北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】デーゼンヴェンプロヴィンシェン級フリゲイト改修とアメリカSLCM-N海上発射核巡航ミサイル計画

2023-09-19 20:00:42 | インポート
■防衛フォーラム
 今回は海軍関連の話題を集めました。ロシアウクライナ戦争により欧州諸国の海軍力増強が進められると同時に第三世界での装備国産化の試みが進んでいます。

 オランダ海軍はデーゼンヴェンプロヴィンシェン級ミサイルフリゲイト2隻の近代化改修を開始します、デーゼンヴェンプロヴィンシェン級ミサイルフリゲイトはNATO旗艦を務めたトロンプ級ミサイル駆逐艦の後継で指揮防空フリゲイトという位置づけで2002年より4隻が竣工、満載排水量は6050tでAPAR艦隊防空システムなどを搭載している。

 デーゼンヴェンプロヴィンシェン級ミサイルフリゲイトの改修は弾道ミサイル防衛に対応させることに軸点が置かれ、現在のスタンダードSM-2ミサイルに加えて弾道ミサイル迎撃能力を持つスタンダードSM-3運用能力を付与、加えてトマホーク巡航ミサイルの運用能力も追加し、システム改修とVLS垂直発射装置を更に8セル追加するとのこと。

 スタンダードミサイル運用能力強化とともに現在の127mm艦砲を新型に置き換え、この改修のために2024年から2029年までの間、2隻が各18か月間にわたり艦隊を離れるとしています。他方、改修が行われない2隻については後継の防空フリゲイトの建造に合わせ2032年と2033年に退役させる構想です。どの艦を延命するかはまだ発表されていません。
■インド海軍潜水艦建造提携
 インドは戦闘機はじめ高度な先進装備についても国産化の動きを強化しており艦艇もその例外ではありません。

 インド海軍は潜水艦建造提携先にドイツのティッセンクルップマリンシステムズ社を選びました、インド海軍は独自のAIP非大気依存型潜水艦建造を計画していますが、インドの潜水艦建造に当たるマザゴンドック造船はAIP潜水艦の建造技術がなく、このためにドイツで212型潜水艦を建造するティッセンクルップマリンシステムズ社が選ばれた。

 ティッセンクルップマリンシステムズ社はインド海軍へ通常動力潜水艦建造の技術支援を行った経験があり、この支援は10年間に及びます。そして1986年からドイツ製209型潜水艦を運用しており、特にロシア製キロ級潜水艦が熱帯地域での大幅な性能低下に見舞われる中で堅実な作動実績を積み、ドイツ製潜水艦へのインドの評価は高いのです。
■マレーシア海軍LCS
 東南アジアの海軍近代化は1990年代末のアジア通貨危機によりいったん停滞しましたが現在その後継艦として整備が再開される。

 マレーシア海軍は次期沿岸戦闘艦LCSの建造数を6隻から5隻へ削減しました。フランス製ゴーウィンド2500型コルベットを原型としてマレーシアのブーステッド海軍造船工廠において建造される計画であるLCS次期沿岸戦闘艦は、設計が進むとともに能力の要求未達成と建造期間の遅延、そして建造費の増大という三重苦に見舞われている構図で。

 次期沿岸戦闘艦について、2011年に示された当初計画では一番艦竣工は2019年に竣工予定でしたが進水式が2017年でまだ建造中、2026年竣工予定となっています。そして6隻を19億6000万ドルで建造する計画でしたが、5月26日の契約更新の際に追加で4億3000万ドルの要求があり、これを受けマレーシア政府は建造計画を5隻へ修正しました。
■新フリゲイトアルカハル
 輸出用フリゲイトという装備体系は日本にはなじみが無いですがドイツでは第二次大戦後に排水量3000t以上の艦艇保有を禁じられたながい時代にあって輸出専用艦を建造しぎじゅつをいじしましt

 エジプト海軍は新フリゲイトアルカハルを受領しました、ドイツのティッセンクルップマリンシステムズ社において建造されていたアルカハルは輸出用フリゲイトとして知られるMEKO-A-200EN型で4隻がエジプト海軍向けに建造され、アルカハルは2番艦、その引き渡し式は5月26日に行われています。3番艦はアルカハールで建造中という。

