北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】RBS-23防空システム再活性化とGBAD地上防空装備,LWCLUスティンガー搭載

2021-06-14 20:05:40 | インポート
■週報:世界の防衛,最新11論点
 防衛情報といいますか防空情報という話題を中心に。RBS-23防空システム等を視ていますと自衛隊の11式短距離地対空誘導弾システム等は各国要求に合致しそうにみえますね。

 スウェーデン国防省は保管状態にあったボフォースRBS-23防空システムの再活性化とゴトランド島への配備再開を発表しました。スウェーデンではロシアからの軍事圧力増大が問題化しており、長らくRBS-70携帯地対空ミサイルやボフォース40mm高射機関砲のみに依存していた防空体制を見直す方針となりました。RBS-23再配備もその一環でしょう。

 RBS-23防空システムは牽引式の中距離防空ミサイルシステムで、ミサイルそのものの射程は20km、捜索レーダーと射撃管制レーダーにミサイル6発を一体化したコンテナに収容、コンテナは牽引式となっており、ボルボトラックにより機動、射撃陣地へ展開すると切り離し、ミサイルシステム単体にて捜索と照準から射撃まで自己完結能力を有しています。

 RBS-23防空システムは2000年にスウェーデンのボフォース社により開発、2002年にスウェーデン軍へ配備されていますが、教育訓練を行ったのみで、冷戦後の情勢安定化を受け実戦配備までは至らず、2008年に予備保管へ移行しました。今回の現役復帰を受けPS-90捜索レーダーデータリンクシステムは旧式化している為、モジュールを更新する予定です。
■ジャベリン発射装置LWCLU
 対戦車ミサイルの発射装置に地対空ミサイルを発射させる事でアメリカは長年の弱点であった野戦防空を向上させるもよう。

 アメリカ陸軍が運用するジャベリンミサイル発射装置LWCLUよりスティンガーミサイルを発射する試験が行われました。これはレイセオンミサイルスディフェンス社が開発しているもので、LWCLUジャベリンミサイル発射装置は対戦車ミサイル用のRWS遠隔操作銃搭というべき装備、ハンヴィーやJLTVに搭載し対戦車用に用いる装備となっています。

 スティンガーミサイルのジャベリンミサイル発射装置LWCLUからの運用は、LWCLUの有する射撃管制能力や索敵能力により、近年脅威が増大する無人航空機等に対して車両が積極的に反撃する企図があり、特にスティンガーミサイルのスタンドアローン運用能力は、従来の戦術防空よりも低高度より及ぶ無人機脅威に対して有効であると考えられています。
■独のGBAD地上防空装備体系
 欧州正面の従来型脅威再燃を前にドイツも防空砲兵の脆弱化という問題に本腰で取り組む模様です。

 ドイツ国防省は3月23日、GBAD地上防空装備体系の技術提案を連邦議会へ提出した。ドイツ連邦軍では冷戦時代に本土防衛を支えたローランドミサイルやゲパルト自走高射機関砲と云ったミサイルが全て廃止されており、ペトリオットミサイルも予備保管兵器となり全廃が予定されていた。しかし2010年代からのロシア脅威増大が再考を促した構図だ。

 GBAD地上防空装備体系は単一の防空兵器ではない、先ずスティンガーミサイル主体のオセロット防空システムをNNbs短距離地対空ミサイルシステムに置換え、計画が中断しているTLVS戦術航空防衛システムの開発を再開、MBDAミストラル3近距離防空兵器システム、射程40kmのIRIS-TSLミサイル等の配備計画を進め、ペトリオットも現役に戻す。

 TLVS戦術航空防衛システムはペトリオットミサイルPAC-3を単体とした防空システムであり、これにより連邦軍は弾道ミサイル攻撃に対しても一定の防空能力を獲得する事となる。また手放しとなっている野戦防空もボクサー装輪装甲車にラインメタルエリコンスカイガード35機関砲システムを搭載する事で対応する、予算も時間もかかるが必要な一歩だ。
■インドネシアとエヴァ自走榴
 エヴァ装輪自走榴弾砲採用が決定した訳ではないようですが砲兵装備の話題について。

