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【防衛情報】ブラジル軍情報-空母アトランティコの延命とAF1スカイホーク近代化改修,JAS-39/F37配備開始

2022-06-07 20:22:54 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 南米の大国であるブラジルの独特といえる国防政策は日本の防衛政策を見る上での参考となる点があるのかもしれません。

 ブラジル海軍はAF-1B/A-4スカイホーク近代化改修型最後の一機を受領しました。これはエンブラエル社サンパウロ州ガビアオペイコト工場において4月21日に行われた式典です。ブラジル海軍は空母艦載機としてAF-1B/A-4スカイホークを運用していて、A-4は攻撃機ですが、ブラジルでは唯一のジェット艦載機で戦闘攻撃機として採用されています。

 AF-1B/A-4スカイホーク近代化改修は7機が対象であり、航法装置や火器管制装置と多目的レーダ装置の改良が行われています。この改修が決定したのは2009年、この時ブラジル海軍は12機を装備していましたが、複座型2機と単座型5機の近代化改修が決定しています、これによりAF-1B/A-4スカイホークは当面2025年まで延命されたこととなります。

 ただ、ブラジル海軍ではもともとAF-1B/A-4スカイホークを空母艦載機として運用していましたが、搭載していた空母サンパウロ、元フランス海軍空母フォッシュは2017年に退役しており、しかもA-4攻撃機も1997年にクウェート空軍から23機を中古取得したもの、これらは1977年に製造されたものでした。ブラジルには戦闘機用の空母計画はありません。
■中古A320を給油機へ
 ブラジル空軍は景気悪化で用途廃止となった旅客機を調達し改造するようです。

 ブラジル空軍は中古のエアバスA-320旅客機を8050万ドルで空中給油機へ改造します。これはブラジルの格安航空会社であるアズールブラジル航空が運用していたエアバスA-320-200旅客機2機を取得したブラジル空軍が、この機体の適切な運用方法を検討した結果であり、スペインのエアバス工場によりMRTT多目的給油機へ改修される事となった。

 MRTT多目的給油機は、給油機の他に人員輸送機や病院機としても転用できるといい、今回改造される事となるエアバスA-320旅客機はナローボディの中距離旅客機として1987年に開発された機体で、空中給油機の原型機としては小型です。しかしブラジルは国産のKC-390多目的輸送機の調達を下方修正したばかりであり、その補填となるものでしょう。

 A-320旅客機の空中給油機へ改修に8050万ドルを計上した訳ですが、並行してエンブラエル社はKC-390を当初のブラジル空軍28機導入予定から22機の導入へと大幅に下方修正しており、これはCOVID-19新型コロナウィルスによる経済悪化が指摘されていますが、急な方針変更は、エンブラエル社の業績にも無視できない影響を及ぼすことになります。
■空母アトランティコ
 ブラジルは一時期こそJAS-39を空母艦載機とする提案を受けていたほどですが唯一の空母の現状について。

 ブラジル海軍は空母アトランティコの延命に関してハブコックインターナショナル社との間で契約を成立させました。アトランティコは1998年にイギリス海軍のコマンドー空母オーシャンとして竣工しており、満載排水量は22500t、全通飛行甲板を有する事実上の強襲揚陸艦ですが、最高速力を19ノットに抑え商船構造を採用する事で建造費を抑えました。

 アトランティコは現在ブラジル海軍旗艦となっていますが、もともと商船構造である船体は老朽化が著しく、一方でブラジルには後継艦を建造する財政上の余裕はありません、そこでハブコックインターナショナル社との間で四年間の延命措置を契約しました、契約には老朽化部分の補修と共に運行管理システムの改良なども契約に含まれているとのこと。

 オーシャンを中古空母として取得したブラジル海軍ですが2000年にはフランスの空母フォッシュを取得し2017年まで運用していました、満載排水量は33670tでA-4/AF-1攻撃機を運用可能で、その前は1956年にイギリスからコロッサス級軽空母のヴェンジェンスを中古取得し2001年まで運用しており、中古空母の運用に就いては長い経験があるのです。
■JAS-39ブラジル到着
 ブラジルはJAS-39グリペン戦闘機をF-39として採用しています。

 ブラジル空軍が採用したJAS-39戦闘機の量産機が4月1日に2機揃ってスウェーデンからブラジルへ到着しました。ブラジル空軍は2014年にJAS-39グリペン戦闘機をF-39戦闘機として採用、36機の調達計画です。この調達に関して、スウェーデン製戦闘機採用のバーターとしてブラジル製輸送機をスウェーデンが購入するという契約が結ばれました。
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 AS-39/F-39戦闘機はナベガンデス港に運び込まれ、ナベガンデス空港において初飛行準備が行われました、そして離陸した戦闘機はそのままエンブラエル社サンパウロ州ガビアオペイコト工場に設置されたグリペン飛行試験センターにおいて最終点検を行い、初度作戦能力獲得まではガビアオペイコト工場におかれたのちに空軍へ配備されることとなります。

 サーブ社が製造するJAS-39戦闘機、ブラジル空軍が採用したのはグリペンEという改良型です。サーブ社ではブラジル空軍とともにブラジル海軍へも当初売込みを行っており、この際に提案されたのが、シーグリペン空母艦載機でした。この計画が実現していれば、スウェーデン初の空母艦載機開発となりましたが、空母型の開発は実現しませんでした。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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