ドイツ語の形容詞の付加語的用法が昨夜のドイツ語クラスのテーマだった。
先生のR氏はこれが難しくないという。確かに、名詞の前の形容詞の、またその前に定冠詞がついていれば、この場合は難しくはない。この場合について言えば、R氏の言い分はまったく正しい。
なぜなら、その場合には形容詞の変化語尾はeかenしかない。そして、主格(1格)と対格(4格)では男性名詞の対格の場合を除いて、全部の形容詞の語尾はeである。それ以外はすべて語尾はenである。すなわち、男性名詞の対格の場合はenになっている。複数名詞につく形容詞の変化もすべてenである。この場合は文法用語では形容詞の弱変化の場合である。
いつでも名詞の前に定冠詞がついているのなら、まったく問題はないのだが、不定冠詞がつくとちょっと様相がかわる。いくつかの場合で上に述べた弱変化からのずれが生じる。この場合は混合変化と言われている。
基本は弱変化の語尾を踏襲するのだが、3つの箇所でこの弱変化語尾から変化が起きる。それは男性名詞の主格(1格)での不定冠詞と中性名詞の主格(1格)での不定冠詞がeinと区別がそれだけではつかないので、そこで名詞についた形容詞で区別をしようという意識が働く。
それでein alter Mann(一人の老人)とein kleines Kind(一人の小さな子ども)といったように男性名詞の前ではalterのerという語尾だが、中性名詞の前ではkleinesとesという語尾がついている。これは男性定冠詞derのerとか中性定冠詞のdasのsを思い起こさせる。対格(4格)の場合は男性名詞を除いて主格(1格)と同じ変化をする。
男性名詞の場合には不定冠詞はeinenであるから、それに引きずられてかeinen alten Mannといったようにaltenと形容詞の語尾はenである。
こういうことはなかなか難しいので、混合変化のときは基本の語尾はenであるとして、その例外は男性名詞の主格の語尾のerと中性名詞の主格と対格の場合の語尾esだけであると考えるとよい。女性名詞の主格と対格の場合は同じ語尾だが、eine sch"one Frauのように定冠詞とついた場合と同じである。
一番面倒な語尾変化するのは定冠詞も不定冠詞も名詞の前につかない場合である。この場合には名詞の前に男性、女性、中性であることを示すものがないので、その区別を形容詞の語尾でしたい。この場合を強変化という。
この場合の形容詞の語尾の変化は定冠詞にならったものになる。所有格(2格)を除いて定冠詞を想像させる語尾がつく。所有格(2格)だけは特別な語尾のenである。
この強変化の場合だけ、個々に述べてみよう。
主格、所有格、与格、対格の順に
男性名詞の前の語尾は、
alt(er) Mann, alt(en) Mann(es), alt(em) Mann, alt(en) Mann
女性名詞の前の語尾は
sch"on(e) Frau, sch"on(er) Frau, sch"on(er) Frau, sch"on(e) Frau
中性名詞の前の語尾は
klein(es) Kind, klein(en) Kind(es), klein(em) Kind, klein(es) Kind
複数名詞の前の語尾は
alt(e) M"anner, alt(er) M"anner, alt(en) M"anner(n), alt(e) M"anner
である。
語尾を明示するためにわざと語尾をかっこでくくっている。こうすると定冠詞との類似性がより明瞭になるだろう。
名詞自身にもすこし語尾が変化する箇所があるので、かっこでくくっておいた。基本は男性名詞との中性名詞の所有格に s をつけることと、複数名詞の与格に n をつけることであるが、これは理屈では知っているが、正しく使えたことはない。
これらの語尾は定冠詞をそれぞれ思い起こさせるが、男性名詞と中性名詞の所有格(2格)の語尾はだけはesとはならずにenとなっている。他の箇所はほぼ定冠詞を思い起こさせる。
理屈はこのように言えるが、なかなか実際にドイツ語を話すときに間違えずに話すことはドイツ語を母語としない私たちには難しい。慣れるしか方法がない。たくさんまちがって次第に正しいドイツ語になって行くしかない。
(注)ドイツ語のクラスで使ったThemen neu 1, 2とまた現在使っているThemen Aktuell 3 のテクストの末尾に文法のまとめがある。この形容詞の付加語的用法がどのように記載されているのか今回はじめて見たが、Themen neu2に形容詞の語尾変化が出ている。もっとも上に書いた第3の場合の、強変化の場合の語尾への言及はない。記載されているのは、弱変化と混合変化の場合だけである。
これは強変化の場合の形容詞の語尾変化は定冠詞に準ずることが、ドイツ語を母語にしている人には当然のことであるからかもしれない。詳しいことは私たちのドイツ語の先生である、R 氏に聞いて見ないとわからない。
私はあまりドイツ語の文法に詳しくないし、文法書を開くこともごくごくまれだが、『必携 ドイツ文法 総まとめ』(白水社)をもっている。これはある日本人ゲルマ二ストの勧めで購入したものである。定価は1,600円とあまり高価ではない。
もっともドイツ語の文法書は、残念ながらあまりおもしろいと思ったことはない。