■週報:世界の防衛,最新10論点
今回は空軍戦闘機関連の様々な情報を10の論点から見てみる事としましょう。
アメリカ防衛シンクタンクであるランド研究所はアメリカ海軍のF/A-18E/Fスーパーホーネットに関してロシアとのSu-35戦闘機に対する深刻な問題を指摘しました。F/A-18E/Fスーパーホーネットはシリア方面へ派遣されており、同国内戦に対し政府軍を支援するロシア軍との間で幾度か緊張的な状況があり、Su-35戦闘機と対峙する事も数回ありました。
F/A-18E/Fは2017年、シリア上空において敵対行動を採ったシリア軍Su-22戦闘機を撃墜した際、ロシア軍Su-35の接近を受け、この際に幾度かSu-35がF/A-18E/Fの搭載するFLIR前方赤外線探知装置の感知圏内から幾度か探知不能となり、任務を中断した上でSu-35から回避行動を採ったとしています。これはFLIRの性能上の問題と考えられます。
■仏空軍ラファール12機増強
防衛産業は維持する努力が無ければ市場原理の中で軌道に載るアで成長できないのですね。
フランスのフローレンスパルリ国防相は1月29日、フランス空軍に新たに12機のラファール戦闘機を配備させる決定を発表しました。12機のラファールは今後製造開始され2025年までに空軍へ配備させる方針です。フランス政府は2020年に18機のラファール戦闘機をギリシャへ販売しましたが、内12機は無償でフランス空軍の中古機を充てています。
ラファール戦闘機は2019年の国防計画、LPM2019-2025国防計画法に基づき129機をフランス空軍に維持させる方針ですが、ラファールを製造するダッソー社の見解として、このままフランス空軍だけの需要ではラファールの製造ラインを2025年12月までに閉鎖する可能性を示唆しており、既存のラファールを手放して新造する離れ業を行った構図です。
フランス空軍は129機というラファール保有の上限がありますが、輸出して減少した定数を補う数は員数外で、ギリシャに無償譲渡という選択肢を選びました。これは一見フランスに得るものが少ないようにも見えるものですが、フランス空軍は初期の旧式化したラファールを手放す事で最新のラファールF3Rを取得でき、製造も維持できる利点があります。
■ギリシャがラファール正式契約
ラファールはF-2戦闘機と同世代機なのですが順調に改良と進化を続けているようですね。
ギリシャ政府は2021年1月、フランスとの間でラファール戦闘機18機の調達を24億ユーロで正式契約しました。このラファール戦闘機導入計画は2020年に妥結したもので、6機の新造ラファール戦闘機と12機の中古ラファール戦闘機、これらの機体の最新仕様ラファールF3R仕様への近代化改修と、ラファール用ミサイルの取得費用が含まれています。
ラファール戦闘機は今回ギリシャに初めて供給される事となりますが、ギリシャ空軍ではフランス製ミラージュ2000戦闘機を運用中で、整備互換性等はある程度あるとしており、MICA中距離空対空ミサイル、AM-39エクゾセ空対艦ミサイル、SCALP巡航ミサイル、最新のMETEOR空対空ミサイルが今回の契約によりギリシャへ供与される事となります。
■インド空軍Su-30完納
フランカー、インド空軍のSu-30はCOVID-19さえなければ昨年に小松へ訓練展開する計画があったのですが。
インド空軍は2月、ロシアからのSu-30戦闘機最後の2機を受領し導入計画を完了したとのこと。インド空軍は近代化へSu-30戦闘機272機の導入計画を進めており、これは2004年からロシア製構成部品をインド国内で最終組み立てを行うノックダウン生産によりインド空軍へ納入されていた。最終組立を担っているのはインドの防衛産業、HAL社であった。
Su-30戦闘機はインド空軍の国産戦闘機開発の遅れなどから重視されており、特に旧式化が目立っていたMiG-21戦闘機を置換えたのがこのSu-30である。インド空軍仕様はSu-30MKIである。また導入された機体の内40機はブラモス超音速巡航ミサイル搭載能力があり、インド空軍の長距離打撃力の一端を担っている。しかし第四世代戦闘機でもある。
インド空軍は2020年より第4.5世代戦闘機としてフランスよりラファール戦闘機の受領を開始しており、当初は36機の取得計画であるが126機のオプション契約もあり、中国空軍が開発を進める第五世代戦闘機を念頭にインド空軍は第4.5世代以降の戦闘機を重視している。しかしSu-30は使いやすい機体であり、インド空軍は更に12機追加も希望している。
■韓国KF-X初号機発表間近
