■特報:世界の防衛,最新論点
アメリカ大統領選挙はバイデン新大統領誕生で確実となりましたが、新政権は中国の軍事力による現状変更と向き合わねばなりません、これは日本の問題でもある。
アメリカのトランプ政権はアメリカ大統領選挙投票前の数週間のうちに、台湾への防衛装備品供与を、極めて短期間のうちに行われたものとしては異例の水準で実施しました。台湾への武器供与は中国政府の反発を招く事は必至ですが、自然衰弱のように武器の旧式化が進む台湾はどこかで新装備調達に踏切らねば、強大化する中国に呑みこまれてしまう。
台湾への防衛装備品供与が実現した背景には、世界が新型コロナウィルスCOVID-19の流行禍に苦しめられる最中、漁夫の利を得る様に中国軍が台湾へ軍事圧力を掛けている切迫した状況下で、軍事均衡を維持するうえで必要という、ぎりぎりの軍事均衡を保つための選択肢だったのかもしれません。しかし以下に示すアメリカの武器輸出は、意外な規模だ。
台湾は澎湖諸島へホークミサイル部隊展開を再開したもようです。蔡英文総統の視察写真などから、ホークミサイル部隊展開、これは少なくとも9月下旬頃から再開されていた。MIN-23ホーク地対空ミサイルはアメリカ製戦術防空ミサイルで射程は50km程度、旧式ではありますがミサイル本体の冗長性が高く最新鋭の電子機器への換装が行われています。
澎湖諸島は台湾海峡上の台湾領域です。ホークミサイルを澎湖諸島へ展開する背景には今年に入り中国大陸からの国籍不明機の接近が4000回を越えるという、過去例のない規模により中国軍の軍事圧力が高まっている為で、中国軍の防空制圧能力は現段階では限定的といい、ホークミサイルは中国軍の奇襲的な接近に対して確たる対処能力を求められます。
こうした中でアメリカ政府は10月21日、台湾に空対地ミサイルなど18億ドル相当の防衛装備品を売却する方針を示しました。供与される装備品はHIMARS装輪式高機動ロケットシステムATACMSロケットとSLAM-ERが135発、これはハープーンミサイルにトマホークミサイル用主翼等を取り付け射程を250km以遠に延伸した等が含まれています。
台湾海峡においての防衛を強化するかまえ。台湾はここ数年、アメリカからの装備調達を強化しています。こういうのも2010年代以降中国の政治圧力が特に厳しくなったことより多くの国からの防衛装備品供与を受けられない厳しい状況となっていますが、国産装備開発には限界もあり、2025年までにアメリカなどからの装備調達にて一定の近代化を見込む。
アメリカ国務省は10月26日、台湾へのハープーン沿岸防衛システム及びミサイル400発を24億ドルにて売却認可する方針を明らかにしました。ハープーンSLAMを適用した最新型のハープーンシステムで射程は250km以上に上ると見られています。ハープーン沿岸防衛システムは四連装発射装置を車両化したもので着上陸阻止の重要な装備といえます。
ハープーンミサイルの地上発射型が400発配備されるならば、台湾有事が現実のものとなった際には台湾に接近する中国水陸両用戦部隊はミサイルの津波に曝される事となりますし、ATACMSは大型暖冬により中国沿岸部の兵力集積地に大きな圧力を発揮させられましょう。SLAM-ERは台湾の旧式化するF-16Aを最新鋭の戦闘攻撃機に若返らせるものだ。
実のところ、ATACMSロケットとSLAM-ERに続く調達発表であり修正かと情報に混乱しましたが新規調達となっています。ただ、中国側の反発は必至、米中摩擦激化が懸念です。特にSLAM-ERは射程が大きく、台湾としては中国の台湾島侵攻が現実のものとなった際、策源地攻撃に喉から手が出るほど必要とする装備ですが、供与実現したのは意外でした。
アメリカ政府は11月3日、台湾へMQ-9B無人攻撃機4機を含む6億ドル規模の防衛装備品供与を決定し議会に通知しました。台湾外交部は今回のMQ-9B供与について声明を発表し、能力と自信を持たせるもの、と強調しました。台湾はトランプ政権時代、過去にアメリカが中国反発を恐れ回避していた台湾への武器供与を再開し今回で10回目となります。
MQ-9B無人機はMQ-9を改良したものでスカイガーディアンの愛称で知られています。最大の特色は航空過密空域での運用を期したもので欧州無人機飛行規制に対応した改修が施されており、2018年には大西洋横断飛行に成功しました。MQ-9の派生にはこの他、民間型で武装架を有さないガーディアンがあり、こちらは日本でも海上保安庁が試験中です。
トランプ政権の決断、しかし、大統領選挙ではバイデン候補が選挙人306人を確保し次期大統領となります。バイデン政権は人権問題と国際協調により中国への圧力を高める事となるでしょうが、一方で現実的軍事緊張へ如何に臨むかは未知数で、これら装備品が着実に台湾へ引き渡されるか、同等の抑止力をアメリカが前方展開させるか、注視しましょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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アメリカ大統領選挙はバイデン新大統領誕生で確実となりましたが、新政権は中国の軍事力による現状変更と向き合わねばなりません、これは日本の問題でもある。
