それは “熟練の音” と称して良いだろう。けっして若くはない奏者たちだったが、紡ぎ出す音には熟練の味を感じさせてくれるものだった。チェンバロ・ソロの三浦眞奈さんの演奏も聴かせてくれた。
6月2日(日)、午後札幌芸術劇場クリエイティブスタジオにおいて「宮の森アルテ・ムジクス」の「第13回アーベントムジーク」が開催され、友人たちと一緒に鑑賞した。
アルテ・ムジクスとか、アーベントムジークなど聞き慣れない単語が並べられていたために友人たちと話題となった。
調べてみると、イタリア語のようで「アルテ・ムジクス」とは、「アルテ」とは元々は団体とか、仲間という意味だったものが、中世以降はそれに芸術という意味も含まれるようになったようである。「ムジクス」は研究家といった意味があるようだ。したがって「アルテ・ムジクス」とは(バロック、古典)音楽を研鑽する仲間といった意味があるようである。
一方、コンサート名の「アーベントムジーク」とは、「宗教的な色彩を持って教会で行われる夕べの演奏会」を指すそうである。
う~ん。なんだか小難しく聞こえてくるが、ようするにメンバーの方々は単なるクラシック音楽に飽き足らず、古典音楽やバロック音楽を極めてみたいと集まった集団のようである。奏者たちを見ると若い人はあまり目立たず、人生経験豊かな人たちが目立ったところからもそういうことが言えそうだった。
第1部は、チェンバロの三浦眞奈さんを中心とした演奏だった。曲目と演奏者は…
◇D.スカルラッティ/ソナタ K.322 イ短調 K.208 イ短調
K.214 イ短調 K.8 イ短調
いずれもチェンバロ ソロ
◇C.セイシャス/チェンバロ協奏曲 イ長調
チェンバロ + アルテ・ムジクス(管弦楽)
◇T.L.ビクトリア/アヴェ・マリア・ステラ(めでたし海の星)
チェンバロ + アルテ・ムジクス(合唱団)
第2部は、アルテ・ムジクスの演奏陣が演奏した。その曲目は…
◇L.ボッケリーニ/マドリッドの夜の通りの音楽
◇C.アリーガ/交響曲 ニ短調
チェンバロの演奏というのはあまり聴く機会のない楽器である。三浦さんは長くチェンバロに関わってきた方らしく、細やかのところも含めて素晴らしい演奏だったように思われた。ただ、ピアノに比べてやや単調な音に聴こえてくるところは楽器の持つ宿命なのかもしれない。
第2部のアルテ・ムジクスの演奏はさすがに落ち着いた演奏で、聞き応えがあった。私の好みでいえばL.ボッケリーニの「マドリッドの夜の通りの音楽」が気に入った。あたかもその昔、スペインの首都マドリッドの街角から聴こえてきそうな音楽のように思えた。もちろんアルテ・ムジクスが今回最も力を入れたであろう最後の曲C.アリーガの交響曲も素晴らしかったが…。
アルテ・ムジクスは定期演奏会の方は今年30回を数えるそうだが、こちらアーベントムジークは13回目の開催である。あるいは定期演奏会とは違い、ある意味実験的な曲の演奏を志した演奏会だったのだろうか?そのあたりは分からないが、ともかく熟練の音を聴かせていただいた思いがする演奏会だった。
※ 演奏会では珍しく写真撮影の規制のアナウンスが無かったので、数枚写真を撮らせていただいたので、それを掲載することにします。