北大路機関

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【防衛情報】ユーロコプタータイガー戦闘ヘリコプターとカエサルMk2自走榴弾砲,A2CS陸軍装甲戦闘システム計画

2024-04-22 20:01:02 | インポート
■防衛フォーラム
 今回は時間の関係で項目ごとではなく第二北大路機関からの単純なインポート記事です。

 ドイツ連邦軍はユーロコプタータイガー戦闘ヘリコプター退役を前倒しするとのこと。経済性の問題からドイツ連邦軍は過去に優先度の高い装備品取得にユーロコプタータイガー運用費を削減し転用した結果、部品不足と整備費用不足により稼働率が運用国中最低水準まで低下し、運用基盤再建にも多額の費用が掛かるとして退役を決定しました。

 計画では2038年までに退役させる方針ではありましたが、まず現在保有している55機を2028年までに33機まで削減させ、2032年に運用を終了すると、退役計画を5年間前倒しした構図です。ドイツ軍が運用するタイガーはKHT型、これは旧UHT型といい対戦車ミサイルとロケット弾は搭載するものの、機関砲を搭載しない型式となっています。

 ドイツ軍が退役を決定した背景には、KHT型について今後運用を継続するにはスペインやフランスのようにMk2plusに改修が必要となるため、費用面での限界という背景があります。ユーロコプタータイガー運用終了はオーストラリアに次いで二か国目、オーストラリアでは先進的なAH-64Eへ置き換えますがドイツはH145Mで妥協します。■

 イタリア陸軍は50億ユーロ規模のA2CS陸軍装甲戦闘システム計画を数か月以内に開始します。イタリア陸軍は装甲戦闘車としてイタリア国産のダルド装甲戦闘車を運用していますが、この車両は2000年代に配備が開始されたものの設計は1988年完成のアルミ合金車体設計のものが予算不足により量産が2000年以降となっていた事情があります。

 ダルド装甲戦闘車は設計から改修に限界があるとともに延命措置にも限界があり、また当初計画を大幅に下回ったことで必要な定数を確保できず部隊そのものを縮小することで糊口を凌いでいました。この為イタリア軍ではダルド装甲戦闘車とともにさらに老朽化が進む古い車両などを1000両規模の新型装甲車で置き換える検討を進めてきました。

 A2CS陸軍装甲戦闘システム計画として進められるこの計画は、ロシアウクライナ戦争の長期化という緊張を受けて加速し、数か月以内に協力企業、イタリアのレオナルドやイヴェコ、独仏多国籍企業KNDS,ドイツのラインメタル社などといった防衛大手から協力企業を選定するとして、イタリア国防省は2024年前半に計画を本格化する構えです。■

 インド陸軍は旧式化したFH-77榴弾砲の後継装備を検討中のもよう。FH-77はスウェーデンのボフォース社が開発した39口径の牽引式榴弾砲で、3発の弾庫を備えた半自動装填装置を採用し最初の12秒間で3発の効力射を行うことが可能という装備です。インド軍はこの後継装備について、インド陸軍砲兵の主力とし得る想定で計画を進めている。

 FH-77榴弾砲後継装備は、インド軍の想定では牽引時の重量が15t以下で砲身は52口径、現在装備されている155mm砲弾を40㎞以上まで到達させる性能とともに砲身命数は1500発の射撃か20年間の運用に耐える事、そしてインド企業が設計に参加し主要部分を含め少なくとも50%の構成部品をインド国内で生産し供給できるもの、とされている。

 インド国内の防衛産業ではバーラトフォージ社のバーラト52型野砲が重量13tとなっており、またタタグループも18tの先進牽引砲を試作しています。このほか、インド国有兵器工廠では既存のダヌーシュ榴弾砲を45口径型とした14tの牽引砲を試作しており、この技術的要素の上で52口径砲を開発し射程を42㎞に延伸させる改良型を計画中です。■

 アメリカ陸軍は600基のコヨーテ2C無人機迎撃機を調達します。これは契約は2月9日に発表されています。コヨーテ2Cとは、アメリカのRTX社が開発した無人機迎撃用地対空ミサイルシステムで、調達費用は600基が7500万ドルとのこと。コヨーテシステムは小型の対空レーダ装置や追尾装置と防空システムなどを一体化した自己完結型のもの。

