北大の公開講座「東日本東北大地震と北海道」が9月末に終了したしていたのだがレポートするチャンスがなかった。時間が経過したこともあり、3回分の講座の概要を一挙レポートすることにする。
その後も公開講座には欠席せずに受講していたのだが、レポートするチャンスが訪れなかった。(まとめが難しかったこともあるのだが…)そうしているうちに記憶も薄れてきたので、3回分の講座の内容をほんのさわりだけ報告してお茶を濁すことにする。第4回以降の講座のテーマ・講師は以下の通りである。
◇第4回講座(9月11日) 「2011,3.11 津波に学び、正しく畏れる」
北大名誉教授 平川 一臣 氏
◇第5回講座(9月18日) 「放射性物質で汚染された土壌の修復は可能か」
大学院地球環境科学研究院 教授 田中 俊逸 氏
◇第6回講座(9月25日) 「放射能は世界を巡る」
大学院地球環境科学研究院 准教授 渡辺 豊 氏
※ 今回の一連の講座が行われた地球環境科学研究院のエントランスです。
その講座の概要は以下のとおりである。
《第4回講座》 講師の平川氏は津波が残した津波堆積物を調査することによって、過去の津波の状況や地震が起こる間隔などについて研究されてきた方である。
氏によると、現在の研究で約3500年前までの津波履歴について考察可能ということだ。その考察から巨大津波(波高が10m以上にも及ぶもの)が発生する頻度はおよそ500年間隔で起こっているという。
今回の3.11の巨大津波はそうした研究から、けっして「想定外」のことではなく「想定し得た」巨大津波であったということも云えるそうだ。
北海道においても過去に波高10mを越えるような巨大津波に襲われていることは津波堆積物が物語っている。堆積物を丹念に調査することによって、どの程度の場所まで危険なのかということを熟知しておくことが必要であるとした。
《第5回講座》 講師を務められた田中氏は放射能で汚染された土壌の除染技術について自らも研究を進めるとともに、現在世界各国で試みられているさまざまな手法を紹介されたが、現在のところ決定打はないということだ。
決定打がないため、福島では汚染された土壌が仮置き場に山積みされ、引き受け手のない中間貯蔵施設行きを待っている。行き場のない膨大な汚染土壌の修復のために革新的技術の登場が待たれている現状であるとした。
《第6回講座》 講師の渡辺氏は言う。すでに世界は放射能に汚染されていると…。福島で大気に放出された放射性物質は3週間で世界を一周し、その濃度は広がりとともに薄まったとしても世界がすでに福島の事故による放射性物質に晒されているのは明白だという。
さらに、海水を通じても放射性物質は広がりを見せ、およそ1年でハワイにまで達していることが分かっていて、その後も広がり続け現在は北アメリカに到達していると考えられ、さらに北太平洋全域、南太平洋に広がっていくと考えられているという。
そこまで紹介した後、渡辺氏は「だからと言って原子力発電は要らないものなのでしょうか?」と受講者に敢えて投げかけ、判断は受講者一人ひとりにお任せするとした。
6回にわたった本講座は東北沖大地震が引き起こした巨大津波に関したテーマが3講座、大地震によって破損した福島原発事故に関係したものが3講座であった。
津波は我々人間にとっては避けようのない天災である。したがって、できるだけ予知技術を高め、津波災害に遭わないための対策をふだんから講じることの大切さを改めて教えられた思いであった。
一方、原発事故は紛れもなく人災である。第2回の小野名誉教授は明確に原発を否定する立場を取られていたが、他の二人の方は敢えて立場を明確にせずに情報提供に止め、判断を受講者に委ねる形を取った。
拙ブログにおいては政治が絡む問題について、その判断を保留するように努めてきたが、この原発問題に関してはどう考えても原発再稼働を容認する立場にはなれないことを何度か表明してきた。
今回の講座でも、世界中に放射性物質をまき散らしている責任を私たちはもっと痛感しなければならないのではないか。また、放射能で汚染された土壌の除染技術が確立されていない中で、汚染された土壌や汚染水の問題をどう処理しようとしているのか。
そうしたことが頭の中を駆け巡った。
私たちの生活が経済を中心に回っていることは痛いほど分かるが、いろんな問題を積み残したまま経済だけが豊かになってもなあ…。
多くのことを学び、いろいろと考えさせられた今回の一連の講座だった。