北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】レオパルト2 A-RC3.0とM-10ブッカー機動砲,LRPM長距離精密兵器プログラム

2024-09-09 20:00:48 | インポート
■防衛フォーラム
 今回も時間が有りませんので記事の文章は兎も角写真はありもので代用です。

 スペインオーストリア共同開発のASCOD装甲戦闘車にアクティヴ防護装置が搭載されます。これはBSDA黒海航空宇宙防衛展2024においてゼネラルダイナミクスヨーロッパランドシステムズ社が出展したASCOD装甲戦闘車に関するもので、イスラエルのラファエル社製トロフィーアクティヴ防護システムがASCODに搭載されていました。

 ASCOD装甲戦闘車はオーストリアとスペインが第三世代戦車に随伴可能な装甲戦闘車の導入を期して共同開発したもので、エンジンや変速装置などで独自仕様を活かしやすい構造を採用しており、イギリスが重装甲型をエイジャックス装甲偵察車として、アメリカが機動砲型をM-10ブッカーとして、またフィリピン軍も軽戦車として採用した。

 BSDA黒海航空宇宙防衛展2024にASCODが展示された背景にはルーマニア軍は新しく33億ドルを投じて装甲戦闘車298両を導入する計画を進めており、ASCODがその売り込みを進めているため。このほか韓国がハンファAS-21レッドバック装甲戦闘車、ドイツがラインメタルKF-41リンクス装甲戦闘車を提案し、2024年内に決定する予定です。


 アメリカ陸軍にM-10ブッカー機動砲の納入が開始されました。ジェネラルダイナミクスランドシステムズ社によれば試作車以外として低量生産型のM-10ブッカー機動砲の納入が開始されたもので、低量生産では先ず96両が陸軍へ納入され、歩兵旅団戦闘団主体の師団へ3個中隊基幹の機動砲大隊が編成され、火力支援などに充てられるもの。

 M-10ブッカー機動砲は戦闘重量42tで105mm砲を搭載、その原型はスペインとオーストラリアが共同開発したASCOD装甲戦闘車であり、重量が大幅に増加していますが元々派生型の設計を想定していたASCODからグリフィンⅡ軽戦車が開発、これをアメリカ陸軍が軽戦車ではなく火力支援に充てる機動砲として2023年に制式採用したもの。


 カナダ軍がJDAM誘導爆弾を導入計画についてアメリカ国務省が有償軍事供与許可を公表しました。今回導入されるものはJDAM誘導爆弾の誘導用に用いる尾部誘導キットとなっています。今回のJDAM導入規模は690発分の9640万ドル相当、ただカナダ議会では前回210発分を導入した際の1610万ドルとの費用の差が問題となったもよう。

 JDAMはGPS誘導方式の精密誘導爆弾で従来のレーザー誘導爆弾が悪天候などでレーザー反射光を検知できない状況では誘導できないのに対して、GPS電波はこうした影響を受けず、GPS妨害に対しても軍用GPS電波は妨害を民生用GPSほど受けず、高高度から投下した場合、28km先の目標に命中させられるとボーイング社は公表しています。


 ルーマニア軍が導入するAIM-9Xサイドワインダーミサイルの輸出がアメリカ国務省により承認されました。AIM-9Xはサイドワインダーブロック2と呼ばれる新世代の短距離空対空誘導弾です。ルーマニア空軍は冷戦時代のソ連製戦闘機後継としてF-16戦闘機を採用しており、このためのアメリカ製空対空ミサイルを必要としていました。

 AIM-9Xサイドワインダーブロック2ミサイルの導入はルーマニア政府が最大300発の導入を要請していまして、今回供給されるのは3億4080万ドル規模とのこと。サイドワインダーシリーズは改良を重ね既に11万発が製造されています。既に27か国で採用されておりスウェーデンではライセンス生産も実施、信頼性の高さで知られています。


 スウェーデンのBAEシステムズボフォース社は装甲キャビン型8×8トラック48両を導入します。これはスウェーデンのBAEシステムズボフォース社が製造するアーチャー装輪自走榴弾砲用の車体となるもので、納入はHX装甲キャブシャーシを備えたHX-8×8トラック、ドイツのラインメタル社が製造しているものです。