 コヨーテ2Cそのものは地対空ミサイルそのものであり、目標付近まで進出し信管を作動させ迎撃するもの、システムとしてはJLTV統合軽量戦術車両などに搭載しコヨーテ2C以外にもJLTVに車載する機関砲などを併用し無人航空機を迎撃します。今回契約された600基は最初の契約であり、アメリカ陸軍は今後数千基を揃えミサイル防衛を強化する。■

 インドネシアのPT-SSE社は装甲車開発にフランスのテレリス社と協力を発表しました。テレリス社は装甲車の車体部分を下請け協力している企業であり、またサイバースペースを利用したデジタル車両共同開発システムなどを手掛け、これは具体的に言えば、遠隔地にある開発拠点同士をつないだ分業体制の技術でも知られている企業です。

 CELERIS四輪駆動軽装甲車、テレリス社は最近独自に装甲ジープ型の装輪装甲車を開発しており、今回の協力ではCELERIS四輪駆動軽装甲車をPT-SEE社に提供し、これをもとに装甲車両を開発するとのこと。インドネシアは最近、トルコとの協力で開発するハリマウ中戦車の量産開始遅延など防衛産業の基礎工業力限界を痛感しています。■

 オランダ陸軍はヘルファイアミサイルを取得します、ミサイルはAH-64Eアパッチガーディアン用とともにMQ-9リーパー無人航空機用の弾薬という位置づけで、このほどアメリカ国務省の対外供与認可を受けました。空中発射型のAGM-114R2ミサイル、取得数は386発とのことで関連機材を含めた取得費用は1億5000万ドル規模となる見通し。

 AH-64Eアパッチガーディアンについては1995年に導入したオランダ軍アパッチの継続的な近代化改修が行われ、現在アパッチロングボウからの改修完了機が順次オランダへ再配備されています。またMQ-9はMQ-9blockⅤを4機、2023年に導入しており、追加の4機取得も計画、前線用2基と本国用2基の管制システムなども配備されています。■

 フランス国防省はカエサルMk2自走榴弾砲109両の追加調達を決定しDGA軍事調達総局はKNDS社とネクスター社との間で契約を結びました。今回導入されるカエサルMk2自走榴弾砲によりフランス陸軍はAUF-1自走榴弾砲を置き換える構想で、これによりフランス軍は装軌式自走榴弾砲を全廃し装輪自走榴弾砲へ統合することとなります。

 カエサルMk2自走榴弾砲は六輪式のそうりんじそうほうで現在各国て提供されているMAN社製の八輪私事装輪自走砲とも、また現在フランス軍に装備されている六輪式のウニモグトラックを用いたものとも異なる装備となり、ウニモグトラックを用いたカエサルMk1自走榴弾砲についてもフランス軍は順次カエサルMk2自走榴弾砲により置き換えます。

 カエサルMk2自走榴弾砲を量産する背景には、この車体部分に用いられているのがスコーピオンプログラムとして進められる車体部分や戦闘システム統合化の一環として進められており、既存のカエサルMk1自走榴弾砲と比較して機動力や装甲防御力で大きな前進があるとのこと。計画では最初の車両は2026年にフランス軍へ納入される予定です。■

 ラトビアのアトラス社はGPSに依存しないTETHER無人航空機システムを試験中です。これは厳しい電子戦環境においては無人機が通常依存するGPS電波などが妨害により使用不可能となる懸念があり、衛星通信システムなども妨害されるため、無人機運用が不能になり、実際ロシアウクライナ戦争においてはそうした状況が度々確認されています。

 アトラス社は2023年内にもウクライナにおいて既に試験飛行を実施し、試験では10㎞以内の距離において70mの高度で滞空実験を実施したとのこと。電子攻撃はロシア軍が実施するものはロシア軍自身の通信も無効化するため、継続的に展開されるものではありませんが、電子攻撃装置を発見し野砲により破壊する戦術が開発されています。

 TETHER無人航空機システムは、こうした電子攻撃が加えられた場合にも無人機による情報優位を担保するとともに、ロシア軍電子戦兵器の位置を捕捉し砲撃により破壊する用途に重要な性能を発揮できるでしょう。なお、GPSに依存しない装備として、固定翼のトルコ製バイラクタルTB-2も指令ビーム方式を用いるため、電子戦下で有用です。■

 スペイン陸軍はチェンタウロ戦車駆逐車の近代化改修計画を発表しました。先ず改修試作車の開発に二度に分け各々530万ユーロと330万ユーロの開発契約は結ばれています。スペイン陸軍はイタリアで開発されたチェンタウロ戦車駆逐車の機動力と火力に注目し、VRCC-105装甲偵察車として84両を調達し、3個連隊に分散配備しています。

