■週報:世界の防衛,最新11論点
今回は海軍艦艇や潜水艦などの話題について論点を集めてみました。先ずはイージス艦まや型よりも新しいイージス艦のレーダーについて。
アメリカ海軍が導入する初のSPY-6レーダー搭載イージス艦ジャックHルーカスがSPY-6レーダーの搭載を開始したとの事、インガルス造船所にて建造が進むDDG125ジャックHルーカスはアーレイバーク級ミサイル駆逐艦最新型のフライト3最初の艦で今やイージス艦の代名詞となったアーレイバーク級ミサイル駆逐艦の75番艦となっています。
SPY-6レーダーは従来のイージスシステムを支えたSPY-1レーダーの次世代レーダーにあたり、探知距離や追尾目標数が大幅に増大しました。アーレイバーク級に搭載されるSPY-1は初のイージス艦タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦よりも小型のものでしたが、新型のSPY-6レーダー搭載によりその防空能力はタイコンデロガ級を大幅に上回る事となります。
■パキスタン輸出用054型
写真は大型の052型で代替します。なかなか中国の艦艇を日常的に日本が親善訪問で行き交うには厳しい情勢が。
パキスタン海軍が中国から取得する054型フリゲイト江凱型はVLSとAESAレーダーを搭載するとのこと。054型は中国海軍最新型のフリゲイトで満載排水量は4050t、ステルス性に配慮した設計となっています。搭載されるAESAレーダーはSR2410Cフェーズドレーダー、またVLS垂直発射装置は32セル型で、YJ-12巡航ミサイルを搭載するという。
環球時報が報じるところによればパキスタン海軍は2017年の契約で4隻の054型フリゲイトを導入する事としている他、元型潜水艦の導入、そして将来的には中国海軍が初めて導入する事となった対潜哨戒機の導入を要請しているとのこと。VLS以外にもC-803対艦ミサイルを発射筒に搭載しており、複数の巡航ミサイルを搭載する不思議な設計の艦ですね。
■中国KJ-600艦載早期警戒機
中国も空母部隊を増強するのに当ってアメリカのE-2Cのような早期警戒機の艦上型を模索しています。
中国海軍は空母艦載用に新たにKJ-600早期警戒機を開発し1月27日から試験飛行を実施中ですが、KJ-600早期警戒機について現在運用している中国海軍2隻の航空母艦からは運用できない可能性があるようです、KJ-600早期警戒機はアメリカのE-2C早期警戒機、自衛隊も多数を運用する早期警戒機とよく似た形状の双発早期警戒機となっていますが。
KJ-600早期警戒機について、現在中国海軍が運用する空母遼寧、空母山東はスキージャンプ台方式の飛行甲板を採用している為、仮に最高度のエンジンを搭載したとしても現在の飛行甲板延長とスキージャンプ台では運用は難しく、今後中国海軍が建造するカタパルト採用の航空母艦でなければKJ-600早期警戒機は運用できないという構造上の限界です。
中国海軍は空母建造を大車輪で進めていますが、現在建造中の空母はSu-27クラスの大型艦載機を運用する事は出来るものの、重装備の艦載機を運用させるカタパルトを有さず、また艦載機もMiG-29のような戦術戦闘機ではなく、スキージャンプ台に向かない制空戦闘機であることからその能力に限界があり、中でも早期警戒機を運用出来ない点は問題です。
■中国ソブレメンヌイ級近代化
中国海軍が初めて導入したまともな水上戦闘艦艇はロシア製のソブレメンヌイ級でした。
中国海軍はロシアから2000年代前半に導入したソブレメンヌイ級駆逐艦にYJ-12対艦ミサイル搭載の近代化改修を実施したとのこと。ソブレメンヌイ級駆逐艦はソ連が冷戦後期に建造した防空駆逐艦でアメリカのターターシステムに匹敵するシチル防空システムを搭載すると共に、強力なサンバーン超音速対艦ミサイルを搭載、極めて強い打撃力を有した。
ソブレメンヌイ級を導入した2000年代初頭に中国海軍はまともな艦隊防空艦を有さず、重宝されているが、サンバーン対艦ミサイルは巨大であり、また中国国産ミサイル体系の整合性に不協和音が生じていた。この為、YJ-12対艦ミサイル4連装発射装置を2基、サンバーンに代えて導入している。また中国海軍はVLS垂直発射装置の追加も検討している。
■ジョンCステニス核燃料交換
原子力空母のジョンCステニスがおおがかりな核燃料の交換工事に入ります。
アメリカ海軍は原子力空母ジョンCステニスRCOH核燃料換装工事に関して29億ドルのハンティントンインガルスインダストリーズとの契約を結んだとのこと。これはRCOH複合重整備といい、核燃料や原子炉周辺区画の核燃料交換に関する整備とともに艦内の航空機用および僚艦用燃料区画の改良や2300の区画の近代化、システム改良等をおこなう。
ハンティントンインガルスインダストリーズはこのRCOH複合重整備により原子力空母の耐用年数を50年に渡り高い水準とする事が可能とのこと。もっとも原子力空母は50年間の運用に際して全体の35%が、このRCOHにより造船所に入渠していることとなっており、今回のジョンCステニスRCOHについても29億ドルの巨費を投じ3年間造船所に留まる。
■仏次期戦略ミサイル原潜
フランスは核戦力の維持と近代化を重ねていますが北朝鮮からの遠いフランスへの核恫喝や中国の核戦力強化を考えますと安易に核軍縮に踏切れば逆に戦争を引き起こす懸念を理解しているのでしょう。
フランス海軍はルトリオンファン級戦略ミサイル原潜後継艦となる第三世代型SSBN4隻の建造計画を開始したとのこと。これはフランス国防省がSNLE-3G計画として進めているもので、フローレンス-パルリ国防相が2月19日にノルマンディーのヴァル-ド-ルイユDGAフランス国防調達庁船体形状研究センターを視察した際にてその開始を発表したもの。
ルトリオンファン級戦略ミサイル原潜はフランス核戦略の中枢を担っており、冷戦時代にはアルビオン高原に配備されたソ連西部を狙う中距離弾道ミサイルやミラージュⅣ戦略爆撃機が配備されていましたが、いずれも除籍されています。空軍や海軍のラファール戦闘機にはASMP核巡航ミサイルが配備されていますが射程は戦術用、SSBNの地位は高い。
