講師の渡邉教授は主張する。「災害遺構」は残すべきだと…。「災害遺構」を残すことによって、観光の振興に寄与すると共に、災害防止や災害教育にも役立てることができるという。一方で東北沖大地震の現地では災害遺構の撤去を決めたところもあるという…。
北大大学院の地球環境科学院が主催する公開講座『東日本東北沖大地震と北海道』を受講している。8月21日から9月25日まで6回の講座が予定されている。
先日21日(水)、その第1回講座「観光産業への被害と観光のこれから」と題して、地球環境科学研究院の渡邉悌二教授の講座が行われた。
講座は大震災によって東北の観光産業が大きな被害を蒙ったことや、日本各地にある津波災害から住民を護る避難看板の問題点などについての紹介があったが、ここでは「災害遺構」の在り方についてレポートすることにする。
今、大震災のあった東北地方では災害遺構を残すべきか、撤去すべきか、各地で論議となっているようだ。つい先日も陸地に打ち上げられた船舶が住民の70%の賛成によって撤去されることが決まったと報道されていた。
渡邉氏はそうした動きに疑問を呈する。確かに住民の方々にとって遺構は辛い記憶を思い起こす構造物であるかもしれないが、そこを乗り越え残すことに大きな価値があると主張します。
災害の記憶は、膨大な書籍、映像、パネルなどによって保存することはできるが、災害の爪痕を現地で実際に見るのとではそのインパクトに大きな違いがあると氏は主張します。
そして氏は「洞爺湖有珠山ジオパーク」の例をあげられた。洞爺湖有珠山ジオパークは私も実際に訪れたが、有珠山の噴火によって地表がうねり、建物が破壊された現状がそのまま残され、それを目の当たりにしたとき、火山エネルギーの凄さ、恐ろしさに衝撃をおぼえたものである。
氏はそうした災害遺構を保存・展示することによって「学びの観光」となるばかりでなく、将来の防災・減災に役立てることができたり、防災教育の教材にも成り得ると言います。講義を聴いていた私は「負を転じて、それを活かす」視点におおいに共感を覚えた。
しかし、甚大な被害を蒙った東北の人々はそのトラウマがあまりにも大きく、まだそうした視点にはなかなか立てない現状のようである。
はたして東北において「災害遺構」が今後どのようになっていくのか、私も注目していきたいと思った。