 チェンタウロ戦車駆逐車はスペイン軍のバビア第4連隊とルシタニア第8連隊にエスパーニャ連隊に配備、これらの3個連隊はスペイン空軍の緊急展開任務と連携するべくカバレリア兵営に駐屯しています。チェンタウロのスペイン軍での評価は比較的高く、スペイン軍全体の近代化計画と歩調を合わせられる水準まで能力向上することが狙い。

 チェンタウロ戦車駆逐車、近代化計画は砲身サーマルスリーブの交換、ROVIS戦闘情報システムへの対応改修、機銃をMG-42/59からMG-3機銃に換装し最大3丁まで増備すること、車体周辺部分に中空装甲区画を広げ、発煙弾発射装置の改良などが計画されています。なお、イタリアでは120mm砲搭載のチェンタウロ2が開発されました。■

 アメリカ陸軍はM-1150工兵戦闘車改良でピアソンエンジニアリング社と契約を結びしました。契約規模は1121万ドル、M-1150はアサルトブリーチャーの愛称で知られ、M-1エイブラムス戦車の車体を利用した戦闘工兵車、車体全体の戦闘工兵車への改修はゼネラルダイナミクスランドシステムズ社が担当、ピアソンエンジニアリング社は下請け。

 ピアソンエンジニアリング社はイギリス企業で除雷鍬や地雷処理装置などを担当しています。アメリカ陸軍はM-1150はアサルトブリーチャーを187両調達する計画で、しかし、2023年のロシアウクライナ戦争ウクライナ夏季反転攻勢において戦闘工兵車両の能力と数に関する重要な戦訓が得られ、現状装備数が全く足りていない事が判明しています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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臨時情報-中東情勢,イスラエル報復宣言後イランイスファハン州で爆発,イラン政府は感知せず

2024-04-22 07:01:04 | 国際・政治
■全面戦争は回避
 第五次中東戦争の勃発は回避でき中東在留邦人の安全も一応は確保される事となりました。

 イラン本土からの初のイスラエル本土への大規模ミサイル攻撃が発生して以来、イスラエルは報復攻撃を発言していましたが、これが4月19日、小規模な航空攻撃として実施されました。世界が危惧していたのはこれを契機にイスラエルとイランが全面戦争に発展する事でしたが、反撃は小規模であり、少なくとも今の時点での全面戦争は回避できました。

 全面戦争と成れば、イラン国内にもイスラエル国内に在留邦人は少なくなく、イスラエルとイランの間にはイラクやヨルダンとシリア等が位置している事からイスラエル軍の地上侵攻の可能性は低かったのですが、在留邦人の救出活動を行う必要が生じていたでしょう。イスラエル報復攻撃前には外務省などが在留邦人へ注意情報を発表していました。

 中東情勢は邦人保護の問題と表裏一体であり、これは1980年に勃発したイランイラク戦争において、イランでのODA政府開発援助に基づく土木工事支援法人企業駐在員が戦闘地域脱出を試みた際に戦闘に巻き込まれ、またイラン大規模攻撃をフセイン大統領が発表した際に当時の自衛隊法で邦人を救出できず、トルコ政府の厚意に頼るなどの歴史があります。

 イスラエルとの関連は証明されなかった、イランのアブドラヒアン外務大臣は4月20日、イラン中部において19日に発生した航空攻撃について、アメリカのNBCニュースのインタビューに応じ、19日未明にイランのイスファハン州上空に3機の無人機が確認されたが、無人機は撃墜現場から数百m以内で飛行しており念のため撃墜したと発言しました。

 イスファハン州での爆発はアブドラ外相が発言するような小規模なものではなかった事が既に複数報道されていますが、イラン政府としては今回の攻撃に、公式見解としてイスラエルは関与していない、とすることでイスラエルの攻撃が有れば反撃するという原則論に対し、イスラエルの攻撃を否定する事で幕引きを図っているように解釈できます。

 19日の航空攻撃は、イラン政府がイスファハン州の核関連施設に対する攻撃であれば断固反撃すると表明していたのに対し、イスファハン州の航空基地が攻撃され、またイスラエル政府が攻撃を公式声明しなかった事で、イスラエルイラン全面戦争を回避しなければならないが、イランによる大規模本土攻撃へ報復しない選択肢も回避した結果となりました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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