 MEKO-A-200EN型は満載排水量3700tで全長120m、127㎜艦砲とエクゾセミサイルを搭載しヘリコプター運用能力を持ち、従来のMEKO級フリゲイトと比較しMEKO-A-200EN型はステルス設計が特色であり、フランスのミストラル級強襲揚陸艦導入など、近年急速に増強されるエジプト海軍の水上戦闘部隊中枢を担う艦として期待されます。
■ククリ級ミサイルコルベット
 南沙諸島問題で中国との緊張が続くヴェトナム海軍はまず小型艦艇から整備するとともにインドからブラモスミサイル等の高度な装備を整備する段階に入りました。

 ヴェトナム海軍はインド海軍よりミサイルコルベットキルパンを供与されました。キルパンはククリ級ミサイルコルベットで、インドとヴェトナムは2016年に防衛協力協定を締結、中国海軍のインド洋進出を背景にインド政府はヴェトナムへ1億ドルの防衛協力基金を設定し、南シナ海での中国との緊張へヴェトナム防衛力整備を支援しています。

 ククリ級ミサイルコルベットは1989年から4隻が竣工した満載排水量1350tの小型艦艇で、旧式のスティックス対艦ミサイルを搭載しているほか、後部には飛行甲板を有しています。ヴェトナムはインド製ブラモス超音速地対艦ミサイルの導入を進めており、既に協力関係を強化していますが、数が十分ではない水上戦闘艦は心強い支援といえましょう。
■AN/UQQ-2サータスE
 アデレード級がちょっとうつっている写真で代用だ。

 オーストラリア海軍はAN/UQQ-2サータスE曳航アレイセンサーの導入についてアメリカ国務省からの輸出許可を受けました。契約規模は2億0700万ドル規模とされ、サータス船からの曳航能力をサータスEではコンテナ式モジュール型を採用し、様々な艦船からの運用を可能とさせているのが従来型のサータスに比べての優位点となっている。

 AN/UQQ-2サータスE曳航アレイセンサーは広範囲の音響情報を収集し解析するものでサータス船と呼ばれる音響測定艦から後方数kmにわたり曳航式センサーを展開、複数のセンサーを展開することで相互の共鳴を含め潜水艦情報を得ます。オーストラリア海軍は中国海軍潜水艦部隊に対応すべく、近年、対潜水艦能力の強化を重視しています。
■海上発射核巡航ミサイル
 戦術核を表に出さなければならない程にアメリカの優位性が揺らいでいるとも思えないのですがね。

 アメリカ議会下院共和党はSLCM-N海上発射核巡航ミサイル計画の発動へ前進しました、これは6月21日の下院軍事委員会においてSLCM-N海上発射核巡航ミサイル計画に関する議事録作成を2024年度国防顕現法改正に盛り込んだもので、戦略軍小委員会委員長を務めるコロラド州のダグランボーン下院議員は理由に国際環境の急変を挙げました。

 SLCM-N海上発射核巡航ミサイル計画は、現在海軍唯一の核戦力はオハイオ級戦略ミサイル原潜に搭載されたトライデントミサイル、水爆弾頭を備えた戦略核兵器の長距離運搬手段であり、かつて冷戦時代に整備された核弾頭型のトマホーク巡航ミサイルは既に退役し、アメリカ海軍には現在、全面核戦争以外で使用可能という戦術核兵器はありません。

 310億ドルがみこまれているSLCM-N海上発射核巡航ミサイル計画について、一方でシーパワー小委員会のコネチカット州選出民主党のジョーコートニー下院議員は、海軍に310億ドルの予算があれば喫緊の課題をいくつも解決することができるとし、核の搭載は搭載艦の任務偏重の要因となると懸念、核巡航ミサイルの新規開発に難色を示しています。
■MCH-101増強
 イギリスではAW-101の延命改修が始りましたね。

 海上自衛隊のMCH-101掃海輸送ヘリコプター増強へ川崎重工とレオナルドヘリコプターが契約を締結しました。これはMLU中期更新計画に基づく契約で2022年のMCH-101追加契約に続くもの。海上自衛隊はMCH-101掃海輸送ヘリコプター10機と南極観測支援用にCH-101輸送ヘリコプター3機を運用しています。配備はいずれも岩国基地です。

