■週報:世界の防衛,最新12論点
防衛情報、今回は各国の早期警戒機と早期警戒管制機最新情報と輸送機や戦闘機改修に関する12の話題をお伝えしましょう。
フランス海軍は現在空母艦載機として運用するE-2C早期警戒機の後継としてE-2D早期警戒機のランビエ航空基地への配備方針を発表しました。これは11月21日にフランス海軍ニュースが発表したもので、今年七月に締結した7億ドルに上るE-2D早期警戒機3機及び予備エンジンや通信機器及び整備器材の調達計画が順調に進んでいる事を示します。
E-2D早期警戒機3機はフランス防衛企業SIAéによりフランス軍規格の通信機材や戦闘システムの適合化が行われる方針で、これにより独自のアップデートも可能とする方針です。3機のE-2D早期警戒機はフランス海軍唯一の航空母艦、原子力空母シャルルドゴールに配備される計画で、要撃管制など一連の能力は現在のE-2Cよりも大幅に向上するようです。
■英空軍E-7早期警戒機配備基地
日本では早期警戒管制機は当面E-767が維持されますが同じAPY-2を搭載するE-3はイギリスでは後継機が決定しています。
イギリス空軍はE-3セントリー早期警戒管制機の後継機として導入するE-7ウェッジテイル早期警戒機の運用拠点をロシーマス基地とする方針を決定しました。E-7はボーイン737 AEW&Cとして開発され、オーストラリア空軍やトルコ空軍、韓国空軍が運用している機体でロシーマス基地はイギリスがP-8Aポセイドン哨戒機を配備している基地です。
E-7ウェッジテイル早期警戒機はボーイング737-700を原型とした早期警戒管制機で、航続距離は5200km、カヌー型のMESA多機能電子走査アレイレーダーを搭載、180機を同時追尾し24機を迎撃管制可能となっています。最大探知距離は850kmに上り、370kmの距離で中高度を飛行する戦闘機等を捕捉可能で能力向上により性能は向上させられます。
イギリス空軍は2019年にE-7ウェッジテイルを5機総額19億6000万ドルで発注しました。今回配備されるロシーマス基地はイギリス北部に在ると共に前述の通りP-8Aポセイドン哨戒機が配備されている基地です。E-7もP-8Aもともに原型機はボーイング737であることから、イギリス空軍は保有するボーイング737系統の集約を図っているのでしょう。
■E-3早期警戒管制機能力向上
原型となるKC-135/ボーイング707の老朽化は進むもののE-3早期警戒管制機そのものは今後も能力向上が進みます。
ノースロップグラマン社はE-3早期警戒管制機の搭載するAPY-2レーダーの能力維持性能向上改修について1億6365万0543ドルの契約を結びました。これは2028年までに渡る長期契約で、メリーランド州リンシカムハイツのノースロップグラマン工場で実施、これによりE-3早期警戒管制機は2030年代以降も第一線での運用が継続される事となります。
E-3早期警戒管制機のなかでも今回の改修はRSIP近代化改修対応機に対し実施され、E-3ではアメリカ空軍に33機とNATO共同運用機17機及びイギリス空軍に7機とフランス空軍4機がその対象となっています、このRSIP改修は2005年までに第一段階の改修は完了、E-3ではありませんが、この他に航空自衛隊運用のE-767のAPY-2にも施されています。
■B-1爆撃機JASSM搭載試験
日本でもスタンドオフ兵器として長射程のミサイル導入が開始されますが、さて本場アメリカでは。
アメリカ空軍は2020年11月よりB-1B戦略爆撃機によるAGM-158JASSMミサイル機外搭載試験を開始しました。これはエドワーズ空軍基地の空軍第419飛行開発実験飛行隊が実施しました。B-1B爆撃機は爆弾倉にAGM-158JASSMまたはAGM-158C長距離対艦ミサイルを24発搭載可能で、ステルス性を有するB-1Bは機外搭載を必須としません。
B-1B爆撃機は現在新しくAN / AAQ-33スナイパー照準ポッドの搭載を開始しており、AGM-158JASSMを搭載するのは、将来的に爆弾倉に収まらない規模の大型である極超音速滑空兵器搭載への実証実験といえる可能性があります。アメリカ空軍はロシアや中国がすでに実用段階としている極超音速滑空兵器へ対抗可能な新型装備の開発を急いでいます。