 インドネシア海兵隊はエヴァ装輪自走榴弾砲等の新型自走砲の調達計画を発表しました。これは海兵隊が保有する旧式化した牽引式のソ連製M-30/122mm榴弾砲とフランス製LG-1/105mm榴弾砲を置換える構想で、インドネシア軍は2012年にフランス製カエサル自走榴弾砲37両を2億4000万ドルで取得していますが、今回は新型砲となる見込みです。

 スロバキア製のエヴァ装輪自走榴弾砲、チェコ製のダナ装輪自走榴弾砲、スロバキア製ズサナ2装輪自走榴弾砲、ウクライナ製ボウダナ装輪自走榴弾砲、セルビア製アレクサンダー装輪自走榴弾砲、等が候補とされています。今回フランスのカエサルが含まれていないのは謎ですが、候補には152mmと155mm砲は含まれており、意図が分り難い計画です。
■イスラエルCH-53K採用
 CH-53K重輸送ヘリコプターはアメリカ海兵隊の最新型ですが調達費用の大きさに驚かされたのは数年前のお話しです。

 イスラエル国防軍は旧式化したCH-53D重輸送ヘリコプターの後継機としてCH-53K重輸送ヘリコプターを選定したとのこと。CH-53Dの後継機選定にはボーイング社が提示したCH-47輸送ヘリコプターの最新型とシコルスキー社が提案したCH-53シリーズの最新型であるCH-53Kが比較検討されており、既存機の延長線上機種として選定されたかたち。

 CH-53Kはアメリカ海兵隊へ開発されたもので、CH-53DやCH-53E重輸送ヘリコプターを置換えています。イスラエル国防軍は出来るだけ早い段階で機種転換を望んでいます、その背景にはCH-53D運用開始からすでに半世紀を経ており延命改修が限界となっている為ですが、どの程度の機数をどの程度の予算で導入か、こうした細部は決定していません。
■トルコ製アルマ装輪装甲車
 トルコ製オトカ-アルマ装輪装甲車をカザフスタンは採用する見通し、自衛隊の96式装輪装甲車もこのくらい走る鉄の箱という本質に立ち返ってほしいとも思う。

 カザフスタン軍は次期装甲車としてトルコ製オトカ-アルマ装輪装甲車の評価試験を開始した。オトカ-アルマは八輪式の装輪装甲車でトルコ国産初の機械化歩兵部隊用装輪装甲車、30mm機関砲塔を搭載している。カザフスタンでは旧式化したBTR-80装輪装甲車の後継車両を模索しており、比較的安価で地域的にも文化的にも近いトルコ製を注目している。

 オトカ-アルマ装輪装甲車は評価試験用車両が無償でトルコより提供されており、2月下旬からカザフスタンのカラガンダ州演習場において評価試験が行われている。主としてカザフスタンが重視するのは同国の厳しい気候条件で機関砲塔や駆動系が作動するかであり、マイナス32度の厳寒期から夏の砂漠のプラス55度までの温度環境で試験が行われる。
■LE TacCIS陸軍戦術通信
 富士通の装備がイギリス軍へ配備されるという。

 イギリス国防省は3月9日、タレスと富士通及びエアバス社との間で次世代のLE TacCIS陸軍戦術通信情報システム構築についての契約を締結しました。これは三社と共同開発をおこなうのではなく、タレスと富士通及びエアバス社の競争試作という形で、採用された方式の具現化について協力関係を締結するという複合的な開発計画を目指すとのこと。

 LE TacCIS陸軍戦術通信情報システムは高度に暗号化された大容量通信を複雑なサイバー戦環境下において同時多数の部隊通信を移動端末と中継装置とを複雑にかつ持続的に結び、部隊間で共有するもので、タレスと富士通及びエアバス社の競争試作は2023年から2024年までに選定を完了し、イギリス国内に合弁会社を設立、実開発へ移行する計画です。
■スペインEIMOS自走迫撃砲
 迫撃砲は簡便な火力投射装備という運用の枠を超えて精密装備化しなければ生き残れない時代となってきた。