F-2戦闘機も育てていればここまで行けたのですが一旦努力を止めますと厳しい。
韓国防衛事業庁は現在組立が進む次期戦闘機KF-Xについてその試作初号機ロールアウトを今年四月にも実施すると発表した、韓国国内報道がありました。KF-Xはインドネシアとの共同開発が中止されるなどしたため、次期戦闘機KF-Xは初夏までに完成させるとしていた為、今回の防衛事業庁によるロールアウトは数週間予定が早まった事を意味します。
次期戦闘機KF-Xは第4.5世代戦闘機として開発が進められており、試作機の組み立ては2020年9月に開始されました。この新しい機体は韓国空軍では旧式化が進むF-4戦闘機後継機として開発が進められていたもので2026年には飛行試験を完了し、2028年には40機程度の空軍納入を計画しており、2032年までには80機を納入する計画を立てています。
■アメリカ軍のX-61A無人機
アメリカはC-130を長距離ミサイル母機にさえする計画を有しているのですけれども。
アメリカ軍のX-61A無人機はC-130輸送機からのスウォーム戦術用試験を実施したとのことです。これは国防高等研究所DARPAによりユタ州のダグウェイ試験場にて実施されました。X-61A無人機の試験は2020年から実施されており、第一回試験は2020年7月、第二回試験は2020年12月に実施され、二回目の試験では分離に失敗したとされている。
X-61Aの開発は2016年より本格化、2017年より空中発進や撤収、そしてスウォーム攻撃などの構成技術の研究から部分試作へと展開しています、試験飛行に用いられた機体が2019年より製造が進められていたもの、今回のX-61A試験ではC-130輸送機より展開していますが、実用段階となれば輸送機が居の航空機からも当社が可能となるでしょう。
スウォーム攻撃とはミツバチなどが蜂群となって攻撃する生態を無人機により再現するもので、人工知能AIにより編隊間隔を自己判断し防空システムへの飽和攻撃等を行うものとされています。スウォーム攻撃は数百単位の無人機が用いられる構想ですが、X-61Aはまだまだ技術実証段階であり、この戦術が実現するのは2030年代半ば以降となるでしょう。
■UAE輸出用F-35の差し止め
一月の政権交代は幾つかの出来事を残す事となりました。
アラブ首長国連邦へ輸出予定であったアメリカ製第五世代戦闘機F-35の輸出がアメリカのバイデン新政権により差し止めとなりました。F-35の輸出はトランプ政権が認可したもので既に有償軍事供与負担に基づくアラブ首長国連邦の支払いは完了しています。トランプ政権はアラブ首長国連邦とイスラエルとの国交正常化を背景にF-35輸出を許可しました。
F-35戦闘機の輸出停止はウォールストリートジャーナルが1月26日に報じたもので、アメリカ国務省関係者の補足発言として、F-35供与差し止めはアメリカではよくあるものであるとし、また契約終了ではなくF-35輸出についても一時的な差し止めである、としています。イエメン内戦へのバイデン政権による基本方針転換と関係していると考えられます。
■サウジ向け誘導爆弾差し止め
もう一つ一月の政権交代は幾つかの出来事を残す事となりました事例を。
サウジアラビアへ輸出予定であったアメリカ製精密誘導爆弾の供与がアメリカのバイデン新政権により差し止められたとのことです。ウォールストリートジャーナルが1月26日に報じたもので、この精密誘導爆弾はF-15SA搭載用のもので、この輸出はトランプ政権が認可したもので既に有償軍事供与負担に基づくサウジアラビアの支払いは完了しています。
トランプ政権から政権移行したバイデン新政権はイエメン内戦への有志連合による介入が非戦闘員被害を招いていると非難しており、バイデン大統領は2月6日にはイランが軍事支援するイエメンのフーシ派武装勢力へのテロ組織指定を解除しています。フーシ派はサウジアラビア油田へのミサイル攻撃等も実施し、内戦は周辺国へ影響を及ぼしています。
■F-35戦闘機用新型エンジン
F-35は開発当時に二系統のエンジンを開発する方針が一機種に統合された背景があります。
アメリカ国防総省はF-35ライトニング戦闘機block4用のエンジン製造についてプラットアンドホイットニー社との間で4920万ドルの契約を成立させたとのこと。F-35ライトニング戦闘機block4の量産は今後数カ月以内に実用化されると共にblock4.1、block4.2として更なるF-35戦闘機の改良型も順次開発が続きF-35の高いポテンシャルを維持します。