■ハンガリーKC390正式契約
KC390はC-130輸送機を双発ジェット化したようなブラジル設計の最新型輸送機です。
ハンガリー政府は11月17日、ブラジル製エンブラエルKC-390戦術輸送機2機の調達について契約が成立した。KC-390は双発ジェット輸送機であるが、その名の通り空中給油機としても機能する多機能輸送機である。欧州ではスウェーデンがJAS-39グリペン戦闘機のブラジル採用をバーターとしてKC-390を採用しており、欧州で二番目の採用国である。
ハンガリー空軍へのKC-390納入は2023年から2024年にかけて実施される計画で、ハンガリー空軍では戦闘機としてJAS-39を採用しており、エンブラエル社では自国空軍がJAS-39を採用した事を受け、その相互運用性能を重視していることから、ハンガリー軍への採用へ好影響を及ぼした事が推察される。契約金額等については明らかにされていない。
KC-390は27tの貨物を搭載可能、人員80名やハンヴィークラスの戦術車輛3両、若しくはLAV-3クラスの装甲車1両空輸可能、13tの貨物を搭載した場合の航続距離は4815kmであり最大の27tを搭載した場合でも2593kmの飛行が可能、巡航速度はマッハ0.8に達し、これは国際航空路線において旅客機や旅客機派生の貨物機用航空航路を飛行可能だ。
■ブラジルKC-390四号機取得
KC-390は日本のC-2輸送機と開発時期が重なりよく比較されたものですが、旅客機程順調ではないのかもしれません。
ブラジル空軍は同国のエンブラエル社が製造するKC-390輸送機の四号機を12月に受領しました、ブラジル空軍は28機のKC-390を導入する計画で、四号機は1stGTT第一輸送航空群へ配備されます。KC-390はアメリカのC-130戦術輸送機と同程度の輸送能力を有していますが、ジェット輸送機として旅客機並の巡航速度を有すると共に空中給油が可能だ。
KC-390はブラジル空軍の次期戦闘機へのスウェーデン製JAS-39戦闘機採用へのバーターとしてスウェーデン空軍へも配備され、またハンガリー空軍への採用も決定しています。KCと有る通り、空中給油機への転用が可能であり、またブラジル空軍は現在ブラジル国内に蔓延する新型コロナウィルスCOVID-19への医療資材輸送にもKC-390を運用中です。
■ベルギーA-400M取得
エアバスA-400M輸送機は輸送能力と初飛行の次期が日本のC-2とよく比較されたものです。
ベルギー空軍は導入計画が進むA-400M輸送機の2020年代初号機納入が無事果たされた事を発表しました。二号機引渡は2021年です。ベルギー空軍への納入はスペインセビリアのA-400M最終組立工場にて引渡を受け、ベルギー空軍メルスブローク空軍基地へ到着、ベルギー・ルクセンブルク共同運用部隊である第15輸送飛行隊での運用が開始されました。
A-400M納入はCOVID-19感染拡大により遅れていました。A-400Mのベルギー空軍における運用は変則的です、第15輸送飛行隊の定数は8機ですが、ベルギー空軍の導入予定は7機、そしてルクセンブルク空軍の導入予定は1機です。これは小国であるルクセンブルクが共同運用へ参画というかたちでのNATO全体への協力を企図するものといえましょう。
■米XQ-58開発へ業界再編
XQ-58無人機の開発へファントム無人機化を手がけた防衛企業が参加することとなるもよう。
XQ-58無人航空機という次世代ステルス無人機について大きな業界再編が行われその実現性が大きく前進しました。XQ-58は自律離着陸が可能な滞空型ステルス無人航空機で、極めて高い実用性を秘めながら取得費用を400万ドル前後という極めて安価な水準に収めている、巡航ミサイルの延長線上にあるようなゲームチェンジャーとなりうる機体です。
XQ-58はカリフォルニア州サンディエゴにある無人機大手のクレイトスディフェンス社にが開発している機体で無人僚機としても単独での任務にも対応可能です。今回クレイトスディフェンス社は無人機用システム開発に20年以上の経験を有する5-D社を買収し経営統合、同社は退役F-4戦闘機のQF-4無人標的機への改造実績等を持つ経験豊富な企業です。
