■ミサイル防衛欠缺狙う事態
朝の通勤時間帯に突如の空襲警報という事態に驚かれた方も多いのではないか。本日はチェコとポーランドのF-35導入の話題を掲載する予定でしたが急遽ミサイル防衛の話題です。
北朝鮮は本日日本時間0720時過ぎ、弾道ミサイル一発を日本海と日本列島の方面へ向け発射しました。このミサイルは防衛省によれば最高到達高度1000kmで日本列島の青森県上空を0728時から0729時頃に掛けて通過し、その後に日本時間0744時頃に発射地点から4600km先の太平洋、三陸沖3200kmの我が国EEZ排他的経済水域外に落下しています。
火星12型弾道ミサイルと推測される今回のミサイル実験は、IRBM中距離弾道弾の射程となっていますが、韓国国防省などは北朝鮮が引き続きICBM大陸間弾道弾の実験や核実験の強行に踏み切る可能性があるとして警戒を強めています。なお、今回の飛翔距離4600kmは北朝鮮が過去に実施した弾道ミサイル実験と比較しましても、最長の飛翔距離でした。
マッハ17、今回の火星17型弾道ミサイルと推測されるミサイルは、韓国合同参謀本部の発表によれば最高速度はマッハ17に達したとのことで、射程が長い分だけ落下速度も速く、ミサイル防衛など今後の課題を残した形です。なお、防衛省では我が国への落下の危険性がなかったとして今回も、迎撃ミサイルなどによる破壊措置は実施していません。
Jアラートが発令され、当初は青森県と小笠原諸島など東京都島嶼部にミサイル落下の警報が発令、地下などの頑丈な施設に待避するよう呼びかけられました。小笠原諸島に発令されたのは、推測ですが、青森県上空を飛翔し着弾の危険性があったこと、青森県に発令されたのは切り離したミサイルの上昇用ブースターが落下する危険があったと考えられます。
Jアラートは東京都島嶼部への発令が解除され、代えて青森県に加えて北海道が対象となりました、これは予想以上に弾道ミサイルが上昇したために切り離したブースターの飛散範囲が増大する懸念があったと推測するのですが、幸いにして地上や船舶及び航空機へのミサイルによる被害はありませんでした。ただ、学校行事の中止や鉄道ダイヤなどは乱れた。
Nネットなどのミサイル警戒情報に加え、NHKなどすべてのテレビ網を通じて一斉に警報を発令、こういうのも弾道ミサイルの日本上空通過は2017年以来の事例であり、1998年のテポドン1号の日本上空通過以降でも特異な事例となっています。ただ、Jアラートによる早期探知と警報システムはかなり迅速に機能し、そして発令された、という印象ですね。
青森県上空を通過した弾道ミサイル、警戒した点はこれが実戦なのか実験なのか、一文字しか違いませんが絶対に前者でないといいきれない点でしょうか。Jアラートが発令され鉄道など公共交通機関が一斉に運行停止されたことで驚かれた方は多いでしょうし行き過ぎではないか、こう思われた方もいるかもしれません、ただ理由がある、それも深刻なもの。
高高度核爆発、今回の北朝鮮ミサイルが実験であったのか実戦であったのか、実験であったとわかったのは爆発せずにそのまま太平洋上へ飛去ったためです。そして仮に実戦であるならば、少なくとも北朝鮮は核兵器を実験専用の科学的産物ではなく、抑止力として用いるという軍事的なものであると発言はしています、すると可能性が出ます、攻撃という。
核攻撃に際しては地上の防空システムや通信網を破壊するために、まず最初に高高度核爆発を引き起こし、EMP核電磁パルスにより防護されていない電子機器や電波通信などによる社会システムを一旦破壊し、混乱させ防空能力を低下させた上で、主目標である軍事基地や、政経中枢地域への核攻撃を行います、すると今回の軌道がその軌道と重なるのです。
EMP核電磁パルスは電線はもちろんあらゆるコイル状のものから電子機器に侵入し過電流を半導体に流すことで焼き切るものです。これは雷サージ対策のようなマイクロ秒単位で過電流を遮断する防護装置にたいしてEMPはピコ秒単位で侵入するために防護が成り立たず、携帯電話やコンピュータ、半導体を用いる自動車や機械を過電流により破壊する。