F-35のblock4.1ではAPG-81 AESAレーダー及び分散型複合開口光学情報システムDASの能力向上が行われ、無人機との連接性能として開発中のXQ-58Aヴァルキリーなどとの連携が可能となるとともに現在の搭載コンピューターと比し25倍の処理能力付与、サイドキックミサイル発射システムにより更にAMRAAMミサイル二発を機内兵装庫に収容する。
F-35戦闘機block4.2では開発中のAIM-260-JATMミサイル運用能力を付与されるとしており、JATMは射程200km以上、AIM-54フェニックスミサイルを越える極めて長い射程での交戦を標準化させます。更に新開発の低視認性増槽によりステルス性を現行の増槽ほど損なわず1186kmの戦闘行動半径をF-35に付与する事となり、既存機も改修されます。
■韓国インドネシアKF-X
日本のATD-Xも含めて開発は長期に及ぶか予算を必要としますので国際共同開発は難しい要素が残るのですよね。
インドネシア政府は去就が注目されるKF-X,韓国との戦闘機共同開発計画について計画へ残留の意思を表明しました。KF-X計画は第5世代戦闘機に準じる次世代戦闘機の開発計画で、第5世代戦闘機ほどステルス性等は求めないものの、こ限られた開発予算でも現実的に保有可能な手堅い計画を示していますが、インドネシア分担金は遅滞しましています。
KF-Xのインドネシア離脱可能性は、インドネシアがF-15EX戦闘爆撃機の契約前進を発表しラファール戦闘機の導入仮契約を表明しロシアからSu-35戦闘機の調達を発表するなど、次期戦闘機に別の機体を導入すると誤解させかねない態度が在った為ですが、インドネシアの装備調達は不透明な点が多く、過去の事例ではよく二転三転する事で知られています。
韓国との共同開発は開発費用の20%をインドネシアが負担するとしていました。韓国防衛事業庁はインドネシアが2026年までに分担金14億6000万ドル支払いに同意と発表しました。これは2026年までに実際負担されるかは断言できませんが、少なくともインドネシア側が計画残留への意思を示したものと考えてよいでしょう。試作機公開は間もなくです。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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今回は空軍戦闘機関連の様々な情報を10の論点から見てみる事としましょう。
アメリカ防衛シンクタンクであるランド研究所はアメリカ海軍のF/A-18E/Fスーパーホーネットに関してロシアとのSu-35戦闘機に対する深刻な問題を指摘しました。F/A-18E/Fスーパーホーネットはシリア方面へ派遣されており、同国内戦に対し政府軍を支援するロシア軍との間で幾度か緊張的な状況があり、Su-35戦闘機と対峙する事も数回ありました。
F/A-18E/Fは2017年、シリア上空において敵対行動を採ったシリア軍Su-22戦闘機を撃墜した際、ロシア軍Su-35の接近を受け、この際に幾度かSu-35がF/A-18E/Fの搭載するFLIR前方赤外線探知装置の感知圏内から幾度か探知不能となり、任務を中断した上でSu-35から回避行動を採ったとしています。これはFLIRの性能上の問題と考えられます。
■仏空軍ラファール12機増強
防衛産業は維持する努力が無ければ市場原理の中で軌道に載るアで成長できないのですね。
フランスのフローレンスパルリ国防相は1月29日、フランス空軍に新たに12機のラファール戦闘機を配備させる決定を発表しました。12機のラファールは今後製造開始され2025年までに空軍へ配備させる方針です。フランス政府は2020年に18機のラファール戦闘機をギリシャへ販売しましたが、内12機は無償でフランス空軍の中古機を充てています。
ラファール戦闘機は2019年の国防計画、LPM2019-2025国防計画法に基づき129機をフランス空軍に維持させる方針ですが、ラファールを製造するダッソー社の見解として、このままフランス空軍だけの需要ではラファールの製造ラインを2025年12月までに閉鎖する可能性を示唆しており、既存のラファールを手放して新造する離れ業を行った構図です。
フランス空軍は129機というラファール保有の上限がありますが、輸出して減少した定数を補う数は員数外で、ギリシャに無償譲渡という選択肢を選びました。これは一見フランスに得るものが少ないようにも見えるものですが、フランス空軍は初期の旧式化したラファールを手放す事で最新のラファールF3Rを取得でき、製造も維持できる利点があります。
