北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

天長節 敢えて問う“自主防衛力整備と在日米軍基地負担”戦後体制と平成治世下の禁忌論点

2017-12-23 20:00:17 | 北大路機関特別企画
■平成時代,平和主義達成の課題
 平和の達成、平和を手段として平和主義を実行するのは容易い、しかし平和を結果として平和主義を実現する事は難しい。

 平成の御代も天皇陛下が皇太子殿下へご譲位とのことで、近現代日本史上戦争の無かった戦後という平和な時代は次の元号元年へ移り行こうとしています。こうした中、敢えて戦後との転換点を前に自主防衛力、具体的には同盟国アメリカへ多く依存せず独立国家が防衛力で対等に北東アジア地域へ平和と繁栄の理念を広げる選択肢について考えてみたい。

 独立した防衛力整備、これは中国の軍事圧力増大と共に台湾海峡と南シナ海に広がる軍事的緊張、北朝鮮核開発及びミサイル開発の進展、ロシアとの冷戦終結以来の米ロ対立と欧州正面緊張の北東アジア地域波及、一点だけでも重大な防衛上の問題が山積する状況を前に時代錯誤ではないか、今求められる論点か、極右思想だ、と批判されるかもしれません。

 在日米軍、中でも在沖米軍の問題が敢えて、平成から次の元号への転換期という時節に、この論点を考えさせる一つの重要な要素です。普天間飛行場航空機部品脱落事故、非常用窓の脱落事故という事例でしたが、端的に在日米軍の受入周辺自治体と日本全体の在日米軍への価値観の乖離突きつけられる一例で、過飽和状態の問題が一挙結晶化したといえる。

 自衛隊の防衛力は一定以上の水準があります、専守防衛の装備体系は、肝心な点で装備定数の定数割れと旧式装備渋滞の現状を予算面で解決するだけで防衛力は改善します。その上で在日米軍は、横須賀の空母と水上戦闘艦部隊と艦載機、全国の兵站部隊、佐世保の両用戦艦部隊、沖縄の海兵師団、横田の輸送機部隊、三沢・岩国・嘉手納の戦闘機部隊など。

 日本駐留米軍部隊を置き換えるには戦闘機は空軍航空団や空母航空団と海兵航空団合せ190機、水上戦闘艦艇はイージス艦9隻、大型揚陸艦4隻、回転翼航空機60機、輸送機30機、米軍編成1個師団、嘉手納・那覇・宜野湾・佐世保・広・横浜・相模原の兵站部隊備蓄、防衛計画の大綱は大きく書き換える必要がありますが、日本の経済力で維持できる水準です。

 新防衛大綱に、戦車350両、火砲350門、10個師団6個旅団、護衛艦60隻、潜水艦22隻、戦闘機470機、輸送機90機、と明記し、その上で必要な防衛費の策定を行う事で、装備定数の帳尻を合わせることは可能です。勿論、停滞している戦闘ヘリコプター60機取得や戦車削減時に提唱された普通科重視政策実行へ装甲戦闘車等配備も行う必要は当然ある。

 五兆円の現行防衛費も七兆円程度、新任務の付与を抑えれば八兆円を超えることは無いでしょう。装備調達は防衛大綱定数を装備耐用年数で割った数を着実に整備し、維持費は毎年調達費用の一割が目安、全くできない、という水準ではありませんし、国産装備に特化する事で防衛産業は公共事業的波及効果もある。しかし、兵站面と運用面の課題が大きい。

 後方支援と訳される兵站では、自衛隊が倉庫兵站方式を重視しているのに対し米軍は追送兵站を基本としています。戦略兵站部隊として相模原総合補給処を中心に航空輸送の横田基地と海上輸送の横浜ノースドックがある。ここを頂点に弾薬は広・秋月・川上・針尾島・佐世保・嘉手納・辺野古、燃料は鶴見・小柴・赤崎・庵崎・横瀬・沖縄、これらを包括しています。