対策として電子機器ではEMPの進入経路となる蓋などの部分に電波吸着材などを張り付け、回路そのものを金属皮膜で覆う、銅線ではなく光ファイヴァーを用いるなどの施策はあるのですが、1980年代、核戦争がある程度発生すると想定された時代には社会基盤の重要インフラでの防護の取り組みがありましたが、その後は効率優先にて無視されています。
Jアラートでの警戒を促すのは、仮に高高度核爆発などが発生した場合は、その次の警戒情報を受信する前にテレビとスマートフォンなどはEMPにより破壊されます、そしてEMPはお手持ちの電子機器を破壊することが目的ではなく、その次に行う核攻撃への準備段階を示す。だからこそ、その本番の核攻撃の前に避難を呼びかけるのが目的といえましょう。
ミサイル防衛については、課題が残りました。もともと日本では2018年に陸上配備型イージスミサイル防衛システムイージスアショアを秋田県と山口県に建設する方針で、2025年には運用開始となる計画でしたが、迎撃に発射したミサイルから切り離されたブースターが敷地外に落下する可能性から2020年に計画そのものが両県ともに中止されています。
ミサイル防衛にはイージス艦、こういう認識ですが、海上自衛隊のイージス艦は、こんごう型4隻、あたご型2隻、まや型2隻の8隻体制、しかしこれらはミサイル護衛艦であり、艦隊防空用の艦艇ですので24時間の防空は可能でも365日の常時遊弋を想定したものではありません。来年度概算要求でようやくミサイル防衛専用艦が事項要求される事となった。
核は抑止力というが、使う前提を誇示してこそ。ミサイル防衛専用艦は長期間の洋上警戒を念頭として船体を大型化させる方針が示されていますが、これも来年度予算に計上されたとして防衛計画から設計を経て実際に建造されるまでは2025年以降となるでしょう。日本は当面、北朝鮮からの核攻撃という現実の脅威に、向き合ってゆかなければなりません。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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朝の通勤時間帯に突如の空襲警報という事態に驚かれた方も多いのではないか。本日はチェコとポーランドのF-35導入の話題を掲載する予定でしたが急遽ミサイル防衛の話題です。
北朝鮮は本日日本時間0720時過ぎ、弾道ミサイル一発を日本海と日本列島の方面へ向け発射しました。このミサイルは防衛省によれば最高到達高度1000kmで日本列島の青森県上空を0728時から0729時頃に掛けて通過し、その後に日本時間0744時頃に発射地点から4600km先の太平洋、三陸沖3200kmの我が国EEZ排他的経済水域外に落下しています。
火星12型弾道ミサイルと推測される今回のミサイル実験は、IRBM中距離弾道弾の射程となっていますが、韓国国防省などは北朝鮮が引き続きICBM大陸間弾道弾の実験や核実験の強行に踏み切る可能性があるとして警戒を強めています。なお、今回の飛翔距離4600kmは北朝鮮が過去に実施した弾道ミサイル実験と比較しましても、最長の飛翔距離でした。
マッハ17、今回の火星17型弾道ミサイルと推測されるミサイルは、韓国合同参謀本部の発表によれば最高速度はマッハ17に達したとのことで、射程が長い分だけ落下速度も速く、ミサイル防衛など今後の課題を残した形です。なお、防衛省では我が国への落下の危険性がなかったとして今回も、迎撃ミサイルなどによる破壊措置は実施していません。
Jアラートが発令され、当初は青森県と小笠原諸島など東京都島嶼部にミサイル落下の警報が発令、地下などの頑丈な施設に待避するよう呼びかけられました。小笠原諸島に発令されたのは、推測ですが、青森県上空を飛翔し着弾の危険性があったこと、青森県に発令されたのは切り離したミサイルの上昇用ブースターが落下する危険があったと考えられます。
Jアラートは東京都島嶼部への発令が解除され、代えて青森県に加えて北海道が対象となりました、これは予想以上に弾道ミサイルが上昇したために切り離したブースターの飛散範囲が増大する懸念があったと推測するのですが、幸いにして地上や船舶及び航空機へのミサイルによる被害はありませんでした。ただ、学校行事の中止や鉄道ダイヤなどは乱れた。