SNLE-3G計画におけるルトリオンファン級戦略ミサイル原潜後継艦は、現行よりも大型化するものとみられ、全長は150mと水中排水量15000tを想定し2035年以降順次竣工させる方針という。フランスはドゴール政権時代から原子力潜水艦は攻撃型原潜よりも戦略ミサイル原潜を重視していますが、今回の計画は新空母建造と時期が重なることとなります。
■インドネシア潜水艦増強
先日事故が痛ましい沈没発生したインドネシアの209型ですが韓国でライセンス生産された改良型を取得しています。印象ですがインドネシアは潜水艦運用基盤が増強に追いついていない。
インドネシア海軍は3月17日、韓国よりドイツ209型韓国仕様チャンボゴ級潜水艦新造艦アルゴロの引渡を受けました。インドネシア政府は2011年に韓国との間でチャンボゴ級3隻の導入に関する11億5000万ドルの契約を締結しており、2017年に引渡一番艦となるナガパサが、2018年に二番艦となるアルダデダリがインドネシアへ引き渡されています。
チャンボゴ級潜水艦は韓国がドイツより技術移転を受けライセンス生産したもので水中排水量1290t、1993年に一番艦チャンボゴがドイツより到着、4番艦から韓国で建造、2001年までに9隻が建造され韓国海軍へ引き渡されています。インドネシア政府はチャンボゴ級について、今回まで引き渡された3隻に加え、更に3隻の導入を2019年に契約しました。
■055型駆逐艦二番艦は”ラサ”
占領地の地名をそのまま軍艦に関するというのは若干無神経なように思えます。
中国海軍は10000t級055型駆逐艦二番艦の艦名をチベットの地名であるラサとしました。055型駆逐艦は全長182mで満載排水量12000tから13000t規模とする大型の防空駆逐艦で、10000tを越える大型船体の設計は、中国海軍が建造を進める航空母艦部隊の護衛用に開発されたため、航続距離を延伸し充分なミサイルを搭載するべく船体が大型化しました。
055型駆逐艦の防空能力は比較的高く、大型と小型のAESAレーダーにLバンドレーダーとSバンドレーダーの異なる電波特製を有する周波数帯域のレーダーを搭載し、5860-2006型垂直発射装置VLSに各種ミサイル112発を搭載しており、これは数ではアメリカ海軍のタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦の122発に迫る強力なミサイル搭載数といえるでしょう。
ラサ。2番艦の、この艦名には中国による人権侵害が強く指摘されている各国のチベット地域からの亡命者団体により批判の声が上がっています。艦名については一番艦が南昌、また建造が進む5番艦が大連となっていまして、055型駆逐艦は8隻まで進水式を終え建造が進められており、遅くとも再来年までには055型駆逐艦は一定数が揃う事となります。
■台北が人民解放軍艦候補に
ここまでやられると除籍した初期のタイコンデロガ級を台湾に供与して台北という艦名を先に命名してはと思う。
055型駆逐艦将来の艦名に台湾の台北が冠せられる可能性があります、これは中国海軍が竣工させた055型駆逐艦二番艦ラサはチベット自治区の首都ラサ市の名が冠せられていますが、中国国営CCTVによれば、中国国内において2018年頃に055型駆逐艦2番艦の艦名候補を募集する機会があり、もっとも票数を獲得したのが台湾の台北であった、という。
台北の艦名が決定していれば、台湾との関係が更に明かした事は想像に難くありません。台北の他にCCTVによれば、広西チワン自治区の広西やチベット自治区のチベット等が票を集めたとしており、現在055型駆逐艦は8隻が建造中であるとともに5隻の艦名が2番艦竣工時点で未定である事からこうした艦名が国際係争に影響を及ぼす可能性もあります。
■ドイツのP-8A導入計画
P-8A哨戒機、ドイツ軍も日本製のP-1哨戒機は採用してくれませんでしたね。
ドイツ連邦軍はアメリカ製P-8Aポセイドン海洋哨戒機5機を17億7000万ドルで取得する計画で2021年3月にアメリカ国務省が対外有償供与を決定しました。ドイツ海軍では1989年よりフランスブレゲー社製アトランティック2対潜哨戒機を運用していますが、5か国に採用されたアトランティック2の生産数は28機と少なく、後継機もありません。
アトランティック2哨戒機に続いてブレゲー社はアトランティック3の開発を一応予定していましたが、冷戦終結により対潜哨戒機の需要が激減し28機で完了すると同時に後継機開発を中止しています。また近代化改修の頻度も低く陳腐化が進むと共に運用期間を24年と見込んでいた為に老朽化が進み、ドイツ連邦軍は中古のP-3C哨戒機を暫定導入しました。
アメリカ製P-8Aポセイドン海洋哨戒機5機の導入は、このP-3C哨戒機老朽化を受けてのものでした。総額17億7000万ドル契約の内訳は機体価格に加え、MIDS JTRS統合戦術無線装置5セット、AN / AAQ-2(V)I音響システム、APY-10レーダー、ALQ-240電子支援装置、CCM-701A暗号化装置、AN/ALE-47機体自衛装置等を含んだものとなっています。
■NOMARS無人艦船
アメリカ海軍は艦艇の無人化を次世代の水上戦闘システムに大胆に内部化する取り組みを進めています。
アメリカ国防総省国防高等研究計画局DARPAは将来のNOMARS無人自律航行型艦船コンセプト設計についてL3ハリステクノロジーズとの間で覚書を交わしたとのこと。NOMARS無人自律航行型艦船はセンサー等を搭載し太陽光発電を補助動力として数か月間に渡る情報収集や哨戒任務にあたる艦船を想定しており、無人機との連携も視野に置く。
NOMARS無人自律航行型艦船は今のところセンサーとしての機能を求めるとともに将来的には自航式艀のような形状とした上で無人航空機と連動し海上兵站拠点を構築する研究や、水上戦闘艦との連携に留まらない運用等も研究している。L3ハリステクノロジーズとの契約は基礎的な船体設計を目指すフェーズ1に位置付けられ、更なる発展も見込まれる。
