北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ロシア軍作戦基本単位はAU突撃部隊へ-歩兵不足のBTG大隊戦術群から転換,不足する装甲車両と増大する損耗

2023-03-19 07:01:41 | 防衛・安全保障
■臨時情報-ウクライナ情勢
 将来自衛隊が想定しなければならない脅威としての北方の隣国ロシア軍ですが昨今砲兵重視のその編成に変容が生じているもよう。

 ロシア軍は現在、従来のBTG大隊戦術群という作戦基本単位をAU突撃隊という作戦単位へ置き換えているようです、さてその編成ですが歩兵大隊を主体として特に機械化部隊ではなく浸透攻撃が可能である軽歩兵を重視した編成で、徒歩機動を重視し、ここを自走122mm榴弾砲に迫撃砲や自動擲弾銃の間接照準射撃などの火力で支えるというもの。

 AU突撃隊の特色として、BTG大隊戦術群が砲兵火力偏重で歩兵火力極小という、歩兵大隊を全般支援火力を含む4個歩兵中隊で支える運用のために、前線と砲兵の離隔が大きすぎ歩兵が不足する現状に対応したものといえるでしょう、少なくとも射程の大きすぎる火力を配備していません。ただ、これは装甲車両や戦車の前線での不足の裏返しでもある。

 戦車は、しかし前線に必ず若干数でも配備している、AU突撃隊の特色をもう一つ挙げると、不足しているものの戦車を広く薄く配備している点です。戦車は集中して運用するという原則がありますが、この場合は火力拠点として戦車が少なくとも確実になければ歩兵を前進させられないという、現代においても戦車の有効性を示す一例ともいえるでしょう。

 ロシアウクライナ戦争の戦死者数について、ウクライナ国防省もロシア国防省も国内世論の関係上を含めその正確な数字を示していませんが、ロシア軍戦死者数が15万の大台をこえているのではないか、という分析があります。無論、この数字には不確定要素が多く、正確な数字の算出は終戦を待たなければなりませんが、幾つかの点で説得力はあります。

 BTG大隊戦術群、開戦時のロシア軍基本作戦単位は十分な装甲車両と特段の砲兵火力支援に戦車中隊の支援を受けたBTG大隊戦術群が基本単位でした。しかし、分散投入や無理な転進、地形上装甲車両の運用に適さない地域への投入などで戦車や装甲車を大幅に消耗し、数の上での主力であるT-72戦車などは全保有数が半減したとの分析があるほどです。

 AU突撃隊という編成はこの現状に対応すべく軽歩兵主体の、兵站負担も薄くしかし防御力の薄い編成の部隊を大量の動員兵により編成しています。これは言い換えれば人的損耗を度外視した編成といえます。ロシア国内では反政府運動などは厳しく取り締まられますが、生産人口の深刻な減少は当面にわたりロシア経済の持続性に悪影響を及ぼすでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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