■ギリシャがラファール正式契約
ラファールはF-2戦闘機と同世代機なのですが順調に改良と進化を続けているようですね。
ギリシャ政府は2021年1月、フランスとの間でラファール戦闘機18機の調達を24億ユーロで正式契約しました。このラファール戦闘機導入計画は2020年に妥結したもので、6機の新造ラファール戦闘機と12機の中古ラファール戦闘機、これらの機体の最新仕様ラファールF3R仕様への近代化改修と、ラファール用ミサイルの取得費用が含まれています。
ラファール戦闘機は今回ギリシャに初めて供給される事となりますが、ギリシャ空軍ではフランス製ミラージュ2000戦闘機を運用中で、整備互換性等はある程度あるとしており、MICA中距離空対空ミサイル、AM-39エクゾセ空対艦ミサイル、SCALP巡航ミサイル、最新のMETEOR空対空ミサイルが今回の契約によりギリシャへ供与される事となります。
■インド空軍Su-30完納
フランカー、インド空軍のSu-30はCOVID-19さえなければ昨年に小松へ訓練展開する計画があったのですが。
インド空軍は2月、ロシアからのSu-30戦闘機最後の2機を受領し導入計画を完了したとのこと。インド空軍は近代化へSu-30戦闘機272機の導入計画を進めており、これは2004年からロシア製構成部品をインド国内で最終組み立てを行うノックダウン生産によりインド空軍へ納入されていた。最終組立を担っているのはインドの防衛産業、HAL社であった。
Su-30戦闘機はインド空軍の国産戦闘機開発の遅れなどから重視されており、特に旧式化が目立っていたMiG-21戦闘機を置換えたのがこのSu-30である。インド空軍仕様はSu-30MKIである。また導入された機体の内40機はブラモス超音速巡航ミサイル搭載能力があり、インド空軍の長距離打撃力の一端を担っている。しかし第四世代戦闘機でもある。
インド空軍は2020年より第4.5世代戦闘機としてフランスよりラファール戦闘機の受領を開始しており、当初は36機の取得計画であるが126機のオプション契約もあり、中国空軍が開発を進める第五世代戦闘機を念頭にインド空軍は第4.5世代以降の戦闘機を重視している。しかしSu-30は使いやすい機体であり、インド空軍は更に12機追加も希望している。
■韓国KF-X初号機発表間近
F-2戦闘機も育てていればここまで行けたのですが一旦努力を止めますと厳しい。
韓国防衛事業庁は現在組立が進む次期戦闘機KF-Xについてその試作初号機ロールアウトを今年四月にも実施すると発表した、韓国国内報道がありました。KF-Xはインドネシアとの共同開発が中止されるなどしたため、次期戦闘機KF-Xは初夏までに完成させるとしていた為、今回の防衛事業庁によるロールアウトは数週間予定が早まった事を意味します。
次期戦闘機KF-Xは第4.5世代戦闘機として開発が進められており、試作機の組み立ては2020年9月に開始されました。この新しい機体は韓国空軍では旧式化が進むF-4戦闘機後継機として開発が進められていたもので2026年には飛行試験を完了し、2028年には40機程度の空軍納入を計画しており、2032年までには80機を納入する計画を立てています。
■アメリカ軍のX-61A無人機
アメリカはC-130を長距離ミサイル母機にさえする計画を有しているのですけれども。
アメリカ軍のX-61A無人機はC-130輸送機からのスウォーム戦術用試験を実施したとのことです。これは国防高等研究所DARPAによりユタ州のダグウェイ試験場にて実施されました。X-61A無人機の試験は2020年から実施されており、第一回試験は2020年7月、第二回試験は2020年12月に実施され、二回目の試験では分離に失敗したとされている。
X-61Aの開発は2016年より本格化、2017年より空中発進や撤収、そしてスウォーム攻撃などの構成技術の研究から部分試作へと展開しています、試験飛行に用いられた機体が2019年より製造が進められていたもの、今回のX-61A試験ではC-130輸送機より展開していますが、実用段階となれば輸送機が居の航空機からも当社が可能となるでしょう。
スウォーム攻撃とはミツバチなどが蜂群となって攻撃する生態を無人機により再現するもので、人工知能AIにより編隊間隔を自己判断し防空システムへの飽和攻撃等を行うものとされています。スウォーム攻撃は数百単位の無人機が用いられる構想ですが、X-61Aはまだまだ技術実証段階であり、この戦術が実現するのは2030年代半ば以降となるでしょう。
■UAE輸出用F-35の差し止め