北大路機関広報:以下は”F-16戦闘機用MS-110偵察ポッドとロシア製Su-34&Su-35戦闘機輸出交渉”として誤って二重作成した記事です。
■週報:世界の防衛,最新12論点
今週は空軍関係の話題を中心に。F-16が新型の偵察ポッドを搭載するとの事で無人偵察機全盛時代にあって戦術偵察機の必要性を垣間見た印象です。
アメリカ空軍はF-16戦闘機用MS-110広領域空中偵察システムについてレイセオン-コリンズエアロスペース社との間で契約を締結しました。MS-110広領域空中偵察システムはポッド式偵察装置でF-16戦闘機胴体下部に装着するもの、増槽型のポッドは側面及び下部にセンサー窓を配置しており、F-16戦闘機の高い戦術機動下でも作動が確保されています。
MS-110広領域空中偵察システムは、長距離目標に対する昼夜天候を問わないカラー映像及び識別用偽色着色映像をリアルタイムで収集且つ伝送可能で、平時の監視任務は勿論、有事の戦術偵察にも威力を発揮します。近年この種の任務はMQ-9,RQ-4といった無人偵察機が多用されている一方、生存性を考えた場合にアメリカ空軍の選択肢は興味深いでしょう。
■EA-18G電子攻撃機近代化
EA-18Gは電子攻撃能力の高い航空機であり電子戦専用航空機の導入を自衛隊も検討していた事を考えますと興味深い装備です。
アメリカ海軍はEA-18G電子攻撃機の近代化改修について5年間の改修契約をボーイング社との間で締結しました。EA-18G電子攻撃機は海軍が運用する唯一の電子攻撃機でありアメリカ陸海空海兵宇宙の五軍で唯一の電子攻撃機となっています。この近代化改修は電子監視能力の強化、データリンク性能の強化、次世代妨害装置ポッドの搭載が主眼という。
EA-18G電子攻撃機の近代化改修は既に3月中に初号機が納入されており海軍での評価試験から既存運用体系の適合化という段階まで進んでいるとの事で、問題が無ければ2021年6月にもフルレート生産により既存のEA-18G電子攻撃機の近代化改修が開始される予定で、海軍は今後五年間で保有するEA-18G電子攻撃機全ての改修を完了させる予定です。
■ロイヤルウイングマン最新論点
ロイヤルウイングマンは無人航空機の長所である長時間の滞空などの利点を敢えて切り捨てて有人戦闘機の支援に当る航空機です。
オーストラリア軍が開発を進めるロイヤルウイングマン無人僚機は3月2日、初飛行を実現しました。ロイヤルウイングマンはボーイング社とともに開発を進めていた無人航空機で従来の大型無人機が速度と機動性を犠牲に滞空時間と進出距離を強化していたのに対し、ロイヤルウイングマンは有人戦闘機に連携し共に飛行する機動力を持つ無人機という。
ロイヤルウイングマンは機体完成後、初飛行に向け地上でのデータリンク実験やナビゲーションシステムの試験などを経て高速滑走試験に移行、そして3月2日の初飛行に至った形です。無人僚機の任務はセンサーを搭載し索敵支援、若しくはミサイル等に追われた際の囮、また将来的には無人空中給油機等の用途が見込まれる新しい世代の無人航空機です。
無人僚機は高い機動力を以て第五世代戦闘機と協同しますが、僚機は同型機という原則から外れている事は確かです。更に機首を交換する方式というセンサー部分の性能次第で取得費用が増大する可能性はあり、また果たして超音速巡航性能を有する第五世代戦闘機に随伴できるかは未知数の部分があります、今後の展開を慎重に観る必要があるでしょう。
■インドネシアSu-35輸出交渉
Su-35,航空自衛隊のF-15戦闘機近代化改修型に匹敵する第4.5世代戦闘機です。
インドネシア政府はロシアとの間で2018年に契約されたSu-35戦闘機導入を一時停止した可能性があります。これは2月18日にインドネシア政府が発表した2024年までの国防調達計画にSu-35戦闘機が含まれていなかった点によるもので、正式な費用契約は早くとも2025年以降まで延期される事となります。この頃には仕様も変更されていましょう。
Su-35戦闘機はロシア製の第4.5世代戦闘機で優れた空戦機動性に対し稼働率を抑える分、取得費用を抑えられる事でも知られます。しかしインドネシアはロシア経済制裁を理由としてSu-35戦闘機の費用支出への難色を示しており、一方でインドネシアからは韓国とのKF-X共同開発、ラファールやF-15仮契約、またF-35希望等様々な発表が流れていました。
■イスラエルKC-46導入へ
イスラエルもKC-767の系譜に当るKC-46を導入するのですね。
イスラエル政府は2月22日、KC-46空中給油機やF-35戦闘機導入に関する90億ドルの国防支出計画を閣議決定した。イスラエル政府はアメリカ政府との間でこれら装備品とともにV-22可動翼機及びCH-53K重輸送ヘリコプターの取得交渉を進めており、F-35増強計画を加えると全体で380億ドルに達する国防計画を推進中、内90億ドルが決定へ。
KC-46空中給油輸送機はこの中でも、現在運用するKC-135空中給油機の老朽化が深刻であり、この代替が求められていた。今回の90億ドルに上る閣議決定にはKC-46空中給油輸送機2機の取得費用が含まれており、イスラエル航空宇宙軍では将来的にKC-46空中給油輸送機8機を2億4000万ドルで取得する計画だ。今後はアメリカ国務省の審査を受ける。
■サウジのSu-35国産化交渉
サウジアラビアは防衛装備国産化を進めるようですがF-15ライセンス生産ではなくロシア製装備の方へ舵を切るもよう。
サウジアラビア政府はロシア政府との間でSu-35戦闘機とS-400広域防空ミサイルシステムの導入及び技術移転の交渉を本格化させました。これはロシアのロステック社セルゲイチェメゾフ最高経営責任者がロシアテレビとのインタビューに応じたものでサウジアラビア政府は2030年までに国軍が必要とする防衛装備50%の国産化を目指す計画の一環に。
Su-35戦闘機とS-400広域防空ミサイルシステム、この導入は2019年より交渉が開始され、サウジアラビア政府は国営防衛産業SAMIにこの二つの装備の国内生産化を目指しており、現在既にカラシニコフAK-103,TOS-1A広域熱圧焼却兵器等の生産移転交渉が進められています。ただ、アメリカの反発は必至でF-35等にアクセスできなくなる懸念があります。