 スペイン軍へ新型迫撃砲を提案するエクスパル社は新型のEXPAL-DUAL-EIMOS自走迫撃砲の発射支援を実施しました。これは3月3日にスペイン国内のカディス陸軍試験場にて実施されたもので、軽量戦術車輛に81mm迫撃砲を車載化したもので、従来の迫撃砲は卸下し射撃準備を行いますが、こちらは完全に自動装填と自動射撃が可能となっている。

 EXPAL-DUAL-EIMOS自走迫撃砲はVAMTACST5高機動車の荷台部分に81mm迫撃砲を搭載、TALOSC2通信システムを用いTALOS砲兵射撃統制装置と連接する事で、最大射程6.9kmにおいて毎分25発の射撃が可能となっています。迫撃砲は安価で簡便な火力という装備の代表例でしたが、今後は自走化により生存性を増す分、高価となるのかもしれない。

 EXPAL-DUAL-EIMOS自走迫撃砲には60mm迫撃砲型もあり、こちらは射程4.9kmにわたり毎分36発の射撃が可能という非常に高いものとなっています。VAMTACST5高機動車はハンヴィー高機動車や自衛隊の高機動車と同等の四輪駆動車輛で、行進間射撃は出来までんが迅速な陣地変換が可能、今回の評価試験にはスペイン海兵隊が協力しています。
■HQ-17AE防空ミサイル
 HQ-17AE機動短距離地対空誘導弾システム自走発射装置は長年兵見本市に並べられているだけの装備でしたが遂に採用されましたね。

 中国政府はロシアのトール地対空ミサイルと類似したHQ-17AE機動短距離地対空誘導弾システム自走発射装置の海外提供を許可したとのこと。FM-2000ミサイルシステムとして過去に開発されていたミサイルと共通点があるが、東風汽車公司製の車体は重量30t、全長9.7mで車幅3.7m、全高3.1mで、レーダーと垂直発射装置等を車体に内蔵しています。

 HQ-17AE機動短距離地対空誘導弾システムは形状こそトールと類似していますが車体部分は六輪式のベラルーシ製MZKT-6922輸送車両と類似した形状であり、トールが装軌式車両であるのに対し、路上機動性が高い点が挙げられます。ミサイルの射程などは不明ですが、画像などから停止から射撃までの時間を従来の中国製ミサイルよりも短縮化しました。
■JAGM統合ミサイル
 AGM-179/JAGMはソフトウェアさえ書き換えれば自衛隊のアパッチロングボウからも運用できるもの。

 アメリカ国防総省はAGM-179/JAGM統合空対地ミサイルについて2億0100万ドルの契約をロッキードマーティン社との間で締結しました。AGM-179/JAGM統合空対地ミサイルは陸軍と海兵隊及び海軍の装備するTOW対戦車ミサイルやヘルファイア対戦車ミサイル、マーベリック空対地ミサイルを一種類のミサイルで置換えるべく開発されていました。

 AGM-179/JAGM統合空対地ミサイルの射程は8km、高高度から射撃する場合にはこの射程は延伸されます。AH-64D/E戦闘ヘリコプターによるミリ波レーダー誘導やAH-1Z戦闘ヘリコプター及びOH-58観測ヘリコプターとMH-60R多用途ヘリコプターからのレーザー誘導が可能で、MQ-9無人攻撃機や将来的にはF-35戦闘機への搭載も予定されています。
■米陸軍のISV歩兵機動車輛
 自衛隊のパジェロもある意味この発想の先を行っていた構図ですね。

 アメリカ陸軍はISV歩兵機動車輛のユマ試験場における評価試験を本格化させました。ISV歩兵機動車輛は軽歩兵部隊の機動用車両で歩兵9名と携行品を輸送する、非装甲のソフトスキン車で、元々アメリカ陸軍は軽快なハンヴィー高機動車を多用していましたが、後継車両が大きくなり過ぎた為、軽量の新型車両を新区分の装備として開発したかたち。

 ISV歩兵機動車輛は民生車のシボレーコロラドZR-2と車体部分の70%を共通化し製造費用を抑えているとともに車体部分は扉などを有さないフレームのみの軽量構造で、ヘリコプター空輸を意識した装備となっています。エンジンは2.8lターボエンジンで六段自動変速機を搭載、外見は特殊部隊車輛の様相ですが運転は市販車並みに容易、しかし堅牢という。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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