講義を受けているうちに日本側が思い描く北方領土の返還という宿願がどんどん遠ざかっていくような気がしてならなかった。ロシアにとって、北方領土の持つ軍事的意味は相当に大きいようなのだ…。
北大スラブ研公開講座の第5講が5月22日(月)夜、開講された。
この回のテーマは、「軍事・安全保障から見た日露関係と北方領土」と題して、未来工学研究所の客員研究員である小泉悠氏が講師を務めた。
小泉氏は、ロシアの軍事・安全保障政策を研究する軍事アナリストとして最近脚光を浴びている気鋭のアナリストということだ。(勉強不足の私は今回お話を聞くまで小泉氏の存在は知らなかった)

※ 講義をする未来工学研究所の客員研究員の小泉悠(ゆう)氏です。
小泉氏の講義の内容を正確に再現することは私の手に余ることだ。それだけ氏のロシアの軍事研究の中身は濃いものだった。
氏の講義の前半は、ソ連からロシアへと国の像(カタチ)が変貌する中で、国の軍事・安全保障についての考え方も変遷を辿ってきたことの説明に費やされた。
東西冷戦が終結し、ソ連邦の解体があり、ロシアの国力・軍事力は低迷を極めたが、近年国力の回復と共に徐々に軍事体制もソ連時代ほどではないが整いつつあるというのが、講義を聴いての私の粗い整理である。
そうした中、ソ連邦は解体され、体制の変わったロシアが誕生したが、アメリカなどNATO諸国とは一線を画す安全保障政策をとっていることは周知の事実である。
現在のロシアには過去にあったような大規模な国家間戦争が起こるという認識は薄く、またその能力もないと小泉氏は分析する。米国に抗するような国力・軍事力を持たないロシアは「戦略的抑止力」によって米国などNATO諸国をけん制する体制の構築を図っているという。そのポイントは「非対称性」ということだという。非対称性とは、軍拡を競うのではなく、戦略的に自国の安全を担保する体制のことだそうだ。ロシアが取りうるオプションとしては、「対抗」、「抑止」、「拒否」、「攪乱」、「回避」の5点があるという。
その説明の中で私が興味を惹いたのは「A2/AD」というワードだった。「A2/AD」とは、「接近阻止・領域拒否」と翻訳されるのだが、もう少し詳しく述べると、「米国に敵対する国や勢力が用いる軍事戦略で、自国や紛争地域への米軍の接近や、そうした地域における米軍の自由な行動を阻害すること」だそうだ。
ロシアは今、このA2/AD体制を西にも東にも築こうとしているとのことだ。
その東側(極東地域)がまさしく北方領土なのである。
小泉氏によると、ロシアは国後・択捉島だけにとどまらず、北東端の占守島から国後島までを防衛ラインとして、新型ミサイルを配備して「A2/AD」ラインの整備を始めているそうだ。
そうなると、国後・択捉はロシアにとっては戦略的にもけっして手放すという選択肢はないということが透けて見えてくる。
小泉氏の見方では、残る歯舞・色丹島については、軍事的にはそれほど重要ではないこともあり、交渉の対象にはなるかな?ということであった。
しかし、それもプーチン大統領は日米が同盟を結んでいるということに対して相当に強固な不信感をもっていることから、難しい交渉となるのでは、というのが小泉氏の見立てのようだった。

※ 小泉氏の著書の一つです。
さて、日ロによる北方領土交渉はどのような変遷をたどり、どのような落着を見るのだろうか?
北大スラブ研公開講座の第5講が5月22日(月)夜、開講された。
この回のテーマは、「軍事・安全保障から見た日露関係と北方領土」と題して、未来工学研究所の客員研究員である小泉悠氏が講師を務めた。
小泉氏は、ロシアの軍事・安全保障政策を研究する軍事アナリストとして最近脚光を浴びている気鋭のアナリストということだ。(勉強不足の私は今回お話を聞くまで小泉氏の存在は知らなかった)

※ 講義をする未来工学研究所の客員研究員の小泉悠(ゆう)氏です。
小泉氏の講義の内容を正確に再現することは私の手に余ることだ。それだけ氏のロシアの軍事研究の中身は濃いものだった。
氏の講義の前半は、ソ連からロシアへと国の像(カタチ)が変貌する中で、国の軍事・安全保障についての考え方も変遷を辿ってきたことの説明に費やされた。
東西冷戦が終結し、ソ連邦の解体があり、ロシアの国力・軍事力は低迷を極めたが、近年国力の回復と共に徐々に軍事体制もソ連時代ほどではないが整いつつあるというのが、講義を聴いての私の粗い整理である。
そうした中、ソ連邦は解体され、体制の変わったロシアが誕生したが、アメリカなどNATO諸国とは一線を画す安全保障政策をとっていることは周知の事実である。
現在のロシアには過去にあったような大規模な国家間戦争が起こるという認識は薄く、またその能力もないと小泉氏は分析する。米国に抗するような国力・軍事力を持たないロシアは「戦略的抑止力」によって米国などNATO諸国をけん制する体制の構築を図っているという。そのポイントは「非対称性」ということだという。非対称性とは、軍拡を競うのではなく、戦略的に自国の安全を担保する体制のことだそうだ。ロシアが取りうるオプションとしては、「対抗」、「抑止」、「拒否」、「攪乱」、「回避」の5点があるという。
その説明の中で私が興味を惹いたのは「A2/AD」というワードだった。「A2/AD」とは、「接近阻止・領域拒否」と翻訳されるのだが、もう少し詳しく述べると、「米国に敵対する国や勢力が用いる軍事戦略で、自国や紛争地域への米軍の接近や、そうした地域における米軍の自由な行動を阻害すること」だそうだ。
ロシアは今、このA2/AD体制を西にも東にも築こうとしているとのことだ。
その東側(極東地域)がまさしく北方領土なのである。
小泉氏によると、ロシアは国後・択捉島だけにとどまらず、北東端の占守島から国後島までを防衛ラインとして、新型ミサイルを配備して「A2/AD」ラインの整備を始めているそうだ。
そうなると、国後・択捉はロシアにとっては戦略的にもけっして手放すという選択肢はないということが透けて見えてくる。
小泉氏の見方では、残る歯舞・色丹島については、軍事的にはそれほど重要ではないこともあり、交渉の対象にはなるかな?ということであった。
しかし、それもプーチン大統領は日米が同盟を結んでいるということに対して相当に強固な不信感をもっていることから、難しい交渉となるのでは、というのが小泉氏の見立てのようだった。

※ 小泉氏の著書の一つです。
さて、日ロによる北方領土交渉はどのような変遷をたどり、どのような落着を見るのだろうか?