なんとものんびり、まったりとした観察会だった。しかし、それがとても心地よいのだ。観察会の在り方の一つを提示された思いだった。小樽の街に近接する旭展望台の周辺の春の草花をのんびりと観察しながら巡り歩いた。
今日午前、北海道自然観察協議会という団体が主催する「自然観察会」があることを知った。観察会のキャッチフレーズは「春一番の草花を訪ねて キクザイチゲ、エゾエンゴサク、そして見事なカタクリの群落を訪れます」だった。エゾエンゴサクもカタクリも、今春すでに何度も見てはいたが、観察会で詳しい方からお話をうかがうのもいいかな?と考え参加することにした。
朝9時10分、元小樽商業高校の正門前集合時間に合わせて車を走らせた。着いてみたところ女性の姿が多い。総勢で16名。うち9人は協議会の指導員だという。ということは受講者が7名である。受講者の7名のうち男性は私一人だった。
簡単なセレモニーの後、早速森の散策路に入っていった。春一番とはいえ、雪が消えてからそれなりに時間も経ったからなのか、散策路にはさまざまな草花が勢いよく伸びていた。それを指導員の方は近くの人に話しかけるような形で説明するのだが、特に「さあ、皆さん聞いてください」的な説明は一切ないのだ。受講者より指導員の数の方が多いので、あちこちで話の花が咲いているという状態だった。だから意識して話を聞こうとしなければどんどん置いていかれる状態となる。私はできるかぎり指導員の傍を離れないようにしながら、話に耳を傾けるようにした。
中には聞き逃したことも多々あったのではと思われるが、今回参加できたことで知り得た知識もそれなりにあった観察会だった。
私などは職業柄(?)「はい、聞きなさい」的な講習会(観察会)を想定しがちだが、大人の講習会は今回のような形もアリだな、と思い知らされた観察会だった。
それでは、私自身の記録のために本日知り得たことを写真と共にレポートすることにします。
◇ヒトリシズカ
まず目についたのがヒトリシズカである。今春初めて目にしたが、艶のある葉と楚々とした白い 花が特徴である。
◇ツルアジサイ
花が付けば、その形状から私にも判別できるのだが、葉だけではまったく分からなかったが、指導員の方が山菜の一つだと説明してくれた。しかし、私一人では葉だけでは見分ける自信は得られなかった。
◇キクザイチゲ
この季節に咲く白い花であるが、花びらの数が多く、一枚一枚の花弁の形が鋭角的なのがこの花の特徴か?
◇エゾニュー
これも葉だけではまったく分からない。一見山菜として美味しそうだが、毒を持っているとのことだった。
◇オオウバユリとカタクリハムシ
艶のあるオオウバユリの葉もだいぶん大きく成長していたが、その葉に穴がポツポツとあいていた。それはオオウバユリの葉を食べるカタクリハムシという虫だという。指導員の方がその虫を見つけてくれ、カメラに収めることができた。
◇エンレイソウ
旭展望台周辺の散策路では非常にたくさんのエンレイソウを見ることができた。大きく成長し、花を付けるまでに何年もかかるそうだ。そう云われて見ると愛おしさが出てくる。葉は普通は3枚なのだが、どなたかが葉が4枚ついたエンレイソウを見つけてくれた。突然変異種ではいうことだった。
※ 4枚の葉を付けたエンレイソウです。花を付けるのは後年だということです。
◇エゾエンゴサク
今春、もう何度も目にした花であるが、旭展望台周辺でもかなり目立った花だった。ただ群落と呼べるほど固まって咲いているところは少なかったようだ。
◇エゾイラクサ
この植物は人の肌に触れると激しいかゆみを発する草である。私も幼い時に何度かその被害に遭った経験がある。別名尋麻(ジンマ)とも呼ばれ、蕁麻疹(ジンマシン)の由来にもなっているそうだ。
◇タチツボスミレ
スミレの種は数多いとされるが、私としてはこのような花の形をしたものは全てタチツボスミレと称することにしている。白と紫の花があった。
◇クルマバソウ
クルマバソウも白い花を付ける植物だが、葉の形が車輪に似ていることからそう呼ばれるため、花が付いていなくとも私にも判別することができる。
◇カバノキの雄花・雌花
木の枝から長く垂れさがっている雄花を教えていただいた。雌花の方はなかなか見つけることができなかったが、最後に赤い色をした雌花も見つけていただいた。雄花の花粉が無事に雌花に付くと、やがてヘーゼルナッツのような種ができるそうだ。
※ 長く垂れさがっているのが雄花、赤い蕾のようなものが雌花だそうです。
◇マイヅルソウ
散策路の標高が高くなり、少し日陰のところに入ると散策路の両脇にはびっしりとマイヅルソウが繁茂していた。マイヅルソウは条件が整うと繁殖力が旺盛のようである。
◇カタクリ
今回の観察会の一つの呼び物であったが、指導員の方が「ここからはカタクリロードですよ」と話されたとおりにカタクリの花が次々と咲いているところに導かれた。私としては旭川の「男山自然公園」の大群落を見た後なので、感激度は今一つだったが、それでもやはり殺風景な森の中で紫色のカタクリの花は艶然として存在感が際立つ。指導員のお話で、カタクリが花を付けるまでには7~10年もかかると聞いて驚いた。そしてカタクリの一年草を見つけてくれ、カメラに収めることができた。花を付けたカタクリとは似ても似つかぬ姿だった。
※ 写真の芽がカタクリの一年草だそうです。
以上、私がカメラに収め、メモすることができた小樽・旭展望台周辺の草花である。中には聞き間違いのものもあるのかもしれないが、その場合はご容赦願いたい。私としては収穫の多い観察会だった。また機会があれば参加してみたいと思う。
※ 小樽が生んだ文学者・小林多喜二の文学碑の前で解散しました。
※ 旭展望台から眺めた小樽市の市街地です。