 MCH-101掃海輸送ヘリコプターはAN/AQS-24A空中機雷掃討システムを搭載しており、現在世界でも空中機雷掃討システムを運用しているのは日本の海上自衛隊とアメリカ海軍だけとなっています。機雷掃討を重視する海上自衛隊はKV-107とMH-53Dと早い時代から掃海艇に先行して任務にあたる掃海ヘリコプターを運用し実績を積んできました。
■イギリス,るF-35Bを2機
 空母に対する艦載機の数という日本も将来考える事になりそうな。

 イギリス空軍は空母艦載機となるF-35B戦闘機2機の新規納入を受けました。この機体はテキサス州のロッキードマーティン施設から離陸しイギリス空軍のボイジャー空中給油輸送機支援を受け、ブライズノートン空軍基地へ到着しています。イギリス海軍では空母クイーンエリザベスに加え同型艦空母プリンスオブウェールズ艤装工事が進んでいる。

 イギリス海軍は2021年に歴史的な日本訪問、第五世代戦闘機のみから構成される空母航空団とともに空母打撃群を日本の横須賀へ派遣しましたが、この際に空母の飛行甲板に在ったF-35Bの半数はアメリカ海兵隊の機体であり、F-35B戦闘機の十分な数がありませんでした。今回の追加の機体はこうした問題を多少なりとも改善することでしょう。
■カールMレビンの就役
 アーレイバーク級の建造が続く。

 アメリカ海軍はアーレイバーク級ミサイル駆逐艦73番艦のカールMレビンの就役式典を挙行しました、式典は6月24日にボルティモアにて行われ、ジェネラルダイナミクスバス造船所からアメリカ海軍へ制式に引き渡されました。73番艦と多数が揃いましたがカールMレビンは最新のイージスシステムであるベースライン9が搭載されています。

 カールMレビンはミシガン州出身の上院議員であり、ミシガン州出身では最も長い期間上院議員を務めたという経緯を以て命名され、式典には元上院議員の令嬢ケイトさん、エリカさん、ローラさんも出席しました。艦番号は120、奇しくも日本の汎用護衛艦では最も新しい海上自衛隊の護衛艦あさひ型二番艦しらぬい艦番号と同じ120となっています。
■スウェーデン,ルーレア級
 カナダのハリファクス級フリゲイト写真で代用していますが外洋での法執行等を行うにもこれくらいの規模は必要となる。

 スウェーデン海軍の将来戦闘艦はルーレア級となります。現在スウェーデン海軍が保有する水上戦闘艦のうち最大のものはヴィズヴィ級コルベットで、ステルス性の高い設計が同国海軍の沿岸部における作戦に最適と脚光を浴びていましたが、実際には大型水上戦闘艦並みの建造費と特殊性過ぎるステルス性が招いた低い稼働率、限られた拡張性でした。

 将来水上戦闘艦は航空機運用能力としてヘリコプター格納庫を有するとともに、ヴィズヴィ級には欠けていた防空能力や対潜能力を有する大型水上戦闘艦として設計されます。今回発表されたのは一番艦の艦名が港町の名を冠し、ルーレアとなることで、新しい艦名は議会とともに伝統にのっとりスウェーデン国王によっても了承されることとなりました。

 ルーレア級、一番艦ルーレアにつづき二番艦は乗るショーピング、三番艦はトレルボルグ、四番艦はハルムズタッド、となります。ルーレア級コルベットあるいはルーレア級フリゲイト、その建造はスウェーデンのサーブ社により行われ、また既存の艦艇は過去海軍艦艇として命名されたものの踏襲が多いのですが、トレルボルグは過去に無い艦名です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)

コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ウクライナ情勢-黒海穀物合意... | トップ | ウクライナ情勢-モスクワ周辺... »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (成層圏)
2023-10-02 20:42:39
MCH-101は人員輸送用として追加導入されますが、早期警戒用システムのクロウズネストも搭載?出来るので、もう少し機数が欲しいですね。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

インポート」カテゴリの最新記事