 アーチャー装輪自走榴弾砲はFH-77榴弾砲を基に自動装填装置を加えて52口径の長砲身に延伸した自走榴弾砲で、48両のトラック納入費用は7100万ドル、納入は2024年後半から2027年までに行われるとのこと。欧州ではイギリス軍の導入決定など装輪自走榴弾砲の需要が増大しており、装甲キャビンの採用により生存性を高める事がねらい。


 イスラエル国防軍は無人機対策に地上配備型M-61機関砲を検討しています。イスラエル北部国境地域での無人機攻撃増大に対応するための装備とされていて、M-61機関砲は20mm多銃身機銃でありF-15戦闘機やF-16戦闘機の標準的な装備であるとともにVADS防空システムとして日本でも航空自衛隊が2023年まで運用していました。

 イスラエルではM-113装甲車上にM-61機関砲を搭載し既に試験的にゴラン高原などの北部国境地域に配備しているとのイスラエル国内報道があります、ただ報道に対してイスラエル国防軍はこれを否定しています。イスラエル軍はVADSをM-113装甲車に搭載したM-163自走高射機関砲を装備していますが、報道がこれを示すのかは不明です。


 フランス政府はイスラエル企業のユーロサトリ2024参加を禁止しました。これはフランス政府によるイスラエル軍ガザ地区侵攻に対する明白な抗議であり、当初フランスは2023年10月7日に1000名以上の非戦闘員が死亡したハマスによるイスラエル攻撃を非難していましたが、イスラエルの反撃により3万5000名以上の死者が出ています。

 ラファでの難民キャンプ空爆などが決め手となり、フランス国防省はフランス政府の要請により出展予定のイスラエル企業に対し、2週間前の段階で出展停止通知をおくったとのこと。ユーロサトリは世界最大規模の防衛展であり、無人航空機やレーダーにミサイルなどの開発経験が豊富であるイスラエル防衛企業は70社以上が出展予定でした。


 オランダ軍は81mm迫撃砲を装甲戦闘車型の120mm自走迫撃砲に置き換える事を決定しました、オランダ陸軍には現在火砲と名の付くものは35門あるだけで、PzH-2000自走榴弾砲が35門、これでは2020年代のロシアウクライナ戦争などの脅威に対応できないとして45門へ増強を決定していますが、45門あればロシア軍に勝てる訳ではない。

 120mm自走迫撃砲はCV-90装甲戦闘車に搭載するミョルナー自走迫撃砲システムでCV-90近代化改修の一環として導入、2門を双連装備する自動装填装置付き迫撃砲は毎分32発の120mm迫撃砲弾を7kmから12km先に投射できるとのこと。C4Iシステムとの連接により射撃は遥かに精密で、L-16迫撃砲の射程5㎞などを圧倒出来るとのこと。


 ドイツフランス合弁のKNDS社はレオパルト2戦車無人砲塔型A-RC3.0を発表しました。レオパルト2 A-RC3.0は無人砲塔の採用と共に当然砲弾の装填も自動装填としているため、装填手を省き乗員は3名となっています、そして乗員は安全な車内の装甲カプセル内に収容され、あらゆる攻撃から乗員を防護するという触れ込みです。

 レオパルト2 A-RC3.0は複合装甲と爆発反応装甲にアクティヴ防護装置という三段構えの防護となっており、また自動装填装置は10秒間で3発の射撃が可能、主砲の後継は120mmと130mm及び140mmから選定可能で、迫撃砲を搭載しRWS遠隔操作銃塔には30mm機関砲を搭載、戦闘重量は60tにまとめられているとのこと。


 アメリカ陸軍は空中発射無人機を長距離精密兵器とする研究を進めています、これはUH-60多用途ヘリコプターなどから運用される徘徊式弾薬の有用性を基に、LRPM長距離精密兵器プログラムを進めているとのこと。陸軍は暫定的にAH-64E戦闘ヘリコプターへイスラエル製の射程の長いスパイクNLOSミサイルを搭載し試験中です。

 LRPM長距離精密兵器プログラムとしてのスパイクNLOSについて、光ファイバー誘導型で25kmとTV誘導型で50kmの射程を有していますが、最適解であるかは検討余地があり、当初2023年完了予定であった選定を延長しているとのこと。一方、ヘルファイアミサイル口径のJAGM統合空対地ミサイルは射程は不足しているとのこと。


