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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】AH-1Z沖縄防衛訓練とMi-28NM能力向上型,スリオン戦闘型とT-129輸出開始

2021-06-28 20:11:39 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 今回は戦闘ヘリコプター特集です。わが国もAH-1S後継機を遠からず再検討する時機が来ており参考となる情報を幾つか見てみましょう。

 アメリカ海兵隊は日本の沖縄本島において第267海兵攻撃ヘリコプター飛行隊“スティンガー”による島嶼部防衛評価訓練を実施しました。これは2021年4月に実施されたミッションリハーサル演習の一環として実施され、第3海兵遠征軍担当管区の島嶼部が敵対国家により占領され孤立化した際の海兵回転翼航空部隊による反撃要領を検証したものです。

 第267海兵攻撃ヘリコプター飛行隊はAH-1Zバイパー攻撃ヘリコプターとUH-1Yヴェノム軽輸送ヘリコプターを装備し、普天間飛行場へ前方展開しています。訓練では島尻郡渡名喜村入砂島が敵に占領されたと想定、沖縄本島近くの伊江島ヘリパッドを想定前進基地とし、伊江島から反復攻撃により敵指揮所や装甲車両等を無力化する能力を検証しました。
■スリオン戦闘支援ヘリ
 日本のAH-1S後継とUH-1J後継の混迷に対して開発企業を国策で決定し協力企業を海外から募る方式で韓国は成功しています。

 韓国防衛事業庁は韓国国産ヘリコプタースリオンの戦闘支援ヘリコプター型を新たに開発する方針を発表した。これは防衛事業庁が4月26日に公式発表したもので、韓国海兵隊が要求する攻撃ヘリコプター導入計画の選定結果だ。韓国海兵隊は独自の航空戦力を模索中であり、各国攻撃ヘリコプターを候補とし、一年間に及ぶ選定調査を実施していた。

 スリオン戦闘支援ヘリコプターは現在韓国軍が調達するスリオンヘリコプターへスタブウイングと20mm機関砲を追加するもので、スタブウイングには射程6km程度の対戦車ミサイル8発とハイドラ70ロケットポッド、及び空対空ミサイル等を搭載、一方で機体形状をは現状の多用途ヘリコプター型を維持し、タンデム構造等の本格的な攻撃型とはしない。

 韓国海兵隊戦闘支援ヘリコプターへはベルテキストロン社のAH-1Zバイパー、ボーイング社のAH-64Eアパッチガーディアン、トルコ航空宇宙会社のT-129マングスタ、シコルスキー社のUH-60武装型、等も候補とされているが専用型の攻撃ヘリコプターは高く、断念された。開発調達費用は14億4000万ドルで最大24機を調達、2031年に配備を目指す。
■Z-19攻撃ヘリ長距離射撃試験
 自衛隊には攻撃ヘリコプター懐疑論があるようですが結局のところヘリコプターに自己完結装備をシステムとする選択肢への懐疑はヘリコプター懐疑論に繋がる無意味なものとも思えます。

 中国人民解放軍は無人航空機とZ-19攻撃ヘリコプターを連携させた長距離射撃試験を成功させました。これは第71集団軍隷下の空中機動旅団が黄海海上において実施したもので、無人機が先行して海上目標を索敵、続いて発進したZ-19攻撃ヘリコプターが視程外からミサイルを発射させ命中させたとのこと。Z-19はタンデム型の中国製攻撃ヘリコプターだ。

 Z-19攻撃ヘリコプターによる長距離射撃試験の背景には、現在中国軍は075型強襲揚陸艦の量産を進めており、これは多数のヘリコプターを搭載可能、更に水陸両用作戦能力を進める中国は空中機動旅団の増強を進めており、海上での作戦能力強化を示す一例といえよう。なお、Z-19攻撃ヘリコプターがどのていどの距離の目標を攻撃したのかは不開示だ。
■フィリピンのT-129輸入計画
 A-129マングスタ攻撃ヘリコプターは偵察ヘリコプターとして考えるならば割切った設計は評価でき、日本のOH-1もこの方向で発展を模索すべきだったようにも。

 フィリピンはトルコのTAI社よりT-129攻撃ヘリコプター6機の導入計画を進めています。T-129攻撃ヘリコプターはイタリアのアグスタ社が開発したA-129マングスタ攻撃ヘリコプターのトルコライセンス生産型でT-129として採用、エンジン出力を強力なアメリカ製とし一部電子機器をトルコ製に改めました、偵察及び対戦車攻撃を任務としています。

 A-129の系譜であるT-129はタンデム複座型の構造を採用し全長13.45mで最大離陸重量は5000kg、最高速度は278km/hと巡航速度は269km/h、航続距離は561kmでフェリー航続距離は1000kmという敢えて平均的な構造として費用を抑えています。トルコではAH-1W攻撃ヘリコプターの後継として採用、AH-1Sと同じ20mm機関砲や対戦車ミサイルを積む。

 フィリピン軍は長年放置されてきた国軍近代化に全力で取り組んでおり、当面は6機を調達、最大で4機を追加調達する構想です。T-129はヘルファイアミサイルやTOWミサイル、スパイクERミサイル等の運用に対応し、ハイドラ70ロケット弾も搭載します。エンジンはアメリカ製LHTEC-T-800-4A双発、こちらもアメリカ国務省が輸出を許可しています。
■Mi-28NMナイトハンター
 Mi-28NMナイトハンター、ロシアがアパッチに対抗すべく開発している攻撃ヘリコプターです。

 ロシア国防省はMi-28ハボック攻撃ヘリコプターについて現在運用中の機体を最新型のMi-28NM型へ近代化改修する方針を発表、5月19日付タス通信が報じました。カモフ製Mi-28NMはナイトハンターの愛称で知られ、次世代レーダーシステムを搭載するとともに無人航空機との連携、オプトエレクトロニクスターゲットシステムに統合化しています。

 Mi-28NMはH-025レーダーステーションを追加しエンジンをKlimovTV3-117VMAからVK-2500Pへ換装、ミサイルも射程の大きな9M127-1Ataka-VMに対応しています。Mi-28はMi-24ハインドの後継として開発され、最大離陸重量は11.5tと攻撃ヘリコプターの中では破格に大きく2.3tの兵装を搭載、2A42/30mm機関砲始め強力な武装で知られています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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