■米老朽F-15E,中古主翼へ換装
F-15戦闘機は使い勝手の良い戦闘機で兎に角搭載量が大きいだけに運用し続けたいものですが、老朽化の問題もあります。
アメリカ空軍は老朽化したF-15E戦闘爆撃機の主翼をサウジアラビアF-15S戦闘爆撃機のものと換装することで合意しました。これはサウジアラビア空軍のF-15S戦闘爆撃機のF-15SA戦闘爆撃機への能力向上により不要となる旧型の主翼が未だ耐用年数を残している事が判明した為でありサウジアラビア政府と合意の上で廃棄予定の主翼を再生しました。
F-15についてアメリカ空軍では退役したF-15A戦闘機を交換部品として備蓄しており、F-15Eについても当初はF-15A主翼を再利用する方針でしたが、制空戦闘機型のF-15Aと戦闘爆撃型のF-15Eでは主翼構造が大きく異なり、F-15A主翼再利用の場合は大きな設計変更と多額の費用が見込まれていただけにF-15S主翼転用は、大きな朗報と云えました。
■F-35,B-61核爆弾運用能力
B-61核爆弾、これは冷戦時代の自由主義圏における標準的な自由落下式戦術核兵器です。
アメリカ空軍は11月23日、F-35A戦闘機からのB-61核爆弾運用試験を完了しました。B-61はアメリカ空軍の標準的戦術核爆弾で可変装置により爆発威力を設定可能で、今回試験されたのは最新型のB-16-12核爆弾の核爆発能力を省いた不活性型です。試験はネバダ州トノバー試験場にて実施され、超音速飛行中に高度3000m以上から投下したとのこと。
F-35AにはB-61核爆弾運用能力が求められていましたが超音速飛行時の投下試験は今回が初めて、B-61は設計こそ1966年と旧式ですが改良が続けられており可変装置により0.3ktから最大340ktまで爆発を調整可能、F-35戦闘機はステルス戦闘機で今回の試験は兵装庫から投下している事から、F-35の潜在的能力を改めて誇示する実験ともいえるでしょう。
■ロシア,Su-35S取得
Su-35,F-15戦闘機を大きく意識して開発されたSu-27の改良に改良を重ねた最新型です。
Su-35S戦闘機50機がロステック社系列のスホーイ社よりロシア空軍へ納入を完了したとのこと。コムソモリスクオンアムール航空工場にて3機のSu-35Sが完成し、この機体の納入を受けてロシア空軍への第4.5世代戦闘機後期型と位置づけられる機体の納入事業が一段落したとしています。第4.5世代戦闘機後期型とは第四世代機Su-27最新型です。
Su-35S戦闘機50機の導入計画はロシア軍の2011年から2020年に掛けての長期国防整備計画での一環であり、第五世代戦闘機のSu-57量産遅れを補完、2008年に発生したグルジア紛争を契機として防衛力の旧式化が痛感された事を受けてのものです。今回納入された最後の3機はコムソモリスクオンアムール飛行場の第23戦闘飛行聯隊に所属するもよう。
■ウクライナ,MiG-29MU1改修
MiG-29はF-16を意識して開発された機体ですが、こちらも戦術戦闘機として盛んに輸出が行われ量産数が多い分改修が各国で行われています。
ウクライナ空軍は12月初旬にMiG-29戦闘機近代化改修型MiG-29MU1の受領を開始したとのこと。これはウクライナ国防相が発表したもので改良型はMiG-29MU1は空軍第40戦術航空団へ配備されるとのこと。改修部分はレーダー及びセントラルコンピュータであり、これにはウクライナ企業と共にイスラエルのエルビット社が技術提供を行ったようだ。
MiG-29MU1の改修へエルビット社はN019-19レーダーや電子妨害システムの提供を行っており、これはウクライナ空軍に先に納入されているMiG-29MU2よりも能力が強化されているともされる。ロシアとの緊張が続くウクライナではロシア軍の先進的な防空システムに対処能力のある戦闘機を必要としており、エルビット社の提供システムは此れに当る。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