■エジプトはSu-35要再検討か
エジプトもSu-35を導入するようですが長期的に考えれば機体寿命の長いF-15Eを導入すればエジプト空軍の既存のF-16と整合性がとれるようおもう。
アメリカ政府アントニーブリンケン国務長官はエジプト政府が進めるロシア製Su-35戦闘機導入について懸念を表明した。エジプト政府はSu-35戦闘機の調達へ20億ドルのロシアとの契約を締結しているが、アメリカ政府はエジプト政府へ毎年10億ドルに上る国防援助や、今後エジプト軍が最新のアメリカ製兵器へアクセスできなくなる可能性を示唆した。
Su-35戦闘機については導入する事によりエジプト軍の装備するF-16戦闘機などとデータリンクを形成する為、ネットワークの一体化が損なわれると共に技術情報が自動的に連接し漏洩する懸念が指摘されている。この点について、アメリカは常に厳しく、トランプ政権時代にトルコ軍がS-400ミサイルを導入した事でF-35戦闘機供与を停止したままである。
■自衛隊,コヨーテ標的機追加
超音速無人標的機、自衛隊は訓練支援艦から複数の高速標的無人機を用いて飽和攻撃を再現し高度な訓練を行う事が可能です。
アメリカ海軍は日米両軍が運用するGQM-163Aコヨーテ超音速標的機18機について5550万ドルの契約をノースロップグラマン社との間で締結したと発表しました。18機のGQM-163Aは14機がアメリカ海軍に、3機がアメリカミサイル防衛局に、1機が海上自衛隊に納入されます。今回のGQM-163A生産は計画全体では第15次生産分となりました。
GQM-163Aコヨーテ超音速標的機、これは直超音速目標への対処を訓練する為のドローンで巡航速度はマッハ2.5以上、海面上6mの低高度を飛翔した場合の飛翔距離は90kmに達するといい、全長5m、直径は30cmとなっています。このドローンは所謂シースキミング極超音速ミサイルを再現するもので、艦隊防空の基盤構築には重要な標的用無人機です。
■ヴェトナムがアメリカ製練習機
T-6Aはプロペラ機ではありますが高出力エンジンを採用し限定的にジェット練習機の訓練を代替する事が可能です。
ヴェトナム空軍はアメリカ政府よりT-6AテキサンⅡ練習機3機導入の提案を受けたとのこと。これは現在ヴェトナム空軍の戦闘機要員養成の一部がアメリカ国内で実施されている為で、既にヴェトナム空軍には34名のアメリカ留学出身要員が操縦要員として任務に当っているとのこと。ここでT-6Aをヴェトナムが導入した場合、訓練の効率化が図れます。
T-6AテキサンⅡ練習機はスイスのピラタス社製PC-9高等練習機のアメリカ仕様で、一見初等練習機の様なターボプロップ機ではありますが、強力なエンジンを搭載しておりジェット練習機を用いる中等練習課程の一部を担えるだけの性能を有しています。アメリカヴェトナム艦の地域安全保障協力支援戦略的プログラムの一環としての提案といえましょう。
■ハンガリー,ロシア機生産
T-7練習機よりも前の基礎練習機というものが世界には在るのですが、初等練習機とモーターグライダーの中間あたりです。
ハンガリーのZrtアビエーションエンジニアリング社は3月17日、ロシアのイリューシンIl-103初等練習機のライセンス生産契約を締結したとのこと。ハンガリーはNATO加盟国で、ロシアからの兵器技術移転はクリミア併合を受けての対ロシア経済制裁へ影響する可能性がありますが、イリューシンIl-103初等練習機のハンガリー軍採用は行われません。
イリューシンIl-103初等練習機は定員4名の初等練習機で単発式、初等練習機としての用途に加えて連絡飛行や後部座席をフラット化し急患輸送にも対応するとのこと。ロシア機らしさといいますか、格納庫以外での長期保管でも機体構造が劣化しない。イリューシンは本機を民間用と強調していますが、NATO加盟国を潜在的市場と考えているのでしょう。
■アルジェリアSu-34輸出交渉
Su-35とよく似たSu-34,これは輸出が実現するならば初の事例となります、多用途性が高く対艦攻撃は勿論対潜哨戒まで可能ともいわれる。
アルジェリア空軍はロシアからSu-34戦闘爆撃機14機の導入について大きく前進したとロシア国内報道スプートニクニュースの報道がありました。アルジェリアは2020年にロシア製第五世代戦闘機Su-57戦闘機14機を20億ドルにて取得する契約を結んでおり、この延長線上に強力な打撃力を有するSu-34戦闘機の交渉も2021年内の締結を目指すという。
Su-34戦闘爆撃機はSu-27戦闘機の余裕ある機体設計を原型とし、カモノハシの嘴やアヒル顔と称される独特の並列複座式の操縦席が外見上の大きな特色となっています。アルジェリア仕様の機体はSu-34MEとされ、ロシア空軍は中期計画に20機のSu-34を取得する計画ですが、この内の14機をSu-34MEへ改修する見込み、Su-34輸出は今回が初となる。
■F-35B,機関砲ポッド不具合
F-35B,自衛隊が採用したF-35Aは機関砲を搭載していますがF-35Bはポッド式を採用している。
アメリカ海兵隊が運用するF-35Bに機関砲のPGU-32/U-SAPHEI-T砲弾に不具合が発生したとの事です。アメリカ海兵隊は3月12日、ユマ試験場においてGAU-22/A25機関砲よりPGU-32/U-SAPHEI-T焼夷曳光機関砲弾発射試験を実施した際、砲弾が発射直後に爆発し、機体の一部が損傷する事故となりました。人員負傷や墜落事故には至っていません。
PGU-32/U-SAPHEI-T砲弾の事故はクラスA事故と位置づけられました、これは250万ドル以上の物損か航空機全損若しくは死者が出た場合の事故となります。F-35BおよびF-35Cは機関砲をガンポッド方式で搭載しています。GAU-22/A25機関砲には220発の砲弾が内蔵されており、海兵隊では事故発生を受け、爆発事故の原因を調査しているとのこと。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
