北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

六月のウクライナ戦争-長期化するロシア侵攻と世界の対ロ経済制裁に二分されるグローバル社会-見えぬ出口戦略

2022-06-01 07:00:16 | 国際・政治
■臨時情報-ウクライナ情勢
 ウクライナ戦争の六月に入りましても今にも見えぬ出口戦略という視点について。

 ウクライナが予想外の粘りを見せていると考えたのは開戦一か月後ですが、ロシアの経済制裁への粘りも意外と大きいと考えたのが開戦2カ月後、そして出口戦略のみえないままに三カ月をこえています。出口戦略というのは、ロシア経済制裁を継続するならば、ロシア産天然資源を輸入しロシア経済を支える事でウクライナ侵攻に加担する諸国と、割れた。

 世界のもう一つは日本を含めた経済的影響を覚悟してロシアと縁を切る諸国による世界の二分化です。経済制裁をいつまで継続するか、これは延々とロシアからの天然ガス供給を断念する前提で経済計画を構築するか、それともウクライナとの出口戦略で、おそらく反発するであろうウクライナ世論を無視してでもロシアに撤退の口実を与えるかということ。

 当たり前ですが多少ウクライナが反発するところを無視してでもロシアから資源を輸入するという主張が今後増大することです。もちろん、片方は即座の世界大戦に繋がる懸念があり、賛同は出来ません。ただ、世界は出口戦略を求め、一部の国には、もうよいだろうという離反の声や、安い資源で漁夫の利をしめようという声も大きくなってくる可能性が。

 ウクライナ戦争、しかしここで下手な妥協は”軍事力でどうとでもなる”という印象をロシアに与え、天然資源が通常通りに輸出できる体制となれば十年程度で経済を正常化させ軍事力をためた上で、恐らく本命であるロシア飛び地のカリーニングラードへの安全回廊構築、つまりNATO加盟国領域であるスヴァルキギャップへの侵攻に着手するでしょう。

 スヴァルキギャップでも、ここで再度欧州諸国が妥協するならば、次は東西ドイツ国境まで、西ドイツ崩壊までは望まないでしょうが、この程度は覚悟する必要がある。短期的には北海道北部へも脅威は及びます、ロシア海軍が今回のウクライナ戦争で受けた被害は限られます、それは黒海艦隊が大打撃を受けていますが、主力の北方艦隊は無傷である為だ。

 北海道に脅威が及ぶという論拠は、しかし、ロシア艦が21世紀の開戦に対応できない事が明らかとなっており、ロシアが死活的に重視する戦略ミサイル原潜の聖域をバレンツ海に確保することが難しく、すると北海道北部に圧力を掛けオホーツク海を確保することに選択肢が生まれます。故にロシアへの妥協は危険です。有るよう見えて出口はありません。

 出口戦略の難しさは、ロシアの穀物生産量での世界における地位と、欧州における天然ガス依存度の高さから、永続的にロシアへの経済制裁を行うのは難しい、という事です。いや、プーチン大統領も不老不死ではありませんので、寿命と共に気の長くなる時間で待つという選択肢もあるのかもしれませんが。すると、長期化は半年程度では済まない懸念も。

 ウクライナ支援は今後も継続されるのでしょうが、ロシアが我慢比べの様に長期戦を選択し2020年代半ばまで戦闘を続けること。ロシア軍は保管していたT-62戦車を動員し始めている、T-55は欧州通常戦力削減条約で廃棄していますが、対してT-62は歩兵支援に有用で古いですが整備性は高い、これなどはまさに長期戦を考えている証左といえるでしょう。

 簡単な出口戦略は、ロシアのウクライナ侵攻部隊に決定的な痛撃を加えることなのかもしれませんが、ロシア軍が侵攻作戦を継続できない程に例えばウクライナ空軍へのF-16戦闘機供与やHIMARSロケットシステムの配備などを思い切って行わなければ難しいでしょう。すると簡単でない選択肢、戦争を国際社会が止める出口戦略、模索の必要があります。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【防衛情報】自走榴弾砲!19... | トップ | 【京都幕間旅情】法然院,善気... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

国際・政治」カテゴリの最新記事