防衛情報、今回は各国の早期警戒機と早期警戒管制機最新情報と輸送機や戦闘機改修に関する12の話題をお伝えしましょう。
フランス海軍は現在空母艦載機として運用するE-2C早期警戒機の後継としてE-2D早期警戒機のランビエ航空基地への配備方針を発表しました。これは11月21日にフランス海軍ニュースが発表したもので、今年七月に締結した7億ドルに上るE-2D早期警戒機3機及び予備エンジンや通信機器及び整備器材の調達計画が順調に進んでいる事を示します。
E-2D早期警戒機3機はフランス防衛企業SIAéによりフランス軍規格の通信機材や戦闘システムの適合化が行われる方針で、これにより独自のアップデートも可能とする方針です。3機のE-2D早期警戒機はフランス海軍唯一の航空母艦、原子力空母シャルルドゴールに配備される計画で、要撃管制など一連の能力は現在のE-2Cよりも大幅に向上するようです。
■英空軍E-7早期警戒機配備基地
日本では早期警戒管制機は当面E-767が維持されますが同じAPY-2を搭載するE-3はイギリスでは後継機が決定しています。
イギリス空軍はE-3セントリー早期警戒管制機の後継機として導入するE-7ウェッジテイル早期警戒機の運用拠点をロシーマス基地とする方針を決定しました。E-7はボーイン737 AEW&Cとして開発され、オーストラリア空軍やトルコ空軍、韓国空軍が運用している機体でロシーマス基地はイギリスがP-8Aポセイドン哨戒機を配備している基地です。
E-7ウェッジテイル早期警戒機はボーイング737-700を原型とした早期警戒管制機で、航続距離は5200km、カヌー型のMESA多機能電子走査アレイレーダーを搭載、180機を同時追尾し24機を迎撃管制可能となっています。最大探知距離は850kmに上り、370kmの距離で中高度を飛行する戦闘機等を捕捉可能で能力向上により性能は向上させられます。
イギリス空軍は2019年にE-7ウェッジテイルを5機総額19億6000万ドルで発注しました。今回配備されるロシーマス基地はイギリス北部に在ると共に前述の通りP-8Aポセイドン哨戒機が配備されている基地です。E-7もP-8Aもともに原型機はボーイング737であることから、イギリス空軍は保有するボーイング737系統の集約を図っているのでしょう。
■E-3早期警戒管制機能力向上
原型となるKC-135/ボーイング707の老朽化は進むもののE-3早期警戒管制機そのものは今後も能力向上が進みます。
ノースロップグラマン社はE-3早期警戒管制機の搭載するAPY-2レーダーの能力維持性能向上改修について1億6365万0543ドルの契約を結びました。これは2028年までに渡る長期契約で、メリーランド州リンシカムハイツのノースロップグラマン工場で実施、これによりE-3早期警戒管制機は2030年代以降も第一線での運用が継続される事となります。
E-3早期警戒管制機のなかでも今回の改修はRSIP近代化改修対応機に対し実施され、E-3ではアメリカ空軍に33機とNATO共同運用機17機及びイギリス空軍に7機とフランス空軍4機がその対象となっています、このRSIP改修は2005年までに第一段階の改修は完了、E-3ではありませんが、この他に航空自衛隊運用のE-767のAPY-2にも施されています。
■B-1爆撃機JASSM搭載試験
日本でもスタンドオフ兵器として長射程のミサイル導入が開始されますが、さて本場アメリカでは。
アメリカ空軍は2020年11月よりB-1B戦略爆撃機によるAGM-158JASSMミサイル機外搭載試験を開始しました。これはエドワーズ空軍基地の空軍第419飛行開発実験飛行隊が実施しました。B-1B爆撃機は爆弾倉にAGM-158JASSMまたはAGM-158C長距離対艦ミサイルを24発搭載可能で、ステルス性を有するB-1Bは機外搭載を必須としません。
B-1B爆撃機は現在新しくAN / AAQ-33スナイパー照準ポッドの搭載を開始しており、AGM-158JASSMを搭載するのは、将来的に爆弾倉に収まらない規模の大型である極超音速滑空兵器搭載への実証実験といえる可能性があります。アメリカ空軍はロシアや中国がすでに実用段階としている極超音速滑空兵器へ対抗可能な新型装備の開発を急いでいます。
