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【京都幕間旅情】下鴨神社-ひな祭り,桃の節句は春のひな流しから雛人形の鑑賞への日本社会の変容

2023-03-19 18:12:02 | 写真
■下鴨神社の流し雛
 世界は動いている、今この瞬間も社会や価値観の変容は続いているのですが源流とその精神というものの基本形は意外と変わらないものです。

 下鴨神社の流し雛、下鴨神社の年中行事はあまたありますが、主要なものに絞れば1月15日御粥祭と5月3日流鏑馬神事に5月12日御蔭祭、千僧駐屯地祭とよく重なる5月15日葵祭、あとは七月の御手洗祭といい、実は桃の節句は数多のもののひとつ、という。

 みたらし池から御手洗川への流し雛、ひな人形を流すといいますとちょっと意外に思われるかもしれませんが、もちろん荷が人形をそのまま雛段ごと川に流す壮大なテーマ、というものではありません、いやそういう祭事があっていいようにも思うが、ここのは違う。

 ひな人形を川に流すといいますと、田園に死す、という前衛演出家寺山修司監督の作品でそんな描写がありまして、八千草薫さんが出演されている作品に印象的な描写がありまして、ああいう不思議な、しかしどこにでもあるものを絶対にない取り合わせの描写は凄い。

 御手洗川、雛流しといいますが実は推進はそれほどありませんので、雛段を浮かべても、そもそも浮力があるのかという話ですが、流れないでしょう、そうここで流すのは紙の依り代なのですね、そしてひな祭りの原型も、今の様式となったのは案外に新しいという。

 身の穢れを清らかな水に流し清める、こうした一つのお祓いの儀式、という側面があるのですが、紙を依り代として流す祭事は、古典文学ですと源氏物語にも記されているとの事ですので、千年間は続いているものといえます。ただ、これがひな祭りの原点であるとも。

 原点といいますのは、ひな祭りが、女児の健やかな成長、この成長というものは疾病を含め疫闇からの鎮守というものを、特に平安朝も室町の頃も、いや実のところ近世にはいるまで乳児の生存は簡単でありませんでしたから穢れを祓う神事はとても重要だったのです。

 形代、いまでこそひな壇にひな人形を飾る風習が一般となっていますが、もともとは季節の入れ替わる時節に、女児の枕元に形代となります紙人形を置きまして、その穢れを引き受けさせた後、川にその形代を流してお清めとする、これが元々のひな祭りでありました。

 春のひな流し、この原型はひな壇をみていますと全く思い当たるものではないのですけれども、一年間身に着けたお守りを神社に戻す、実のところ桃の節句という祭事のようしきが一番近いものは、割と多くの方が身に着けているお守りの返納が似ているのかな、とおもう。

 雛人形の鑑賞、それでは今のひな祭りの在り方はいつごろから、と問われますと、これは日本の工業技術によるところが多いでしょう、埴輪土偶とフィギュアガレージキットを並べますと、日本の技術力の躍進は明らかですが、ひな人形を製造するにも高い技術が要る。

 江戸時代、人形職人は分業制ですので分業制を体系化する工業技術が普及したころ、漸く今のかたちが見えるようになりまして、全国を見ればひな人形を、ひな壇ではなく、人形だけ依り代に流す地域もあるにはあるそうですが、始めたのは昭和中期というごく最近で。

 上巳の祝い、そして今の形といいますと女児の祭事という印象ですが江戸時代初期には上洛した徳川家康が公家から上巳の祝いを受けたという記録がありまして、徳川家康女の子説、というわけではないのですが無病息災を願う女児に限らないものでもあったもよう。

 ひな祭り、見える範囲内の歴史と伝承が聞こえる範囲内に留めますと、昔からあった祭事というものと今の伝統技術とを不思議に想像で重ねてしまうものですけれども、物事は変わらないようで技術とともに変わってゆく部分も多いのだなあ、と実感するのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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