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【京都幕間旅情】豊国神社-方広寺,江戸時代越え秀吉世界への勲功認めた明治帝勅令の再興

2024-09-04 20:03:32 | 写真
■国家安康君臣豊楽の鐘と共に
 東山の大和大路正面、京都駅から鴨川を越えて東へ散策の歩みを進めますと中々に興味深い街並みと情感の移ろいがあります。

 豊国神社と方広寺、太閤豊臣秀吉に所縁ある寺社仏閣は共に東山区大和大路正面茶屋町に並んでいまして、参拝者と拝観者を日々迎えています。大和大路正面は洛中一帯を見守る要地にありまして、此処には慶長年間1599年以来より太閤秀吉が永く鎮座しています。

 明治前夜の慶応4年即ち1868年、明治天皇大阪行幸に際し天皇は自ら豊臣秀吉について、“皇威を世界に宣べ数百年経って尚寒心させる国家に大勲功あるは今古に超越するもの”としまして、江戸地最初期から荒廃に任されていました豊国神社再興の勅令を出しました。

 維新を経て新国家建設を進める明治政府には喫緊の課題は幕末に相次ぎ高まった列強軍事圧力を前に既に屈した清国と圧力に曝される朝鮮と共に場当たり的に妥協し締結された不平等条約を改正すると共に軍事圧力を跳ね除ける事でした。ここに明治帝は秀吉を示した。

 瓦解とも称される大政奉還は武家社会の終焉と新時代の到来でもありましたが、当方がかつて歴史に接した際に驚いたのは江戸時代一杯、豊国神社は破却される事無く此処東山の地に維持されていたという事で、徳川と豊臣の歴史を思いだせば意外とさえ言えましょう。

 旧別格官幣社であり別表神社である豊国神社、主祭神に豊臣秀吉を祀る神社です。慶長年間1598年にこの世を去った秀吉は伏見城内に安置されていましたが、没翌年に遺命へ従い方広寺東山大仏東方の阿弥陀ヶ峰山頂に埋葬される事となり、此処に今も豊国神社が在る。

 新八幡として祀るように遺言した太閤秀吉ですが、朝廷は豊国乃大明神として正一位の神階を贈り社殿を築きました。そしてこの地は方広寺、天台宗寺院として方広寺盧舎那仏大仏殿が豊臣秀吉の発願により文禄年間1595年に木食応其の手にて建立されているのですね。

 国家安康君臣豊楽、中学校社会科の教科書にも記されるこの一文は家康を分断し豊臣再興を期している陰謀の表れだ、としまして慶長年間の1614年から1615年にかけての大坂の陣、大阪城落城へと繋がります。その国家安康君臣豊楽が記された鐘が、方広寺にある。

 方広寺にはくだんの国家安康君臣豊楽を記した鐘が鐘楼に今も維持されていまして、これも分り易く国家安康君臣豊楽の部分に白線が記されています。復元ではなく実物が大坂の陣と豊臣氏滅亡を経ても維持されている事は知った当時に新鮮というか、驚きでしたが。

 北政所は大阪の陣により大坂城が落城する様子を此処からほど近い高台寺より夜闇が遠く紅蓮の焔に染まる悲しい光景として視ているともいわれますが、豊臣氏助命嘆願は強く行わなかったものの豊国神社と方広寺については破却から逃れるよう幕府に嘆願したという。

 江戸時代にも豊国神社は関ヶ原の戦い西軍を陣取った武将の寄進と共に参拝者で栄華を極め、という事は流石に無く、幕府は豊国神社と方広寺の維持は認めつつ、しかし豊国神社については以後一切の修繕や改修を禁じて、いわば封印する形での存続を認めたとのこと。

 明治天皇大阪行幸に際しての再興の勅令は、幕末動乱に焼けた洛中の再興が始まると共に併せて荒廃に任せる豊国神社をそのままとするに忍びなかったという大御心もあるのでしょうか。再興に際して二条城や南禅寺に残る秀吉の伏見城遺構を移築し充てられています。

 唐門は国宝指定となっていまして南禅寺塔頭金地院から移築したものです。しかし大本を辿れば伏見城まで至るとの事でして、いやはや安土桃山時代の遺構は明治時代にも移築できる形で残っていたと驚くと共に、京都大改造始めその遺功を覚えていたと感慨深いです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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