今回は海軍艦艇や潜水艦などの話題について論点を集めてみました。先ずはイージス艦まや型よりも新しいイージス艦のレーダーについて。
アメリカ海軍が導入する初のSPY-6レーダー搭載イージス艦ジャックHルーカスがSPY-6レーダーの搭載を開始したとの事、インガルス造船所にて建造が進むDDG125ジャックHルーカスはアーレイバーク級ミサイル駆逐艦最新型のフライト3最初の艦で今やイージス艦の代名詞となったアーレイバーク級ミサイル駆逐艦の75番艦となっています。
SPY-6レーダーは従来のイージスシステムを支えたSPY-1レーダーの次世代レーダーにあたり、探知距離や追尾目標数が大幅に増大しました。アーレイバーク級に搭載されるSPY-1は初のイージス艦タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦よりも小型のものでしたが、新型のSPY-6レーダー搭載によりその防空能力はタイコンデロガ級を大幅に上回る事となります。
■パキスタン輸出用054型
写真は大型の052型で代替します。なかなか中国の艦艇を日常的に日本が親善訪問で行き交うには厳しい情勢が。
パキスタン海軍が中国から取得する054型フリゲイト江凱型はVLSとAESAレーダーを搭載するとのこと。054型は中国海軍最新型のフリゲイトで満載排水量は4050t、ステルス性に配慮した設計となっています。搭載されるAESAレーダーはSR2410Cフェーズドレーダー、またVLS垂直発射装置は32セル型で、YJ-12巡航ミサイルを搭載するという。
環球時報が報じるところによればパキスタン海軍は2017年の契約で4隻の054型フリゲイトを導入する事としている他、元型潜水艦の導入、そして将来的には中国海軍が初めて導入する事となった対潜哨戒機の導入を要請しているとのこと。VLS以外にもC-803対艦ミサイルを発射筒に搭載しており、複数の巡航ミサイルを搭載する不思議な設計の艦ですね。
■中国KJ-600艦載早期警戒機
中国も空母部隊を増強するのに当ってアメリカのE-2Cのような早期警戒機の艦上型を模索しています。
中国海軍は空母艦載用に新たにKJ-600早期警戒機を開発し1月27日から試験飛行を実施中ですが、KJ-600早期警戒機について現在運用している中国海軍2隻の航空母艦からは運用できない可能性があるようです、KJ-600早期警戒機はアメリカのE-2C早期警戒機、自衛隊も多数を運用する早期警戒機とよく似た形状の双発早期警戒機となっていますが。
KJ-600早期警戒機について、現在中国海軍が運用する空母遼寧、空母山東はスキージャンプ台方式の飛行甲板を採用している為、仮に最高度のエンジンを搭載したとしても現在の飛行甲板延長とスキージャンプ台では運用は難しく、今後中国海軍が建造するカタパルト採用の航空母艦でなければKJ-600早期警戒機は運用できないという構造上の限界です。
中国海軍は空母建造を大車輪で進めていますが、現在建造中の空母はSu-27クラスの大型艦載機を運用する事は出来るものの、重装備の艦載機を運用させるカタパルトを有さず、また艦載機もMiG-29のような戦術戦闘機ではなく、スキージャンプ台に向かない制空戦闘機であることからその能力に限界があり、中でも早期警戒機を運用出来ない点は問題です。
■中国ソブレメンヌイ級近代化
中国海軍が初めて導入したまともな水上戦闘艦艇はロシア製のソブレメンヌイ級でした。
中国海軍はロシアから2000年代前半に導入したソブレメンヌイ級駆逐艦にYJ-12対艦ミサイル搭載の近代化改修を実施したとのこと。ソブレメンヌイ級駆逐艦はソ連が冷戦後期に建造した防空駆逐艦でアメリカのターターシステムに匹敵するシチル防空システムを搭載すると共に、強力なサンバーン超音速対艦ミサイルを搭載、極めて強い打撃力を有した。
ソブレメンヌイ級を導入した2000年代初頭に中国海軍はまともな艦隊防空艦を有さず、重宝されているが、サンバーン対艦ミサイルは巨大であり、また中国国産ミサイル体系の整合性に不協和音が生じていた。この為、YJ-12対艦ミサイル4連装発射装置を2基、サンバーンに代えて導入している。また中国海軍はVLS垂直発射装置の追加も検討している。
■ジョンCステニス核燃料交換
原子力空母のジョンCステニスがおおがかりな核燃料の交換工事に入ります。
アメリカ海軍は原子力空母ジョンCステニスRCOH核燃料換装工事に関して29億ドルのハンティントンインガルスインダストリーズとの契約を結んだとのこと。これはRCOH複合重整備といい、核燃料や原子炉周辺区画の核燃料交換に関する整備とともに艦内の航空機用および僚艦用燃料区画の改良や2300の区画の近代化、システム改良等をおこなう。
ハンティントンインガルスインダストリーズはこのRCOH複合重整備により原子力空母の耐用年数を50年に渡り高い水準とする事が可能とのこと。もっとも原子力空母は50年間の運用に際して全体の35%が、このRCOHにより造船所に入渠していることとなっており、今回のジョンCステニスRCOHについても29億ドルの巨費を投じ3年間造船所に留まる。
■仏次期戦略ミサイル原潜
フランスは核戦力の維持と近代化を重ねていますが北朝鮮からの遠いフランスへの核恫喝や中国の核戦力強化を考えますと安易に核軍縮に踏切れば逆に戦争を引き起こす懸念を理解しているのでしょう。
フランス海軍はルトリオンファン級戦略ミサイル原潜後継艦となる第三世代型SSBN4隻の建造計画を開始したとのこと。これはフランス国防省がSNLE-3G計画として進めているもので、フローレンス-パルリ国防相が2月19日にノルマンディーのヴァル-ド-ルイユDGAフランス国防調達庁船体形状研究センターを視察した際にてその開始を発表したもの。
ルトリオンファン級戦略ミサイル原潜はフランス核戦略の中枢を担っており、冷戦時代にはアルビオン高原に配備されたソ連西部を狙う中距離弾道ミサイルやミラージュⅣ戦略爆撃機が配備されていましたが、いずれも除籍されています。空軍や海軍のラファール戦闘機にはASMP核巡航ミサイルが配備されていますが射程は戦術用、SSBNの地位は高い。
