映画はアメリカ主体で制作したにもかかわらず日本海軍側からの描写が多いようにも思われた。(日本公開用という裏事情があったのかもしれないが)また対アメリカとの開戦に消極的だったという山本五十六連合艦隊司令長官の言葉が意味深い。
映画「トラ・トラ・トラ」は多くの方々がご存じのように、日本海軍が1941年12月8日ハワイ島真珠湾を奇襲し、太平洋戦争の口火を切った戦闘である。この奇襲の前後、そして奇襲の状況を克明に描いたもので、アメリカが主体となって日米合作で1970年に制作・公開された映画である。
その映画は昨年12月9日にBSプレミアムで放送されてからずいぶん時間が経ってしまったのだが、録画しておいたものをお正月に視聴したので思い返しながらレポしてみたい。
前述したように映画は日米合作とは言いながら、制作主体はあくまで米国が制作した映画にもかかわらず日本海軍の様子が非常に詳しく描かれていることが私には素直な驚きだった。対するアメリカ側は日本側の暗号も読み解き、日本の奇襲も予想していながら、それに対する動きは鈍く日本を戦争に引き込もうとする上部の思惑がすけて見えるような気がしてならなかった。
日本側首脳が開戦に前のめりになったころ、血気盛んな下士官たちが一日も早く決戦の火ぶたをと待ち望んでいた時、連合艦隊司令官・山本五十六中将(山村聡)が放った言葉が印象的だった。私は録画したことの利点を生かし、ストップモーション機能を使って彼の言葉を書き写した。その言葉とは…。
「多くの日本人は、アメリカ人の民主的政治を統一を欠く政治。明朗な生活を楽しむ態度を贅沢。自由な精神を退廃とこじつけ、国力は見掛け倒しと教え込まれている。もし戦わば、アメリカはこれまで戦った敵の中で最強の敵と肝に命ぜよ」
※ 山本五十六連合艦隊司令長官役を演じた山村聡さんです。
と下士官たちを諫めた。この言葉は山本五十六が2度にわたる米国留学から知り得たアメリカの真の国力を熟知していたことを裏返す言葉だと思える。
開戦に消極的だったとはいえ、山本は国の軍隊の一員でしかない。国の決定したことには従わねばならない立場である。山本はハワイ沖に待機中だった南雲第一航空艦隊司令長官(東野英治郎)に「ニイタカヤマノボレ ヒトフタマルハチ(一二〇八)」と指令した。
それから日本軍のハワイ奇襲のシーンは圧巻だった。制作会社の二十世紀フォックス社が社運を賭けて巨額を投じたというだけあって、凄まじい戦闘シーン(いや奇襲シーン)は圧巻である。この奇襲でハワイ基地は壊滅状態に陥り、奇襲は成功したかに見える。
※ ハワイ基地奇襲に一シーンです。
そして南雲中将は大本営に対して「ワレキシュウニセイコウセリ トラ・トラ・トラ」と電文を送付した。それを受け取り山本五十六が「眠れる巨人を起こした」と呟くシーンで映画は終了するが、その後の日本軍の戦いを暗示する言葉も印象深い。
この映画を史実として観るか、単なる娯楽として観るか、人それぞれだと思うが、私には歴史を評価するほどの知識も力量もない。今回もあくまで娯楽の一つとして観たのだが、そうではあっても、今回の映画から感ずることは山本五十六のような(伝えられる限り)聡明な方がいたとしても愚かな戦争に突き進んでいかねばならなかったところ日本の(日本軍の)悲劇があったような気がしてならない…。
※ 掲載写真は全てウェブ上から借用しました。