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新年防衛論集二〇二三【6】政治の決断は宇宙防衛に並ぶ唐突なミサイル防衛から反撃能力への急激な転換

2023-01-03 14:44:33 | 北大路機関特別企画
■唐突な政治決断と現場
 政治が決定して閣議決定で防衛省に命じてその遂行を財務省が待ったをかけるという構図で日本の防衛力整備は進むというか停滞し再編を続け最中に次の決定が来る。

 本気で航空自衛隊が宇宙からの偵察能力を大規模に開発する、というならば個人的には賛成します、それは日本が周辺国の核恫喝に対し反撃能力を通常戦力により構築するという非常に難しい施策を進めるためです。核兵器であれば敵核戦力を一気に無力化できますが、通常兵器であればかなり正確に標的を追尾し目標付近へ命中させなければなりません。

 宇宙開発に関しては"予算さえ認められるならば"IHIにも三菱重工にもロケット打ち上げ能力があります、つまり国内で循環する防衛力と防衛産業にも波及効果が期待できるためです。ただ、技術的に移動式ミサイル発射装置を宇宙からの監視能力だけですべて追尾できるのか、技術的な余地はあるのか、とも考えるのです。この点は大前提として不安だ。

 宇宙作戦、それでも疑問であるのは、今回政府は政府が保有する情報収集衛星を自衛隊へ移管するという動きもありません、国家安全保障戦略に情報収集衛星の自衛隊移管が明記されているわけでもなかったのです。こういう条件を踏まえますと、情報収集衛星を所管する内閣衛星情報センターの隷下に宇宙保安センターを設置した方が、とも考えます。

 もう一つの自衛隊、難しいのは自衛隊が自己完結の組織であり、もちろん装備製造などは民間企業に依存するのですが定期整備まで含めてかなりの部分を自前で実施しているため、宇宙分野を任務として付与する場合は宇宙関連の教育部隊を創設しなければなりませんし、宇宙作戦の戦術研究まで自ら踏み込んで行う必要がでてくるという。これは余りに負担だ。

 自衛隊が担うということはこういうことですので、ここまでの覚悟はあるのか政治の覚悟を問いたいところです。そして覚悟を決めるならば、これまでミサイル防衛のように既存の任務を削減することなく予算も人員もそのままに新任務を付与して人員のやりくりを破綻させるような選択肢よりは、もういっそもう一つ自衛隊を創っては、こう思うのですね。

 ミサイル防衛から反撃能力へ、唐突な方針変換についても不思議に思うのです。いやミサイル防衛は継続する方針となっているので無理な転換というほどではないのですけれども、ミサイル防衛に20年間を投じることなく、膨大なミサイル防衛の予算を巡航ミサイルに投じていれば、かなりの数をそろえられたのではないか、数千いや数万の、ということです。

 無駄な時間というわけではありませんが、この20年間で削減し続けた特科部隊を削減するのではなく、装備するものをFH-70榴弾砲から地対艦ミサイル連隊に置き換えれば、全般支援の第五大隊と地対艦ミサイル連隊の人員規模は同程度ですので、完全五個大隊編成の特科連隊は三個地対艦ミサイル連隊の人員規模、もの凄い数が整備できたのではないかと。

 師団を変に改編して戦力を空洞化のがたがたにしたのはミサイル防衛の予算を既存の防衛予算の枠内から捻出した事に他なりません、そんな事をせずに小泉政権時代、ミサイル防衛を行うという政治決断を行う前に、反撃能力まで議論を続けておき、反撃能力の敵の巡航ミサイル攻撃から防衛する体制に切り替えていれば、いま防衛費はもっとやすかった。

 特科連隊のFH-70榴弾砲をHIMARS高機動ロケットシステムに切替えて、日本独自に戦術ミサイルシステムの開発を行い、戦車大隊の戦車を自走高射機関砲に更新して巡航ミサイル対策に活用していれば、普通科連隊はそのまま維持することで、全国の当時の13個師団に膨大な数の地対地ミサイル部隊と巡航ミサイルや無人機を破砕する防空部隊を創れた。

 しかし、もうやってしまったといいますか、ミサイル防衛で崩壊した防衛力は建て直さねばなりません。ここで考えさせられるといいますか、皮肉だと感じたのは政府が中期防衛力整備計画を廃止し、防衛力整備計画という、一次防二次防三次防の時代まで防衛力整備を逆行させた発想を示した事です。崩壊したのだから一次防からやり直すような方式かと。

 一次防まで戻るならば、それこそ陸上防衛も再構築し、いまの9個師団6個旅団態勢を根本的に見直しては、と思うのです。ここでラジカルですが、防衛力整備法という法整備を行い、自衛隊を第一次防衛力整備計画から再構築する試案を考えてみました。防衛力整備法、法律が必要なのはその為の予算措置を事項要求として財務当局に中抜きさせないため。

 第1師団、現在の規模は師団としてみますと冷戦時代のフランス軍師団、NATO加盟国では非常に小型と称されたフランス軍師団よりも更に小型編成となっています。もっとも陸上自衛隊の師団は2000年代まで普通科連隊四個を基幹とした甲師団で定員は9000名、フランス軍の冷戦型編成に近い規模は有していました、ただこれとて師団として小型でした。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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1 コメント

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スクラップアンドビルドでは? (ドナルド)
2023-01-03 23:05:41
ミサイル防衛予算が食い込んできた時、なぜか陸自の野戦部隊の定数を減らさなかったことが、現在のバランスの悪い装備体系の原因ではないでしょうか?

「金を増やさない、人も増やさないのだから、できないことはできない」ということを明確にすることこそが重要で、(実質旅団の)超小型師団を9個、旅団を6個(+両用団と空挺団)を維持して、「陸上野戦戦力が減っていない」かのように見せかけてしまったわけです。本来は、さっさと15個旅団にまで削減された野戦部隊をはっきりと国民に示すべきでした(それでも実員14万人の陸軍としては、やや部隊が多すぎるくらい)。

そうすれば「それで良いのか?予算を増やすべきなのでは?」という議論が、より沸き起こったでしょうし、装備や部隊編成が今ほど歪になることもなく、同数の実員と予算でも、より精強な自衛隊が実現できたと思います。
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