アメリカのトランプ政権はアメリカ大統領選挙投票前の数週間のうちに、台湾への防衛装備品供与を、極めて短期間のうちに行われたものとしては異例の水準で実施しました。台湾への武器供与は中国政府の反発を招く事は必至ですが、自然衰弱のように武器の旧式化が進む台湾はどこかで新装備調達に踏切らねば、強大化する中国に呑みこまれてしまう。
台湾への防衛装備品供与が実現した背景には、世界が新型コロナウィルスCOVID-19の流行禍に苦しめられる最中、漁夫の利を得る様に中国軍が台湾へ軍事圧力を掛けている切迫した状況下で、軍事均衡を維持するうえで必要という、ぎりぎりの軍事均衡を保つための選択肢だったのかもしれません。しかし以下に示すアメリカの武器輸出は、意外な規模だ。
台湾は澎湖諸島へホークミサイル部隊展開を再開したもようです。蔡英文総統の視察写真などから、ホークミサイル部隊展開、これは少なくとも9月下旬頃から再開されていた。MIN-23ホーク地対空ミサイルはアメリカ製戦術防空ミサイルで射程は50km程度、旧式ではありますがミサイル本体の冗長性が高く最新鋭の電子機器への換装が行われています。
澎湖諸島は台湾海峡上の台湾領域です。ホークミサイルを澎湖諸島へ展開する背景には今年に入り中国大陸からの国籍不明機の接近が4000回を越えるという、過去例のない規模により中国軍の軍事圧力が高まっている為で、中国軍の防空制圧能力は現段階では限定的といい、ホークミサイルは中国軍の奇襲的な接近に対して確たる対処能力を求められます。
こうした中でアメリカ政府は10月21日、台湾に空対地ミサイルなど18億ドル相当の防衛装備品を売却する方針を示しました。供与される装備品はHIMARS装輪式高機動ロケットシステムATACMSロケットとSLAM-ERが135発、これはハープーンミサイルにトマホークミサイル用主翼等を取り付け射程を250km以遠に延伸した等が含まれています。
台湾海峡においての防衛を強化するかまえ。台湾はここ数年、アメリカからの装備調達を強化しています。こういうのも2010年代以降中国の政治圧力が特に厳しくなったことより多くの国からの防衛装備品供与を受けられない厳しい状況となっていますが、国産装備開発には限界もあり、2025年までにアメリカなどからの装備調達にて一定の近代化を見込む。
アメリカ国務省は10月26日、台湾へのハープーン沿岸防衛システム及びミサイル400発を24億ドルにて売却認可する方針を明らかにしました。ハープーンSLAMを適用した最新型のハープーンシステムで射程は250km以上に上ると見られています。ハープーン沿岸防衛システムは四連装発射装置を車両化したもので着上陸阻止の重要な装備といえます。
ハープーンミサイルの地上発射型が400発配備されるならば、台湾有事が現実のものとなった際には台湾に接近する中国水陸両用戦部隊はミサイルの津波に曝される事となりますし、ATACMSは大型暖冬により中国沿岸部の兵力集積地に大きな圧力を発揮させられましょう。SLAM-ERは台湾の旧式化するF-16Aを最新鋭の戦闘攻撃機に若返らせるものだ。
実のところ、ATACMSロケットとSLAM-ERに続く調達発表であり修正かと情報に混乱しましたが新規調達となっています。ただ、中国側の反発は必至、米中摩擦激化が懸念です。特にSLAM-ERは射程が大きく、台湾としては中国の台湾島侵攻が現実のものとなった際、策源地攻撃に喉から手が出るほど必要とする装備ですが、供与実現したのは意外でした。
アメリカ政府は11月3日、台湾へMQ-9B無人攻撃機4機を含む6億ドル規模の防衛装備品供与を決定し議会に通知しました。台湾外交部は今回のMQ-9B供与について声明を発表し、能力と自信を持たせるもの、と強調しました。台湾はトランプ政権時代、過去にアメリカが中国反発を恐れ回避していた台湾への武器供与を再開し今回で10回目となります。
MQ-9B無人機はMQ-9を改良したものでスカイガーディアンの愛称で知られています。最大の特色は航空過密空域での運用を期したもので欧州無人機飛行規制に対応した改修が施されており、2018年には大西洋横断飛行に成功しました。MQ-9の派生にはこの他、民間型で武装架を有さないガーディアンがあり、こちらは日本でも海上保安庁が試験中です。
トランプ政権の決断、しかし、大統領選挙ではバイデン候補が選挙人306人を確保し次期大統領となります。バイデン政権は人権問題と国際協調により中国への圧力を高める事となるでしょうが、一方で現実的軍事緊張へ如何に臨むかは未知数で、これら装備品が着実に台湾へ引き渡されるか、同等の抑止力をアメリカが前方展開させるか、注視しましょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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