 フィリピン軍はブラモス超音速対艦ミサイル発射訓練を計画中である、これはブラモスエアロスペース社関係者の発言によるもので年内にもフィリピン海兵隊はブラモスミサイルの発射訓練を実施する見込みという。この背景にはフィリピン軍防衛力強化へブラモスエアロスペース社とともにインド政府が尽力していることも背景に含まれるもよう。

 ブラモスミサイルは射程350km、もともとはロシアのヤホント超音速対艦ミサイルをインドと共に改良した装備となっています。超音速で射程も長く迎撃が難しいとされているミサイルで、インド政府はフィリピン軍のブラモスミサイル導入に際し空軍のC-17輸送機を派遣するなど、中国軍軍事力増強の抑止力にフィリピン軍支援を強化しています。


 イスラエル陸軍は16世紀以来となる投石機を国防軍に再就役させました。何を言っているか理解できないかもしれませんが、これはイスラエル北部国境においてほぼ16世紀以来前線では正規軍が使用する事の無かった投石機で岩石の様なものを薪で包んで燃やし投射している様子が撮影され、ふざけているのではなく真剣に運用していました。

 投石機、四月一日の写真ではなく最近撮影されたもので、イスラエル軍関係者によれば投石機は国境付近の枯れ草などに放火するために用いているとのこと。投石機は新設計のものとみられ、ゴムタイヤにより牽引が可能な車体上に搭載されています。射程は50mから60mに達し、この距離ならば焼夷手榴弾の方が早いように見える謎の兵器です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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ウクライナ情勢-ドイツ政府IRST地対空ミサイル追加供与発表とNBCテレビゼレンスキー大統領クルスク戦線発言

2024-09-09 07:00:18 | 防衛・安全保障
■防衛情報-ウクライナ戦争
 AAMとSAMの弾体共通化は日本もAAM-4で試みているところではありますが量産体制を考えるともう少し踏み込むべきなのでしょう。

 ドイツのショルツ首相はウクライナへ追加のIRIS-T防空システムを供与すると発表しました。ISWアメリカ戦争研究所9月4日付ウクライナ戦況報告によれば、ドイツ政府は2026年までに17基のIRIS-T防空システムを供与すると発表しました、これは2024年9月までにドイツ政府が供与したIRIS-T防空システム7基を大きく上回ることとなります。

 IRIS-T防空システム供与計画は、まず17基のうち、4基を2024年内に供与できるとしました。IRISミサイルはサイドワインダー空対空ミサイルの後継として開発された射程25kmの装備ですが、IRIS-T-SL防空システムとして地対空ミサイル型が開発されています。これには短距離型と中距離型および長距離型が開発されています。

 短射程型のIRIS-T-SLSは射程が12kmですが、中距離型IRIS-T-SLMは射程40kmと有効射高20000mまで能力が向上、長射程型のIRIS-T-SLXは射程80kmと有効射高は30000mまで強化されています。ウクライナ軍はロシア軍の断続的な航空攻撃により現在防空装備の弾薬枯渇に苦しんでおり、ゼレンスキー大統領も供与を各国へ要請していました。
■防衛情報-ウクライナ戦争
 相手が全くリスクを受けないままならば延々と戦争が継続するという厳しい現実を直視し、逆攻撃という選択肢を日本は真剣にかんがえるべきなのかもしれない。

 ウクライナのゼレンスキー大統領はクルスク州戦況についてテレビインタビューに応じました。ISWアメリカ戦争研究所9月3日付ウクライナ戦況報告がアメリカNBCテレビにおけるゼレンスキー大統領へのインタビューを紹介しており、これによればクルスク州について、不特定期間保持することを暫定的に計画している、と述べています。

 ISWは明言を曖昧な表現としていますが、ロシアのプーチン大統領はウクライナへ停戦を示唆しており、東部占領地を一定程度の境界線まで保持した時点で其処を国境として確定する圧力をウクライナとウクライナを支援する各国に掛ける可能性があり、クルスク州一部を占領することで、ウクライナがロシア一部を国境線として示唆できることに。

 停戦は結果的にロシア軍に再編成の機会を与え、2022年2月にロシアが主張したような偽旗作戦により、例えば2024年1月に開始されたハリコフ再侵攻のような攻撃を加えてくる可能性があります。このためロシア側に、現在の国境線で停戦、という圧力を回避するために、クルスク州南部を一時的に保持しているといえるのかもしれません。

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