一月の政権交代は幾つかの出来事を残す事となりました。
アラブ首長国連邦へ輸出予定であったアメリカ製第五世代戦闘機F-35の輸出がアメリカのバイデン新政権により差し止めとなりました。F-35の輸出はトランプ政権が認可したもので既に有償軍事供与負担に基づくアラブ首長国連邦の支払いは完了しています。トランプ政権はアラブ首長国連邦とイスラエルとの国交正常化を背景にF-35輸出を許可しました。
F-35戦闘機の輸出停止はウォールストリートジャーナルが1月26日に報じたもので、アメリカ国務省関係者の補足発言として、F-35供与差し止めはアメリカではよくあるものであるとし、また契約終了ではなくF-35輸出についても一時的な差し止めである、としています。イエメン内戦へのバイデン政権による基本方針転換と関係していると考えられます。
■サウジ向け誘導爆弾差し止め
もう一つ一月の政権交代は幾つかの出来事を残す事となりました事例を。
サウジアラビアへ輸出予定であったアメリカ製精密誘導爆弾の供与がアメリカのバイデン新政権により差し止められたとのことです。ウォールストリートジャーナルが1月26日に報じたもので、この精密誘導爆弾はF-15SA搭載用のもので、この輸出はトランプ政権が認可したもので既に有償軍事供与負担に基づくサウジアラビアの支払いは完了しています。
トランプ政権から政権移行したバイデン新政権はイエメン内戦への有志連合による介入が非戦闘員被害を招いていると非難しており、バイデン大統領は2月6日にはイランが軍事支援するイエメンのフーシ派武装勢力へのテロ組織指定を解除しています。フーシ派はサウジアラビア油田へのミサイル攻撃等も実施し、内戦は周辺国へ影響を及ぼしています。
■F-35戦闘機用新型エンジン
F-35は開発当時に二系統のエンジンを開発する方針が一機種に統合された背景があります。
アメリカ国防総省はF-35ライトニング戦闘機block4用のエンジン製造についてプラットアンドホイットニー社との間で4920万ドルの契約を成立させたとのこと。F-35ライトニング戦闘機block4の量産は今後数カ月以内に実用化されると共にblock4.1、block4.2として更なるF-35戦闘機の改良型も順次開発が続きF-35の高いポテンシャルを維持します。
F-35のblock4.1ではAPG-81 AESAレーダー及び分散型複合開口光学情報システムDASの能力向上が行われ、無人機との連接性能として開発中のXQ-58Aヴァルキリーなどとの連携が可能となるとともに現在の搭載コンピューターと比し25倍の処理能力付与、サイドキックミサイル発射システムにより更にAMRAAMミサイル二発を機内兵装庫に収容する。
F-35戦闘機block4.2では開発中のAIM-260-JATMミサイル運用能力を付与されるとしており、JATMは射程200km以上、AIM-54フェニックスミサイルを越える極めて長い射程での交戦を標準化させます。更に新開発の低視認性増槽によりステルス性を現行の増槽ほど損なわず1186kmの戦闘行動半径をF-35に付与する事となり、既存機も改修されます。
■韓国インドネシアKF-X
日本のATD-Xも含めて開発は長期に及ぶか予算を必要としますので国際共同開発は難しい要素が残るのですよね。
インドネシア政府は去就が注目されるKF-X,韓国との戦闘機共同開発計画について計画へ残留の意思を表明しました。KF-X計画は第5世代戦闘機に準じる次世代戦闘機の開発計画で、第5世代戦闘機ほどステルス性等は求めないものの、こ限られた開発予算でも現実的に保有可能な手堅い計画を示していますが、インドネシア分担金は遅滞しましています。
KF-Xのインドネシア離脱可能性は、インドネシアがF-15EX戦闘爆撃機の契約前進を発表しラファール戦闘機の導入仮契約を表明しロシアからSu-35戦闘機の調達を発表するなど、次期戦闘機に別の機体を導入すると誤解させかねない態度が在った為ですが、インドネシアの装備調達は不透明な点が多く、過去の事例ではよく二転三転する事で知られています。
韓国との共同開発は開発費用の20%をインドネシアが負担するとしていました。韓国防衛事業庁はインドネシアが2026年までに分担金14億6000万ドル支払いに同意と発表しました。これは2026年までに実際負担されるかは断言できませんが、少なくともインドネシア側が計画残留への意思を示したものと考えてよいでしょう。試作機公開は間もなくです。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)