 兵站は特に航空燃料や艦隊燃料等を民需に頼ることで解決出来そうですが、在日米軍の1100万バーレルという燃料備蓄は即応性の面で自衛隊の燃料備蓄とは根本的に異なるものです。弾薬庫も広や秋月弾薬庫で30万トンの備蓄があるとされ、管理は陸軍、大規模戦争以外用途は無い戦略備蓄と位置付けられますが、使わない前提の万一への備えというもの。

 戦略備蓄や装備整備能力は、日本本土への有事時は勿論、我が国周辺地域での地域安定化にも寄与します、なぜならば長期戦闘が可能な能力を誇示すると同時に、同盟国や包括安全保障協力を行う友好国への相互供与に用いうる故、しかし、備蓄は少なく兵站部隊枠が少ない、倉庫兵站重視で輸送力も不足、備蓄から輸送まで、根本からの兵站改革が必要だ。

 朝鮮半島有事や台湾海峡有事に際しては、自衛隊が議政府回廊で在韓米軍と共同作戦、という踏み込んだものでなくとも、在韓米軍へ輸送支援を行う。台湾海峡有事の際には自国民救出の名目で米軍部隊展開まで在沖米軍が期待される介入戦力を展開させ、台湾本島着上陸を強く牽制する。南シナ海シーレーン防衛へ積極関与する、この程度で充分でしょう。

 独自の防衛力を考える場合、燃料は民需に頼り指定協力企業から徴発、という運用ではなく、戦略備蓄を行う必要があります。在日米軍施設は、実質即応部隊と戦略備蓄であるといえ、逆に日本が独自防衛力を整備しアメリカに過度に依存しない基地無き安保、という方式を求めるのであれば、アメリカの北東アジアでのポテンシャルも整備せねばならない。

 平和主義の在り方も堅持しつつ、転換を要請される事は必至です。ここ平和主義は平和を手段とする方策から平和を目的とする政策への転換を要求されます。在日米軍は例えば在沖海兵隊は台湾海峡有事や朝鮮半島有事に際し、台湾消滅後の沖縄決戦や韓国全滅を待って北九州壱岐対馬の北朝鮮軍上陸を自衛隊と共に本土決戦で迎え撃つものではありません。

 地域安定に在日米軍は重大な事態が発生する以前に対処する抑止力であり、日本の平和憲法が求める本土決戦主義、つまり日本本土に着上陸するまで手出しを控える、という本土決戦誘致の施策は取りません。台湾海峡有事や朝鮮半島有事には巨大な広報拠点として機能し、言い換えれば日本本土へと着上陸に及ぶ以前の対岸に敵が揃う前に事態収束を期す。

 憲法改正、ここまで踏み込まずとも憲法解釈を平和主義の手段から目的への転換を明記し、現行憲法施政下での最大規模の自衛権行使を明確に示し、その上で在日米軍のポテンシャルを考える必要があるでしょう。ただ、日本には二つの大きな資産があります、一つは平和憲法、もう一つは日米同盟です。本来は平和憲法と在日米軍が両輪の関係でしたが、ね。

 軍事大国と成らねば在日米軍のポテンシャルを引き継ぐことは出来ない一方、平和憲法下で軍事大国化を進むことが出来れば、日本と包括安全保障協力協定を締結する諸国は増える事でしょう、現在イギリスやオーストラリアとインド等限られていますが、基本的に大日本帝国とは異なる日本国、防衛協力拡大へ平和憲法は領土的野心払拭強調に寄与します。

 安保体制は日本が選択肢として核武装、核戦力による恫喝を払しょくするうえで必要となる核抑止力を担保する重要な枠組みとなります。勿論、代替案として全土に全国民収容可能な核シェルターを建設し万全の準備と共に核兵器を忌避し、しかし核恫喝恐れず打ち払う体制も選択肢の一つですが、核抑止力を補いえます。また、敵に回らないことは重要だ。

 在日米軍の問題は我が国に微妙な温度差と平和主義への団結を阻害しかねない留意点を突きつけました。しかし、日本は経済力で世界三大経済圏を担い、また西太平洋地域における自由と平和を謳歌する最大国家です。海洋の自由や良心の自由と経済活動の自由、この理念を共有できる国は周辺に多く、敢えて自主防衛を討議する価値は少なくはありません。

北大路機関:はるな くらま
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