならば、その被害は国家規模を越えて破局的な影響を及ぼし、これを高裁が認めた点が大きい。
Aso4と火山学上称される阿蘇山過去最大の噴火ではウルトラプリニー式噴火、破局噴火と呼ばれる巨大噴火となり火砕流は九州全域を覆い、四国と本州島中国地方へ到達しています。九州は鹿児島県南部と鹿児島県島嶼部、対馬等の長崎県島嶼部以外全域が火砕流に呑みこまれ、紫尾山や脊振山、普賢岳に九重山、霧島山に由布岳等の山頂以外全滅しました。
ウルトラプリニー式噴火とは、火山爆発指数VEI7以上の噴火を意味し、100立方km以上の噴出物、火砕流や火山灰に溶岩流等を火山から排出するものです。過去一千年間では最大の噴火が1815年のインドネシアタンボラ火山噴火であり、インドネシア全域で火山灰が降り積もると共に、北米や欧州全域でも火山灰による気温低下と飢餓が発生しています。
この1815年タンボラ噴火は150立方kmもの噴出物がありましたが、阿蘇山最大噴火Aso4は384立方kmの噴出物がありました。一方、この火山爆発指数VEI7以上の噴火の頻度ですが、過去五千年間ではニュージーランドタウポ湖で発生した186年のハテペ噴火が120立方km、紀元前1620年のサントリーニ島ミノア噴火の100立方km、この三回のみです。
Aso4についても発生したのは約9万年前で正確な日時は判明していません。阿蘇山の過去の主要な噴火はカルデラ形成期の30万年間に集中しており、Aso1が約26.6万年前で噴出量 32立方km 、Aso2は約14.1万年前で噴出量 32立方km 、Aso3が約13万年前で噴出量 96立方km、Aso4以外の噴火はほぼ1991年のフィリピンピナトゥボ山と同規模だ。
阿蘇山が日本の地質学上に確たる意味を有しているのはAso4の巨大噴火と共に日本全土へ火山灰が降り積もった為、地層を調査する際に日本全国どこでも阿蘇山火山灰が確認でき、約9万年前の地層を明確に確認できる指標となっています。しかし、この規模の災害を具体的な防災行政に活かす事は果たして現実的か、対策を行うには千年単位の準備が要る。
特に、今回の裁判所が伊方原発3号機運転可否に挙げた阿蘇山大噴火の可能性ですが、Aso4規模の噴火を想定するならば、九州全域と山口県愛媛県全域の広域避難が必要であり、火山灰の影響を考えた場合、避難先は京阪神地方や東海地方でも危険であり、北海道かオーストラリア等南半球へ退避しなければなりません、これが現実的か、という視点は必要だ。
阿蘇山巨大噴火は影響でいえば、小松左京のSF小説“日本沈没”に匹敵する被害を及ぼします。ただ、数万年に一度の発生ですので、今日明日を想定し、特に原子炉の運転期間40年と区切っている原子力規制法の尺度では測れないものがあります。100年単位の国土強靭化計画を積み重ね、防災文化として定着させたとしても、気の遠くなる時間でもあります。
高裁判決にあるようなAso4規模の阿蘇山噴火を考える場合、これは東日本大震災を契機とした津波浸水地域への居住不許可というような規模の退避では済まず、極端な話でAso4規模の噴火が発生すると判断した場合には九州全島避難を行う必要があります。避難規模は例えば三宅島火山災害全島避難や三原山噴火伊豆大島全島避難とは比較にならないのです。
四国電力伊方原発3号機への阿蘇山最大規模の噴火災害への準備ですが、火砕流に呑まれる事を前提とし、カルデラ周辺での前駆噴火等、ウルトラプリニー式噴火に先立つ徴候を把握した場合、九州全域に災害救助法に基づく避難命令を出すと同時に対策を開始する事が現実的でしょう。九州全島避難を行うだけでも死者数を1300万人減らす事ができる。
九州全島避難を開始すると共に阿蘇山前駆噴火がウルトラプリニー式噴火に至るまで、若干の時間的余裕があります。その間に原子炉冷温停止を行い、可能であれば補助全力冷却装置に頼らない小型原子力発電装置を準備し火山灰落下に備える、そして使用済み核燃料搬出先を予め火砕流危険圏外に設定、巨大噴火に至る前に核を搬出する対策が現実的です。
北大路機関:はるな くらま
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