う〜ん。私が既読した河崎作品(「ともぐい」、「颶風の王」)とは、少し趣きが異なっていたかな?というのが、正直な読後感なのだが、はたして??
「ともぐい」が熊、「颶風の王」が馬を題材としていて、作者の河崎さんが生まれ育った別海地方では日常の会話の中に出てくるある意味で身近な存在でもあった。
対して、今回読了した「愚かな者の石」は、明治期の月形町に存在した「樺戸集治監」という、河崎さんにとっては縁遠い世界の話であったということだ。
例え河崎さん自身に熊撃ちの経験がなくとも、例え河崎さんが馬で畑を耕した経験がなくとも、身近で見聞きしたことを膨らませて文章化することにそれほどの困難は感じなかったのではと想像する。
対して今回の「愚か者の石」は、河崎さんにとって全く未知の世界である。河崎さんは作品化に際して相当に取材されたもの思われる。
明治期の集治監に収容された囚人にはまるで人権など存在しないような集治監の扱いの表現など、苦労されたことがなんとなく表現のそこここから伺えるようにも思ったのだが…。
私は前述したように、河崎作品をわずか3作品しか読んでいない。前2作で、骨太な河崎作品に傾倒してしまった私だが、あるいは「愚か者の石」は河崎作品の一つの転換点なのかもしれない。
その辺りについて自信をもって言えるようににするためには、河崎作品をもっと、もっと読まなくては…。