SNLE-3G計画におけるルトリオンファン級戦略ミサイル原潜後継艦は、現行よりも大型化するものとみられ、全長は150mと水中排水量15000tを想定し2035年以降順次竣工させる方針という。フランスはドゴール政権時代から原子力潜水艦は攻撃型原潜よりも戦略ミサイル原潜を重視していますが、今回の計画は新空母建造と時期が重なることとなります。
■インドネシア潜水艦増強
先日事故が痛ましい沈没発生したインドネシアの209型ですが韓国でライセンス生産された改良型を取得しています。印象ですがインドネシアは潜水艦運用基盤が増強に追いついていない。
インドネシア海軍は3月17日、韓国よりドイツ209型韓国仕様チャンボゴ級潜水艦新造艦アルゴロの引渡を受けました。インドネシア政府は2011年に韓国との間でチャンボゴ級3隻の導入に関する11億5000万ドルの契約を締結しており、2017年に引渡一番艦となるナガパサが、2018年に二番艦となるアルダデダリがインドネシアへ引き渡されています。
チャンボゴ級潜水艦は韓国がドイツより技術移転を受けライセンス生産したもので水中排水量1290t、1993年に一番艦チャンボゴがドイツより到着、4番艦から韓国で建造、2001年までに9隻が建造され韓国海軍へ引き渡されています。インドネシア政府はチャンボゴ級について、今回まで引き渡された3隻に加え、更に3隻の導入を2019年に契約しました。
■055型駆逐艦二番艦は”ラサ”
占領地の地名をそのまま軍艦に関するというのは若干無神経なように思えます。
中国海軍は10000t級055型駆逐艦二番艦の艦名をチベットの地名であるラサとしました。055型駆逐艦は全長182mで満載排水量12000tから13000t規模とする大型の防空駆逐艦で、10000tを越える大型船体の設計は、中国海軍が建造を進める航空母艦部隊の護衛用に開発されたため、航続距離を延伸し充分なミサイルを搭載するべく船体が大型化しました。
055型駆逐艦の防空能力は比較的高く、大型と小型のAESAレーダーにLバンドレーダーとSバンドレーダーの異なる電波特製を有する周波数帯域のレーダーを搭載し、5860-2006型垂直発射装置VLSに各種ミサイル112発を搭載しており、これは数ではアメリカ海軍のタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦の122発に迫る強力なミサイル搭載数といえるでしょう。
ラサ。2番艦の、この艦名には中国による人権侵害が強く指摘されている各国のチベット地域からの亡命者団体により批判の声が上がっています。艦名については一番艦が南昌、また建造が進む5番艦が大連となっていまして、055型駆逐艦は8隻まで進水式を終え建造が進められており、遅くとも再来年までには055型駆逐艦は一定数が揃う事となります。
■台北が人民解放軍艦候補に
ここまでやられると除籍した初期のタイコンデロガ級を台湾に供与して台北という艦名を先に命名してはと思う。
055型駆逐艦将来の艦名に台湾の台北が冠せられる可能性があります、これは中国海軍が竣工させた055型駆逐艦二番艦ラサはチベット自治区の首都ラサ市の名が冠せられていますが、中国国営CCTVによれば、中国国内において2018年頃に055型駆逐艦2番艦の艦名候補を募集する機会があり、もっとも票数を獲得したのが台湾の台北であった、という。
台北の艦名が決定していれば、台湾との関係が更に明かした事は想像に難くありません。台北の他にCCTVによれば、広西チワン自治区の広西やチベット自治区のチベット等が票を集めたとしており、現在055型駆逐艦は8隻が建造中であるとともに5隻の艦名が2番艦竣工時点で未定である事からこうした艦名が国際係争に影響を及ぼす可能性もあります。
■ドイツのP-8A導入計画
P-8A哨戒機、ドイツ軍も日本製のP-1哨戒機は採用してくれませんでしたね。
ドイツ連邦軍はアメリカ製P-8Aポセイドン海洋哨戒機5機を17億7000万ドルで取得する計画で2021年3月にアメリカ国務省が対外有償供与を決定しました。ドイツ海軍では1989年よりフランスブレゲー社製アトランティック2対潜哨戒機を運用していますが、5か国に採用されたアトランティック2の生産数は28機と少なく、後継機もありません。
アトランティック2哨戒機に続いてブレゲー社はアトランティック3の開発を一応予定していましたが、冷戦終結により対潜哨戒機の需要が激減し28機で完了すると同時に後継機開発を中止しています。また近代化改修の頻度も低く陳腐化が進むと共に運用期間を24年と見込んでいた為に老朽化が進み、ドイツ連邦軍は中古のP-3C哨戒機を暫定導入しました。
アメリカ製P-8Aポセイドン海洋哨戒機5機の導入は、このP-3C哨戒機老朽化を受けてのものでした。総額17億7000万ドル契約の内訳は機体価格に加え、MIDS JTRS統合戦術無線装置5セット、AN / AAQ-2(V)I音響システム、APY-10レーダー、ALQ-240電子支援装置、CCM-701A暗号化装置、AN/ALE-47機体自衛装置等を含んだものとなっています。
■NOMARS無人艦船
アメリカ海軍は艦艇の無人化を次世代の水上戦闘システムに大胆に内部化する取り組みを進めています。
アメリカ国防総省国防高等研究計画局DARPAは将来のNOMARS無人自律航行型艦船コンセプト設計についてL3ハリステクノロジーズとの間で覚書を交わしたとのこと。NOMARS無人自律航行型艦船はセンサー等を搭載し太陽光発電を補助動力として数か月間に渡る情報収集や哨戒任務にあたる艦船を想定しており、無人機との連携も視野に置く。
NOMARS無人自律航行型艦船は今のところセンサーとしての機能を求めるとともに将来的には自航式艀のような形状とした上で無人航空機と連動し海上兵站拠点を構築する研究や、水上戦闘艦との連携に留まらない運用等も研究している。L3ハリステクノロジーズとの契約は基礎的な船体設計を目指すフェーズ1に位置付けられ、更なる発展も見込まれる。
北大路機関広報:以下は”F-16戦闘機用MS-110偵察ポッドとロシア製Su-34&Su-35戦闘機輸出交渉”として誤って二重作成した記事です。
