北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

のしろ(FFM-3 NOSHIRO)もがみ型護衛艦三番艦命名・進水式を三菱重工長崎造船所で挙行

2021-06-22 20:21:37 | 先端軍事テクノロジー
■ちくご型護衛艦11番艦継ぐ
 長崎にて新しい護衛艦が進水式を迎えました、中々に長崎まで遠出できない最中ですがその護衛艦の概要を視てみましょう。

 もがみ型護衛艦3番艦が三菱重工長崎造船所にて本日進水式を迎えました。新護衛艦の艦名は護衛艦のしろ、旧海軍の阿賀野型軽巡洋艦能代を継ぐと共に大量建造され戦後の日本沿岸防衛に大きな功績をのこした護衛艦ちくご型護衛艦11番艦のしろ、を継ぐ護衛艦の誕生です。昨年に先行して二番艦くまの、が進水式、気付けば新型艦も三番艦命名ですね。

 ちくご型護衛艦の名を継いだ護衛艦のしろ、冷戦時代に大量生産された護衛艦の艦名を継承する、これは先行して建造されている護衛艦くまの、も先代は護衛艦ちくご型の艦名でして、海上自衛隊の新しい護衛艦もがみ型量産への意気込み、と受け取る事が出来るかもしれません。もがみ型は現在6番艦まで予算認可となっており、当面は22隻を建造します。

 のしろ。どのような護衛艦かと云いますと、対水上戦闘と対潜戦闘を担うと共に機雷掃討による航路防衛や水陸両用作戦支援を通じての我が国島嶼部防衛、まさに多用途に用いられ、更に将来的には長距離防空能力を付与させ、護衛艦隊に配備される艦隊護衛艦に伍する運用が見込まれています。そして幾つかの点で画期的な護衛艦として計画されています。

 画期的な点は幾つもあるのですが、コンパクト護衛艦。計画当時こう呼ばれ、小型艦と勘違いする方が多いようですが、当初は基準排水量2000t規模の船体をウォータージェットで40ノット高速航行するアメリカのLCS沿海域戦闘艦のような構想がありました、コンパクトと云うのはその名残、実際には、はつゆき型、あさぎり型を上回る事となりました。

 もがみ型護衛艦は比較的大型の水上戦闘艦です、満載排水量は5500t、基準排水量でも3900tです。日本では世界最大の駆逐艦こと満載排水量27000tの護衛艦いずも型など怪物級の護衛艦が並んでいますが、ドイツ最大級のザクセン級フリゲイトが5670t、フランス最新鋭のアキテーヌ級が6100t、イギリスが計画中の31型フリゲイトが5700t、つまりは大きい。

 FFM,もがみ型護衛艦は艦隊駆逐艦を示すDDでも護衛駆逐艦を示すDEでもなく、フリゲイトを示すFFにMという機雷戦とも多用途とも受け止められる区分となっています。それもその筈、配備部隊は護衛艦隊でも地方隊警備隊でもなく、掃海隊群へ大量配備される事となっています。そして部分的に掃海艇の機雷掃海任務を置換える護衛艦となるもよう。

 オーガニック方式、水上戦闘艦にUUV水中ロボット等を搭載し機雷掃海に充てる運用の用語です。FFMはこの方式で機雷探知装置や機雷処分弾薬等を搭載するべく、多目的区画を採用しています。もっとも水上打撃力も相応に高く、17式艦対艦ミサイルと127mm艦砲、SEARAM個艦防空ミサイル等を搭載、後日搭載で開発中のA-SAM艦対空ミサイルを積む。

 90名で運用可能、もがみ型は自動化を大幅に進めた事でも知られます。乗員数は90名ですので一直あたり30名で運用できる事を意味し、これは護衛艦あさぎり型の定員220名と比較し四割程度です。少子高齢化とともに財政再建を名目に自衛官の曹昇任枠限定と中国脅威増大を受け実任務増大、ますます厳しくなる勤務環境において省力化は重大要素の一つ。

 あさぎり型護衛艦8隻の乗員数で、もがみ型であれば20隻を運用できる事となります。そして海上自衛隊では複数クルー制を、もがみ型から採用する計画で、これは護衛隊を構成する3隻の護衛艦に4隻分の乗員を確保し交代させる新方式を導入します。個人的には乗り心地の良い護衛艦を建造し、曹候補士制度を復活させ若者を大事にした方が良いと思う。

 安価に収めている。これも特色の一つでしょうか。建造費は2隻で1000億円程度、毎年2隻建造を念頭に置いています、イージスシステム搭載まや型ミサイル護衛艦の三分の一、1990年代に9隻が量産された護衛艦むらさめ型が650億円でしたので、デフレの影響を差し引いたとしても、ここまで建造費を抑える事が出来たのはまさに日本の造船能力の強み。

 多用途に活躍し、乗員を大幅に縮小し、建造費も安価である、これが新しいFFMの特色と云えます。そして、例えば、搭載する多機能レーダーOPY-2はP-1哨戒機用に開発されたHPS-106レーダーの発展型である、などなどこれまでに日本が国産開発した各種装備技術を応用する事で、安価に抑えている、こうした背景も理解しておくべきなのでしょうか。

 のしろ、続いて岡山でも間もなく4番艦が命名式と進水式を迎える事となります。なにしろ22隻の量産計画、中々に日本の財政状況は厳しいですが6番艦まで予算が認可され、7番艦と8番艦の概算要求が数週間以内に提出されると考えられています。この整備が完了すれば、いよいよ護衛艦隊用汎用護衛艦の更新も始り、防衛力整備は転換点を迎えています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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コメント (2)
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