■ハンガリーKC390正式契約
KC390はC-130輸送機を双発ジェット化したようなブラジル設計の最新型輸送機です。
ハンガリー政府は11月17日、ブラジル製エンブラエルKC-390戦術輸送機2機の調達について契約が成立した。KC-390は双発ジェット輸送機であるが、その名の通り空中給油機としても機能する多機能輸送機である。欧州ではスウェーデンがJAS-39グリペン戦闘機のブラジル採用をバーターとしてKC-390を採用しており、欧州で二番目の採用国である。
ハンガリー空軍へのKC-390納入は2023年から2024年にかけて実施される計画で、ハンガリー空軍では戦闘機としてJAS-39を採用しており、エンブラエル社では自国空軍がJAS-39を採用した事を受け、その相互運用性能を重視していることから、ハンガリー軍への採用へ好影響を及ぼした事が推察される。契約金額等については明らかにされていない。
KC-390は27tの貨物を搭載可能、人員80名やハンヴィークラスの戦術車輛3両、若しくはLAV-3クラスの装甲車1両空輸可能、13tの貨物を搭載した場合の航続距離は4815kmであり最大の27tを搭載した場合でも2593kmの飛行が可能、巡航速度はマッハ0.8に達し、これは国際航空路線において旅客機や旅客機派生の貨物機用航空航路を飛行可能だ。
■ブラジルKC-390四号機取得
KC-390は日本のC-2輸送機と開発時期が重なりよく比較されたものですが、旅客機程順調ではないのかもしれません。
ブラジル空軍は同国のエンブラエル社が製造するKC-390輸送機の四号機を12月に受領しました、ブラジル空軍は28機のKC-390を導入する計画で、四号機は1stGTT第一輸送航空群へ配備されます。KC-390はアメリカのC-130戦術輸送機と同程度の輸送能力を有していますが、ジェット輸送機として旅客機並の巡航速度を有すると共に空中給油が可能だ。
KC-390はブラジル空軍の次期戦闘機へのスウェーデン製JAS-39戦闘機採用へのバーターとしてスウェーデン空軍へも配備され、またハンガリー空軍への採用も決定しています。KCと有る通り、空中給油機への転用が可能であり、またブラジル空軍は現在ブラジル国内に蔓延する新型コロナウィルスCOVID-19への医療資材輸送にもKC-390を運用中です。
■ベルギーA-400M取得
エアバスA-400M輸送機は輸送能力と初飛行の次期が日本のC-2とよく比較されたものです。
ベルギー空軍は導入計画が進むA-400M輸送機の2020年代初号機納入が無事果たされた事を発表しました。二号機引渡は2021年です。ベルギー空軍への納入はスペインセビリアのA-400M最終組立工場にて引渡を受け、ベルギー空軍メルスブローク空軍基地へ到着、ベルギー・ルクセンブルク共同運用部隊である第15輸送飛行隊での運用が開始されました。
A-400M納入はCOVID-19感染拡大により遅れていました。A-400Mのベルギー空軍における運用は変則的です、第15輸送飛行隊の定数は8機ですが、ベルギー空軍の導入予定は7機、そしてルクセンブルク空軍の導入予定は1機です。これは小国であるルクセンブルクが共同運用へ参画というかたちでのNATO全体への協力を企図するものといえましょう。
■米XQ-58開発へ業界再編
XQ-58無人機の開発へファントム無人機化を手がけた防衛企業が参加することとなるもよう。
XQ-58無人航空機という次世代ステルス無人機について大きな業界再編が行われその実現性が大きく前進しました。XQ-58は自律離着陸が可能な滞空型ステルス無人航空機で、極めて高い実用性を秘めながら取得費用を400万ドル前後という極めて安価な水準に収めている、巡航ミサイルの延長線上にあるようなゲームチェンジャーとなりうる機体です。
XQ-58はカリフォルニア州サンディエゴにある無人機大手のクレイトスディフェンス社にが開発している機体で無人僚機としても単独での任務にも対応可能です。今回クレイトスディフェンス社は無人機用システム開発に20年以上の経験を有する5-D社を買収し経営統合、同社は退役F-4戦闘機のQF-4無人標的機への改造実績等を持つ経験豊富な企業です。