■週報:世界の防衛,最新12論点
今週は空軍関係の話題を中心に。F-16が新型の偵察ポッドを搭載するとの事で無人偵察機全盛時代にあって戦術偵察機の必要性を垣間見た印象です。
アメリカ空軍はF-16戦闘機用MS-110広領域空中偵察システムについてレイセオン-コリンズエアロスペース社との間で契約を締結しました。MS-110広領域空中偵察システムはポッド式偵察装置でF-16戦闘機胴体下部に装着するもの、増槽型のポッドは側面及び下部にセンサー窓を配置しており、F-16戦闘機の高い戦術機動下でも作動が確保されています。
MS-110広領域空中偵察システムは、長距離目標に対する昼夜天候を問わないカラー映像及び識別用偽色着色映像をリアルタイムで収集且つ伝送可能で、平時の監視任務は勿論、有事の戦術偵察にも威力を発揮します。近年この種の任務はMQ-9,RQ-4といった無人偵察機が多用されている一方、生存性を考えた場合にアメリカ空軍の選択肢は興味深いでしょう。
■EA-18G電子攻撃機近代化
EA-18Gは電子攻撃能力の高い航空機であり電子戦専用航空機の導入を自衛隊も検討していた事を考えますと興味深い装備です。
アメリカ海軍はEA-18G電子攻撃機の近代化改修について5年間の改修契約をボーイング社との間で締結しました。EA-18G電子攻撃機は海軍が運用する唯一の電子攻撃機でありアメリカ陸海空海兵宇宙の五軍で唯一の電子攻撃機となっています。この近代化改修は電子監視能力の強化、データリンク性能の強化、次世代妨害装置ポッドの搭載が主眼という。
EA-18G電子攻撃機の近代化改修は既に3月中に初号機が納入されており海軍での評価試験から既存運用体系の適合化という段階まで進んでいるとの事で、問題が無ければ2021年6月にもフルレート生産により既存のEA-18G電子攻撃機の近代化改修が開始される予定で、海軍は今後五年間で保有するEA-18G電子攻撃機全ての改修を完了させる予定です。
■ロイヤルウイングマン最新論点
ロイヤルウイングマンは無人航空機の長所である長時間の滞空などの利点を敢えて切り捨てて有人戦闘機の支援に当る航空機です。
オーストラリア軍が開発を進めるロイヤルウイングマン無人僚機は3月2日、初飛行を実現しました。ロイヤルウイングマンはボーイング社とともに開発を進めていた無人航空機で従来の大型無人機が速度と機動性を犠牲に滞空時間と進出距離を強化していたのに対し、ロイヤルウイングマンは有人戦闘機に連携し共に飛行する機動力を持つ無人機という。
ロイヤルウイングマンは機体完成後、初飛行に向け地上でのデータリンク実験やナビゲーションシステムの試験などを経て高速滑走試験に移行、そして3月2日の初飛行に至った形です。無人僚機の任務はセンサーを搭載し索敵支援、若しくはミサイル等に追われた際の囮、また将来的には無人空中給油機等の用途が見込まれる新しい世代の無人航空機です。
無人僚機は高い機動力を以て第五世代戦闘機と協同しますが、僚機は同型機という原則から外れている事は確かです。更に機首を交換する方式というセンサー部分の性能次第で取得費用が増大する可能性はあり、また果たして超音速巡航性能を有する第五世代戦闘機に随伴できるかは未知数の部分があります、今後の展開を慎重に観る必要があるでしょう。
■インドネシアSu-35輸出交渉
Su-35,航空自衛隊のF-15戦闘機近代化改修型に匹敵する第4.5世代戦闘機です。
インドネシア政府はロシアとの間で2018年に契約されたSu-35戦闘機導入を一時停止した可能性があります。これは2月18日にインドネシア政府が発表した2024年までの国防調達計画にSu-35戦闘機が含まれていなかった点によるもので、正式な費用契約は早くとも2025年以降まで延期される事となります。この頃には仕様も変更されていましょう。
Su-35戦闘機はロシア製の第4.5世代戦闘機で優れた空戦機動性に対し稼働率を抑える分、取得費用を抑えられる事でも知られます。しかしインドネシアはロシア経済制裁を理由としてSu-35戦闘機の費用支出への難色を示しており、一方でインドネシアからは韓国とのKF-X共同開発、ラファールやF-15仮契約、またF-35希望等様々な発表が流れていました。
■イスラエルKC-46導入へ
イスラエルもKC-767の系譜に当るKC-46を導入するのですね。
イスラエル政府は2月22日、KC-46空中給油機やF-35戦闘機導入に関する90億ドルの国防支出計画を閣議決定した。イスラエル政府はアメリカ政府との間でこれら装備品とともにV-22可動翼機及びCH-53K重輸送ヘリコプターの取得交渉を進めており、F-35増強計画を加えると全体で380億ドルに達する国防計画を推進中、内90億ドルが決定へ。
KC-46空中給油輸送機はこの中でも、現在運用するKC-135空中給油機の老朽化が深刻であり、この代替が求められていた。今回の90億ドルに上る閣議決定にはKC-46空中給油輸送機2機の取得費用が含まれており、イスラエル航空宇宙軍では将来的にKC-46空中給油輸送機8機を2億4000万ドルで取得する計画だ。今後はアメリカ国務省の審査を受ける。
■サウジのSu-35国産化交渉
サウジアラビアは防衛装備国産化を進めるようですがF-15ライセンス生産ではなくロシア製装備の方へ舵を切るもよう。
サウジアラビア政府はロシア政府との間でSu-35戦闘機とS-400広域防空ミサイルシステムの導入及び技術移転の交渉を本格化させました。これはロシアのロステック社セルゲイチェメゾフ最高経営責任者がロシアテレビとのインタビューに応じたものでサウジアラビア政府は2030年までに国軍が必要とする防衛装備50%の国産化を目指す計画の一環に。
Su-35戦闘機とS-400広域防空ミサイルシステム、この導入は2019年より交渉が開始され、サウジアラビア政府は国営防衛産業SAMIにこの二つの装備の国内生産化を目指しており、現在既にカラシニコフAK-103,TOS-1A広域熱圧焼却兵器等の生産移転交渉が進められています。ただ、アメリカの反発は必至でF-35等にアクセスできなくなる懸念があります。