Nネットなどのミサイル警戒情報に加え、NHKなどすべてのテレビ網を通じて一斉に警報を発令、こういうのも弾道ミサイルの日本上空通過は2017年以来の事例であり、1998年のテポドン1号の日本上空通過以降でも特異な事例となっています。ただ、Jアラートによる早期探知と警報システムはかなり迅速に機能し、そして発令された、という印象ですね。
青森県上空を通過した弾道ミサイル、警戒した点はこれが実戦なのか実験なのか、一文字しか違いませんが絶対に前者でないといいきれない点でしょうか。Jアラートが発令され鉄道など公共交通機関が一斉に運行停止されたことで驚かれた方は多いでしょうし行き過ぎではないか、こう思われた方もいるかもしれません、ただ理由がある、それも深刻なもの。
高高度核爆発、今回の北朝鮮ミサイルが実験であったのか実戦であったのか、実験であったとわかったのは爆発せずにそのまま太平洋上へ飛去ったためです。そして仮に実戦であるならば、少なくとも北朝鮮は核兵器を実験専用の科学的産物ではなく、抑止力として用いるという軍事的なものであると発言はしています、すると可能性が出ます、攻撃という。
核攻撃に際しては地上の防空システムや通信網を破壊するために、まず最初に高高度核爆発を引き起こし、EMP核電磁パルスにより防護されていない電子機器や電波通信などによる社会システムを一旦破壊し、混乱させ防空能力を低下させた上で、主目標である軍事基地や、政経中枢地域への核攻撃を行います、すると今回の軌道がその軌道と重なるのです。
EMP核電磁パルスは電線はもちろんあらゆるコイル状のものから電子機器に侵入し過電流を半導体に流すことで焼き切るものです。これは雷サージ対策のようなマイクロ秒単位で過電流を遮断する防護装置にたいしてEMPはピコ秒単位で侵入するために防護が成り立たず、携帯電話やコンピュータ、半導体を用いる自動車や機械を過電流により破壊する。
対策として電子機器ではEMPの進入経路となる蓋などの部分に電波吸着材などを張り付け、回路そのものを金属皮膜で覆う、銅線ではなく光ファイヴァーを用いるなどの施策はあるのですが、1980年代、核戦争がある程度発生すると想定された時代には社会基盤の重要インフラでの防護の取り組みがありましたが、その後は効率優先にて無視されています。
Jアラートでの警戒を促すのは、仮に高高度核爆発などが発生した場合は、その次の警戒情報を受信する前にテレビとスマートフォンなどはEMPにより破壊されます、そしてEMPはお手持ちの電子機器を破壊することが目的ではなく、その次に行う核攻撃への準備段階を示す。だからこそ、その本番の核攻撃の前に避難を呼びかけるのが目的といえましょう。
ミサイル防衛については、課題が残りました。もともと日本では2018年に陸上配備型イージスミサイル防衛システムイージスアショアを秋田県と山口県に建設する方針で、2025年には運用開始となる計画でしたが、迎撃に発射したミサイルから切り離されたブースターが敷地外に落下する可能性から2020年に計画そのものが両県ともに中止されています。
ミサイル防衛にはイージス艦、こういう認識ですが、海上自衛隊のイージス艦は、こんごう型4隻、あたご型2隻、まや型2隻の8隻体制、しかしこれらはミサイル護衛艦であり、艦隊防空用の艦艇ですので24時間の防空は可能でも365日の常時遊弋を想定したものではありません。来年度概算要求でようやくミサイル防衛専用艦が事項要求される事となった。
核は抑止力というが、使う前提を誇示してこそ。ミサイル防衛専用艦は長期間の洋上警戒を念頭として船体を大型化させる方針が示されていますが、これも来年度予算に計上されたとして防衛計画から設計を経て実際に建造されるまでは2025年以降となるでしょう。日本は当面、北朝鮮からの核攻撃という現実の脅威に、向き合ってゆかなければなりません。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)