京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

 「甍の波」

2009年06月24日 | 日々の暮らしの中で
本堂の甍が雨に濡れて漆黒に染まったこの数日。
町へ出れば相国寺の大屋根も然り。雨の外出は好きではないが、銀鼠色に輝く瓦屋根の街並みに目を移して歩くのは、ビル街にはない楽しみの一つになる。

雨あがる。
徐々に晴れ上がった空には白い雲がぽっかり浮かんでいる。のどかさには遠くても、からっと心も晴れる思いがしてくる。まだまだこの先続く梅雨なのに、言い飽き聞き飽きる「蒸し暑いね~」のことば、それさえ今日は控えめ、お休みの感がある。たっぷりの雨を吸い込んで濃い緑が美しい、京都盆地を取り囲む一端、なだらかな東山連峰。

いつもは仰ぎ見る空だが、空から、雲の切れ間、眼下に広がる京都の街のたたずまいはどのように見えるのだろう。
甍の波。日常の生活が広がる建物と建物との隙間を、スーッと横切る、薄い衣をひるがえした美少年義経の幻などが視界に飛び込む、なんてことはないのだろうか。

次第に眼下に迫る異国の初めての光景。家々の赤レンガの屋根。思い描いた地。とうとう降り立つ、この感慨は深く嬉しいものだろうと想像する。きっと心躍る瞬間だろう。

例えば……、海の上で大きく旋回し着陸態勢に入る、あのわずかな瞬間さえ私は好きだ。あ~、いよいよ……、グーッと気持ちが入る時だもの。

一度は京都の街を空から眺めてみたい。できることなら、歴史の興亡の中に消えていったどなたかの幻に遭遇できないものか。
コメント (4)
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