■米老朽F-15E,中古主翼へ換装
F-15戦闘機は使い勝手の良い戦闘機で兎に角搭載量が大きいだけに運用し続けたいものですが、老朽化の問題もあります。
アメリカ空軍は老朽化したF-15E戦闘爆撃機の主翼をサウジアラビアF-15S戦闘爆撃機のものと換装することで合意しました。これはサウジアラビア空軍のF-15S戦闘爆撃機のF-15SA戦闘爆撃機への能力向上により不要となる旧型の主翼が未だ耐用年数を残している事が判明した為でありサウジアラビア政府と合意の上で廃棄予定の主翼を再生しました。
F-15についてアメリカ空軍では退役したF-15A戦闘機を交換部品として備蓄しており、F-15Eについても当初はF-15A主翼を再利用する方針でしたが、制空戦闘機型のF-15Aと戦闘爆撃型のF-15Eでは主翼構造が大きく異なり、F-15A主翼再利用の場合は大きな設計変更と多額の費用が見込まれていただけにF-15S主翼転用は、大きな朗報と云えました。
■F-35,B-61核爆弾運用能力
B-61核爆弾、これは冷戦時代の自由主義圏における標準的な自由落下式戦術核兵器です。
アメリカ空軍は11月23日、F-35A戦闘機からのB-61核爆弾運用試験を完了しました。B-61はアメリカ空軍の標準的戦術核爆弾で可変装置により爆発威力を設定可能で、今回試験されたのは最新型のB-16-12核爆弾の核爆発能力を省いた不活性型です。試験はネバダ州トノバー試験場にて実施され、超音速飛行中に高度3000m以上から投下したとのこと。
F-35AにはB-61核爆弾運用能力が求められていましたが超音速飛行時の投下試験は今回が初めて、B-61は設計こそ1966年と旧式ですが改良が続けられており可変装置により0.3ktから最大340ktまで爆発を調整可能、F-35戦闘機はステルス戦闘機で今回の試験は兵装庫から投下している事から、F-35の潜在的能力を改めて誇示する実験ともいえるでしょう。
■ロシア,Su-35S取得
Su-35,F-15戦闘機を大きく意識して開発されたSu-27の改良に改良を重ねた最新型です。
Su-35S戦闘機50機がロステック社系列のスホーイ社よりロシア空軍へ納入を完了したとのこと。コムソモリスクオンアムール航空工場にて3機のSu-35Sが完成し、この機体の納入を受けてロシア空軍への第4.5世代戦闘機後期型と位置づけられる機体の納入事業が一段落したとしています。第4.5世代戦闘機後期型とは第四世代機Su-27最新型です。
Su-35S戦闘機50機の導入計画はロシア軍の2011年から2020年に掛けての長期国防整備計画での一環であり、第五世代戦闘機のSu-57量産遅れを補完、2008年に発生したグルジア紛争を契機として防衛力の旧式化が痛感された事を受けてのものです。今回納入された最後の3機はコムソモリスクオンアムール飛行場の第23戦闘飛行聯隊に所属するもよう。
■ウクライナ,MiG-29MU1改修
MiG-29はF-16を意識して開発された機体ですが、こちらも戦術戦闘機として盛んに輸出が行われ量産数が多い分改修が各国で行われています。
ウクライナ空軍は12月初旬にMiG-29戦闘機近代化改修型MiG-29MU1の受領を開始したとのこと。これはウクライナ国防相が発表したもので改良型はMiG-29MU1は空軍第40戦術航空団へ配備されるとのこと。改修部分はレーダー及びセントラルコンピュータであり、これにはウクライナ企業と共にイスラエルのエルビット社が技術提供を行ったようだ。
MiG-29MU1の改修へエルビット社はN019-19レーダーや電子妨害システムの提供を行っており、これはウクライナ空軍に先に納入されているMiG-29MU2よりも能力が強化されているともされる。ロシアとの緊張が続くウクライナではロシア軍の先進的な防空システムに対処能力のある戦闘機を必要としており、エルビット社の提供システムは此れに当る。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)