■エジプトはSu-35要再検討か
エジプトもSu-35を導入するようですが長期的に考えれば機体寿命の長いF-15Eを導入すればエジプト空軍の既存のF-16と整合性がとれるようおもう。
アメリカ政府アントニーブリンケン国務長官はエジプト政府が進めるロシア製Su-35戦闘機導入について懸念を表明した。エジプト政府はSu-35戦闘機の調達へ20億ドルのロシアとの契約を締結しているが、アメリカ政府はエジプト政府へ毎年10億ドルに上る国防援助や、今後エジプト軍が最新のアメリカ製兵器へアクセスできなくなる可能性を示唆した。
Su-35戦闘機については導入する事によりエジプト軍の装備するF-16戦闘機などとデータリンクを形成する為、ネットワークの一体化が損なわれると共に技術情報が自動的に連接し漏洩する懸念が指摘されている。この点について、アメリカは常に厳しく、トランプ政権時代にトルコ軍がS-400ミサイルを導入した事でF-35戦闘機供与を停止したままである。
■自衛隊,コヨーテ標的機追加
超音速無人標的機、自衛隊は訓練支援艦から複数の高速標的無人機を用いて飽和攻撃を再現し高度な訓練を行う事が可能です。
アメリカ海軍は日米両軍が運用するGQM-163Aコヨーテ超音速標的機18機について5550万ドルの契約をノースロップグラマン社との間で締結したと発表しました。18機のGQM-163Aは14機がアメリカ海軍に、3機がアメリカミサイル防衛局に、1機が海上自衛隊に納入されます。今回のGQM-163A生産は計画全体では第15次生産分となりました。
GQM-163Aコヨーテ超音速標的機、これは直超音速目標への対処を訓練する為のドローンで巡航速度はマッハ2.5以上、海面上6mの低高度を飛翔した場合の飛翔距離は90kmに達するといい、全長5m、直径は30cmとなっています。このドローンは所謂シースキミング極超音速ミサイルを再現するもので、艦隊防空の基盤構築には重要な標的用無人機です。
■ヴェトナムがアメリカ製練習機
T-6Aはプロペラ機ではありますが高出力エンジンを採用し限定的にジェット練習機の訓練を代替する事が可能です。
ヴェトナム空軍はアメリカ政府よりT-6AテキサンⅡ練習機3機導入の提案を受けたとのこと。これは現在ヴェトナム空軍の戦闘機要員養成の一部がアメリカ国内で実施されている為で、既にヴェトナム空軍には34名のアメリカ留学出身要員が操縦要員として任務に当っているとのこと。ここでT-6Aをヴェトナムが導入した場合、訓練の効率化が図れます。
T-6AテキサンⅡ練習機はスイスのピラタス社製PC-9高等練習機のアメリカ仕様で、一見初等練習機の様なターボプロップ機ではありますが、強力なエンジンを搭載しておりジェット練習機を用いる中等練習課程の一部を担えるだけの性能を有しています。アメリカヴェトナム艦の地域安全保障協力支援戦略的プログラムの一環としての提案といえましょう。
■ハンガリー,ロシア機生産
T-7練習機よりも前の基礎練習機というものが世界には在るのですが、初等練習機とモーターグライダーの中間あたりです。
ハンガリーのZrtアビエーションエンジニアリング社は3月17日、ロシアのイリューシンIl-103初等練習機のライセンス生産契約を締結したとのこと。ハンガリーはNATO加盟国で、ロシアからの兵器技術移転はクリミア併合を受けての対ロシア経済制裁へ影響する可能性がありますが、イリューシンIl-103初等練習機のハンガリー軍採用は行われません。
イリューシンIl-103初等練習機は定員4名の初等練習機で単発式、初等練習機としての用途に加えて連絡飛行や後部座席をフラット化し急患輸送にも対応するとのこと。ロシア機らしさといいますか、格納庫以外での長期保管でも機体構造が劣化しない。イリューシンは本機を民間用と強調していますが、NATO加盟国を潜在的市場と考えているのでしょう。
■アルジェリアSu-34輸出交渉
Su-35とよく似たSu-34,これは輸出が実現するならば初の事例となります、多用途性が高く対艦攻撃は勿論対潜哨戒まで可能ともいわれる。
アルジェリア空軍はロシアからSu-34戦闘爆撃機14機の導入について大きく前進したとロシア国内報道スプートニクニュースの報道がありました。アルジェリアは2020年にロシア製第五世代戦闘機Su-57戦闘機14機を20億ドルにて取得する契約を結んでおり、この延長線上に強力な打撃力を有するSu-34戦闘機の交渉も2021年内の締結を目指すという。
Su-34戦闘爆撃機はSu-27戦闘機の余裕ある機体設計を原型とし、カモノハシの嘴やアヒル顔と称される独特の並列複座式の操縦席が外見上の大きな特色となっています。アルジェリア仕様の機体はSu-34MEとされ、ロシア空軍は中期計画に20機のSu-34を取得する計画ですが、この内の14機をSu-34MEへ改修する見込み、Su-34輸出は今回が初となる。
■F-35B,機関砲ポッド不具合
F-35B,自衛隊が採用したF-35Aは機関砲を搭載していますがF-35Bはポッド式を採用している。
アメリカ海兵隊が運用するF-35Bに機関砲のPGU-32/U-SAPHEI-T砲弾に不具合が発生したとの事です。アメリカ海兵隊は3月12日、ユマ試験場においてGAU-22/A25機関砲よりPGU-32/U-SAPHEI-T焼夷曳光機関砲弾発射試験を実施した際、砲弾が発射直後に爆発し、機体の一部が損傷する事故となりました。人員負傷や墜落事故には至っていません。
PGU-32/U-SAPHEI-T砲弾の事故はクラスA事故と位置づけられました、これは250万ドル以上の物損か航空機全損若しくは死者が出た場合の事故となります。F-35BおよびF-35Cは機関砲をガンポッド方式で搭載しています。GAU-22/A25機関砲には220発の砲弾が内蔵されており、海兵隊では事故発生を受け、爆発事故の原因を調査しているとのこと。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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