■確認不徹底の要因に挙げるもの
2021年2月8日に足摺岬南方40kmの海上で自衛隊潜水艦と大型商船の衝突事故が発生しました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1d/14/40f5911b8c0a7e6fe49a661bca5bad2c.jpg)
高知沖での潜水艦そうりゅう衝突事故、発生は衝撃的でした。衝突進路が5m外れていればセイルそのものが圧潰していた危険もありました。原因は何か、訓練不足であれば潜水艦乗員の交代要員を増やしてアメリカの潜水艦のように複数クルー制を採る必要がありますし、設計の問題であればドイツ潜水艦のように大型化を含め次の潜水艦に反映すべきです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/70/f9/ac5322635b8588b53676d753aaed6923.jpg)
潜水艦の衝突事故。考えてみれば海上自衛隊では1988年の潜水艦なだしお衝突事故以来の衝突事故、32年ぶりの事故となりますので原因は何か、という事を考えざるを得ないのですが、ソナー確認不徹底の可能性がたかい。世界を見ますと潜水艦と商船の衝突事故は案外発生しているものでして、2005年1月にアメリカ原潜サンフランシスコが海底に衝突しています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7c/89/2e45cdd0887facc012c1f5b4f2e24e4f.jpg)
サンフランシスコ海底衝突事故は推進150mを30ノット以上で衝突した為にバラストタンク破裂、ソナードーム破壊という大被害となりましたが、何とか修理し2017年まで現役でした。イギリス海軍も2002年に原潜トラファルガーがスコットランド沖で海底激突する事故を発生させていましたが、イギリス国防省は2008年まで事故を発表していませんでした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/31/21/de9902ef089258f9061f577b1959619d.jpg)
イギリスとアメリカに続いて、ドイツ海軍でも2017年にノルウェー沿岸でU-35が座礁事故を発生させていまして、カナダ海軍も2004年にイギリスより取得したアプホルダー級潜水艦シクーティミが火災による浸水事故を発生させています。2004年の中国海軍遠征61号ガス事故やアルゼンチンのサンファン沈没事故、これは日本だけの問題ではありません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/b1/fb5917e15d73949a0a9e3ee2344bbe39.jpg)
ただ、潜水艦の事故というものは気持ちの良いものではありません。今回は幸い、潜舵破損と通信装置破損に被害は留まり、人的被害が負傷者三名に収められ、また激突した相手が大型商船であった為にこちらも彼我が無かったのは僥倖ですが、原因を放置する事があれば、次は大きな事故となる可能性も否定できません。すると、再発防止を祈念したい。
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事故は注意力散漫が原因です。恐らくアクティヴソナーを用いて周辺海域を捜索する際、海水温度層や塩分濃度層を考えて複数回ソナー探索を行うべきところを、一回捜索した後に浮上航行訓練を行ったか、複数回捜索したあと時間を経て浮上したのでしょう。その注意力散漫の背景は、恐らく居住性等からくるストレスか、勤務増大故のストレスが、と。
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潜望鏡で確認しなかったのか、と思われるかもしれませんが、今回の事故においては的外れです、潜望鏡は13m級のものを装着していますが、衝突した商船オーシャンアルテミスは載貨重量9万tといいますので吃水は15m近くなり、潜望鏡で確認できる水深では潜舵に衝突し得るほどに大きな艦なのですね。するとやはりソナーで確認せざるを得ません。
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そうりゅう、海上自衛隊初のAIP推進方式潜水艦です。AIP推進とは潜水艦が浮上せず水中で発電する方式を示し、燃料電池やスターリング機関、海水化学反応方式等が開発されています。浮上すればスノーケルはレーダーで簡単に発見される。しかし、私たちは気づかない事ですが海中での発電は簡単ではありません、何故ならば海中は空気が無い為です。
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あさしお。海上自衛隊は潜水艦はるしお型あさしお練習潜水艦に転籍の上、船体を延長しAIP区間を新たに追加、その上でAIP機関の実艦研究を進め、そうりゅう型潜水艦は1970年代から海上自衛隊が川崎重工などと共に研究を重ねてきたAIP潜水艦が2000年代に入り、始めて実用化される。経済大国とは言え防衛費は限られ、中でも研究はは更に少ない。
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おやしお型潜水艦の設計を基本として建造された潜水艦そうりゅう型、しかし元々狭い艦内にAIP機関を圧し込んだ事で元々居住性が悪化しているのですね。おやしお型は船体が前から5区画に分かれていますが、そうりゅう、は6区画、しかし船体全長は2mしか延伸していません。これは基準排水量が3000tを超えない為という財政上の配慮とされます。
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あさしおAIP区画は11mでした。はるしお型潜水艦に11mのAIP区画を挿入しましたので、当たり前ですが全長は11m延長していまして、あさしお全長は海上自衛隊最長のものとなっています。そして当然ですが船体居住区を大きく設計変更せず11m延長しているだけですので良好な居住性は維持されているのですね。この点は心理的な影響がないのか。
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しかし、各国潜水艦と比較しますと、ドイツの206型潜水艦のように食堂に椅子さえない立ち食い潜水艦が存在しますし、アメリカのロスアンゼルス級攻撃型原潜は全員分の寝台が無く当直で空いた寝台に後退した乗員が休憩する人肌の寝台という状況で、実際、オーストラリア海軍等が検討し乗艦した際でも、そうりゅう型居住性は問題となっていません。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
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(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
2021年2月8日に足摺岬南方40kmの海上で自衛隊潜水艦と大型商船の衝突事故が発生しました。
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高知沖での潜水艦そうりゅう衝突事故、発生は衝撃的でした。衝突進路が5m外れていればセイルそのものが圧潰していた危険もありました。原因は何か、訓練不足であれば潜水艦乗員の交代要員を増やしてアメリカの潜水艦のように複数クルー制を採る必要がありますし、設計の問題であればドイツ潜水艦のように大型化を含め次の潜水艦に反映すべきです。
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潜水艦の衝突事故。考えてみれば海上自衛隊では1988年の潜水艦なだしお衝突事故以来の衝突事故、32年ぶりの事故となりますので原因は何か、という事を考えざるを得ないのですが、ソナー確認不徹底の可能性がたかい。世界を見ますと潜水艦と商船の衝突事故は案外発生しているものでして、2005年1月にアメリカ原潜サンフランシスコが海底に衝突しています。
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サンフランシスコ海底衝突事故は推進150mを30ノット以上で衝突した為にバラストタンク破裂、ソナードーム破壊という大被害となりましたが、何とか修理し2017年まで現役でした。イギリス海軍も2002年に原潜トラファルガーがスコットランド沖で海底激突する事故を発生させていましたが、イギリス国防省は2008年まで事故を発表していませんでした。
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イギリスとアメリカに続いて、ドイツ海軍でも2017年にノルウェー沿岸でU-35が座礁事故を発生させていまして、カナダ海軍も2004年にイギリスより取得したアプホルダー級潜水艦シクーティミが火災による浸水事故を発生させています。2004年の中国海軍遠征61号ガス事故やアルゼンチンのサンファン沈没事故、これは日本だけの問題ではありません。
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ただ、潜水艦の事故というものは気持ちの良いものではありません。今回は幸い、潜舵破損と通信装置破損に被害は留まり、人的被害が負傷者三名に収められ、また激突した相手が大型商船であった為にこちらも彼我が無かったのは僥倖ですが、原因を放置する事があれば、次は大きな事故となる可能性も否定できません。すると、再発防止を祈念したい。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/03/76/f7f2f8057737513c865cf26e48af3895.jpg)
事故は注意力散漫が原因です。恐らくアクティヴソナーを用いて周辺海域を捜索する際、海水温度層や塩分濃度層を考えて複数回ソナー探索を行うべきところを、一回捜索した後に浮上航行訓練を行ったか、複数回捜索したあと時間を経て浮上したのでしょう。その注意力散漫の背景は、恐らく居住性等からくるストレスか、勤務増大故のストレスが、と。
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潜望鏡で確認しなかったのか、と思われるかもしれませんが、今回の事故においては的外れです、潜望鏡は13m級のものを装着していますが、衝突した商船オーシャンアルテミスは載貨重量9万tといいますので吃水は15m近くなり、潜望鏡で確認できる水深では潜舵に衝突し得るほどに大きな艦なのですね。するとやはりソナーで確認せざるを得ません。
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そうりゅう、海上自衛隊初のAIP推進方式潜水艦です。AIP推進とは潜水艦が浮上せず水中で発電する方式を示し、燃料電池やスターリング機関、海水化学反応方式等が開発されています。浮上すればスノーケルはレーダーで簡単に発見される。しかし、私たちは気づかない事ですが海中での発電は簡単ではありません、何故ならば海中は空気が無い為です。
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あさしお。海上自衛隊は潜水艦はるしお型あさしお練習潜水艦に転籍の上、船体を延長しAIP区間を新たに追加、その上でAIP機関の実艦研究を進め、そうりゅう型潜水艦は1970年代から海上自衛隊が川崎重工などと共に研究を重ねてきたAIP潜水艦が2000年代に入り、始めて実用化される。経済大国とは言え防衛費は限られ、中でも研究はは更に少ない。
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おやしお型潜水艦の設計を基本として建造された潜水艦そうりゅう型、しかし元々狭い艦内にAIP機関を圧し込んだ事で元々居住性が悪化しているのですね。おやしお型は船体が前から5区画に分かれていますが、そうりゅう、は6区画、しかし船体全長は2mしか延伸していません。これは基準排水量が3000tを超えない為という財政上の配慮とされます。
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あさしおAIP区画は11mでした。はるしお型潜水艦に11mのAIP区画を挿入しましたので、当たり前ですが全長は11m延長していまして、あさしお全長は海上自衛隊最長のものとなっています。そして当然ですが船体居住区を大きく設計変更せず11m延長しているだけですので良好な居住性は維持されているのですね。この点は心理的な影響がないのか。
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しかし、各国潜水艦と比較しますと、ドイツの206型潜水艦のように食堂に椅子さえない立ち食い潜水艦が存在しますし、アメリカのロスアンゼルス級攻撃型原潜は全員分の寝台が無く当直で空いた寝台に後退した乗員が休憩する人肌の寝台という状況で、実際、オーストラリア海軍等が検討し乗艦した際でも、そうりゅう型居住性は問題となっていません。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)